ブロードウェイに新風を吹き込んだパフォーマンスを国内で目の当たりに

デイヴィッド・バーン(左)とスパイク・リー ©2020 PM AU FILM, LLC AND RIVER ROAD ENTERTAINMENT, LLC ALL RIGHTS RESERVED
デイヴィッド・バーン(左)とスパイク・リー ©2020 PM AU FILM, LLC AND RIVER ROAD ENTERTAINMENT, LLC ALL RIGHTS RESERVED

ロック・バンド、トーキング・ヘッズのフロントマンだったデイヴィッド・バーンが、11人の仲間と共にブロードウェイの舞台で演奏を繰り広げる『アメリカン・ユートピア』(David Byrne's American Utopia)を、「劇場街に新風を吹き込む刺激的な音楽パフォーマンス」として紹介したのは一昨年の11月のこと(詳細はこちらより)。ハドソン劇場でのオープンは同年10月で、翌2020年1月19日までの期間限定公演だったが、好評を得て延長。コロナ禍でニューヨークの全劇場が閉まることになる直前の2月16日まで上演された。

『アメリカン・ユートピア』©2020 PM AU FILM, LLC AND RIVER ROAD ENTERTAINMENT, LLC ALL RIGHTS RESERVED
『アメリカン・ユートピア』©2020 PM AU FILM, LLC AND RIVER ROAD ENTERTAINMENT, LLC ALL RIGHTS RESERVED

昨年暮れには、同作品のオリジナル・キャスト盤がグラミー賞2021のベスト・ミュージカル・シアター・アルバムにノミネート、改めて注目を集めた。そして、舞台を観られなかった人たちの期待に応えるように、1年半の時を経た今年の9月17日からブロードウェイの同じハドソン劇場で再び上演されることが、すでに発表されている。前回同様、翌年1月半ばまでの期間限定公演。劇場街が6月以降無事にオープンしていけば、この秋のブロードウェイの目玉作品のひとつになることは間違いない。

が、その前に朗報。スパイク・リー監督による映画版『アメリカン・ユートピア』が、日本の映画館でも上映されることになった。前回ブロードウェイ上演時の舞台映像を収めたもので、字幕監修をピーター・バラカンが手がけている。秋に現地で観ようと思う人も、それがかなわない人も、この絶好の機会を逃す手はない。

未来への主張を込めた刺激的な舞台がどう映像化されているか楽しみ

『アメリカン・ユートピア』©2020 PM AU FILM, LLC AND RIVER ROAD ENTERTAINMENT, LLC ALL RIGHTS RESERVED
『アメリカン・ユートピア』©2020 PM AU FILM, LLC AND RIVER ROAD ENTERTAINMENT, LLC ALL RIGHTS RESERVED

『アメリカン・ユートピア』というのはバーンが2018年にリリースしたアルバムのタイトルでもあるが、ユートピアの文字が逆さまになっているのが象徴的。現状の様々な矛盾を描き出しつつ、それを解決していくのは柔軟な思想と人と人との結びつきしかない、と主張しているような内容だ。舞台で演奏される楽曲リストには、同名アルバム収録曲の他にトーキング・ヘッズ時代の代表曲も含まれる。ファンにはうれしい選曲だろう。

『アメリカン・ユートピア』©2020 PM AU FILM, LLC AND RIVER ROAD ENTERTAINMENT, LLC ALL RIGHTS RESERVED

舞台に登場する、バーンを含めた12人のメンバーの半数がパーカッショニストというのが音楽的な特徴で、終盤には、ほぼ全員がパーカッショニストと化す。全ての楽器は抱えられ、演奏者の立ち位置は固定せず、動き回る。その動きは、舞台上での「我々は移民だ」というバーンのアナウンスと呼応しているように見える。そうした、単なる音楽ライヴの枠に収まらない刺激的な舞台を、監督スパイク・リーがどう映像化しているか。そちらも楽しみだ。

映画『アメリカン・ユートピア』は、5月7日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、渋谷シネクイント他全国ロードショー。詳細は下記公式サイトでご確認ください。

映画『アメリカン・ユートピア』公式サイト

※外出時には新型コロナウイルスの感染予防対策を十分に講じ、最新情報は公式HPなどでご確認ください。

この記事の執筆者
ブロードウェイの劇場通いを始めて30年超。たまにウェスト・エンドへも。国内では宝塚歌劇、歌舞伎、文楽を楽しむ。 ミュージカル・ブログ「Misoppa's Band Wagon」(https://misoppa.wordpress.com/)公開中。 ERIS 音楽は一生かけて楽しもう(http://erismedia.jp/) で連載中。
公式サイト:ミュージカル・ブログ「Misoppa's Band Wagon」