物撮り写真の巨匠4人がタッグを組み、新しいアートにチャレンジ!

中川十内、戸田嘉昭、池田 保、近藤正一という4人のフォトグラファー。雑誌・広告・新聞媒体で長年活躍する物撮り写真の巨匠たちです。

AMUの4人、モノクロ写真
AMUの4人。

今回、この4人がタッグを組み、まったく新しい共同プロジェクトをスタート。

そのプロジェクト名が「AMU」。

Kondo、Nakagawa、Ikeda、Toda、各人のイニシャルを組み合わせた「KNIT」を和訳し、編む→AMUと名付けたのです。

彼らが試みるのは、それぞれが撮影した写真を持ち寄り、重ねたり、拡大縮小させたり、トリミングしたりして作品を生み出すグループセッション。

即興バンドのように自由な発想で音を奏で、これまでに見たことのないアートビジュアルを創りあげています。

展覧会_1
2018年から定期的に集まるようになり、作品制作に取り組んできた。

ライバルだからこそ広がった、新しいアートの可能性

そもそも、ライバルであるはずの彼らが共同プロジェクトに挑戦することになったきっかけとは何だったのでしょうか?

近藤氏によると「もうみんな40年以上この世界で活動し歳を取って、ライバル同士がやるっていうのがかっこいいかなと思ってね。2017年末に、とある忘年会で4人が顔を会わせたんですよ。そこで中川さんが何かおもしろいことをやろうって言い出したのがきっかけ」。

「その後すぐにまた集まって。最初はいろんなことをやってみたんですよ。立体を作ってみたり、写真を25%ずつ組み合わせたり、もう覚えてないくらい(笑)。持ち寄るテーマとかもあったんですけど、いつからか自由にやるようになりました」と池田氏。

「そうして、バンドのノリで自由に演奏して、楽曲=作品を創っていこうってなったんですよ。集まるときは本当にライブをやるような気持ち。ライブ本番に挑むバンドマンの気分です。さまざまな写真を自由に組み合わせたりするのがジャズセッションのようで楽しい」と中川氏。

そして近藤氏が「最初のユニット名はAMUじゃなくて爺(ジジイ)の集団だから『ジー撮るズ』って呼んでましたよ」と笑わせた。

展覧会_2
話し合いながら、それぞれの写真を組み合わせ、リサイズしたり加工したりしてひとつの作品を創っていった。

実際にプロジェクトを進めていくうえで揉めたりはしなかったのでしょうか?

「揉めるってことはなかったですよ。お互いをリスペクトし合ってるし。おしゃべりばかりで何もしないときもありましたけどね」と池田氏。

「個人活動の肥やしになりましたね。3人のアイディアを吸収できるし、自分の幅も広がる。ありがたい経験です」と中川氏が話す。

そして戸田氏が「写真を撮るという作業は被写体となる何かがないと始まらない。そうすると写真に主張や主体が出てしまうんですよね。でも4人でやることで主張がなくなる。ひとりでやるよりも自由で、好きなことをやれたと思います」と語る。

「ある意味、それぞれが無責任(笑)」と池田氏。

「こういう試みって珍しいと思います。強力なライバルたちが集まってひとつのことを創り出すって。好き勝手やったものを見に来てくださいっていうのは申し訳ないのですが」と戸田氏がまとめる。

展覧会_3
持ち寄った写真、試作した作品は数知れず。そのなかから選ばれた28点が展覧会にて披露される。

撮るという主体的行為から解放され、自由に無意識に新しい何かを創り出す。そしてそれを目にした人が何かを感じ取ったとき、写真は作品として成立することを体感できるプロジェクトが「AMU」。

今回のテーマ「POLYPHONIC COLORS」は複数の独立した色彩を意味し、それぞれの色が混ざり合うことで計28点の楽曲を奏でます。

「POLYPHONIC COLORS」

AMUメンバー

中川十内(なかがわじゅうない)

東京都生まれ。1980年代よりスチールを中心に、フォトグラファーとして雑誌、広告等で活動。スティルライフフォトを中心にフリーランスカメラマンとしてキャリアをスタート、現在に至る。

戸田嘉昭(とだよしあき)

1947年、静岡県浜松市生まれ。1974年、KV Foto Skolan(スウェーデン、ストックホルムの写真学校)卒。1988年、パイルドライバー設立、現在に至る。JPS(日本写真家協会)・APA(日本広告写真家協会)会員。

池田 保(いけだたもつ)

1949年東京都生まれ。電気会社スタジオアシスタントを経て1977年に渡米、澤 雄司氏、井津建郎氏に師事。1981年に帰国後、スティルライフフォトを中心にフリーランスカメラマンとしてキャリアをスタート、現在に至る。

近藤正一(こんどうしょういち)

1950年、東京都目黒区生まれ。1972年、桑沢デザイン研究所グラフィック科卒業。個人スタジオの助手を経験後、品川のスタジオ制作部でカメラマンとして所属。1981年、近藤スタジオ設立、現在に至る。

AMU展覧会「POLYPHONIC COLORS」

会期/2021年5月25日(火)〜6月5日(土)
開館時間/11:00~18:00(5月28日、29日、6月4日は19:00まで)
会場/ギャラリー5610
住所/東京都港区南青山5-6-10 5610番館

問い合わせ先

ギャラリー5610

TEL:03-3407-5610

この記事の執筆者
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MOVIE :
宇佐美政郁(パイルドライバー)
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