ワークスペースがほしいと思いつつも、インテリアを損なうくらいならわざわざ作りたくない。限りある予算で間に合わせの家具を選ぶくらいなら多少の不便さには目をつむろう…などと、ダイニングテーブルの片隅で仕事をしていませんか?

とはいえ長引くリモートワーク。繁忙期には出しっ放しのPCの傍らでご飯を食べている方も多いのではないでしょうか。もし、予算内でインテリアを格上げしてくれるようなアイテムがあったとしたら、考えるだけでワクワクしますよね?

そんな方にオススメしたいのが、暮らしに彩りや遊び心をもつことを大切にするブランド「イデー」。1975年に創業、これまで国内外のスターデザイナーが無名の頃からコラボレーションをしてきた日本のブランドです。

156cmのインテリアエディターDが、おすすめのアイテムを実際に体験しながらレポートする本連載では2回目の登場となるこのブランドから、前後編の2回に分けて“合計約12万円”でワークスペースを作れるデザイナーズ家具をご紹介。

昨日公開した【前編】に続き、本記事では、美しい曲線と直線の脚の対比が印象的な名作椅子「ダイニング チェア」をピックアップします。

柿の断面がヒント!リデザインを繰り返し完成した名作「ダイニング チェア」

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【ブランド】イデー 【商品名】ダイニング チェア 【写真の仕様の価格】¥60,500 【サイズ】幅420 × 奥行510 × 高さ800 座高440 (mm) 【材質】フレーム:ブナ材 背座:ダイニング チェア ブラックファブリック(ビニールレザー)張込

スックと伸びた脚に留められた緩やかなカーブを描く曲線が印象的な「ダイニング チェア」。数々の名作家具を生み出してきた故・長大作氏が坂倉準三建築研究所に在籍していた若かりし頃、1953年に最初の型がデザインされました。

坂倉氏がとても気に入っていたジャン・プルーヴェのスタンダードチェア(※)を木製で試みてみようと言われたことがきっかけで生まれ、その後改良を加えていく上で課題となっていた美しい曲線のヒントになったのが柿の断面でした。

※参考URL:https://www.vitra.com/ja-jp/product/standard

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柿をスパッと切った断面を見て「これだ!」と思ったという有機的なカーブが印象的。

その後も何度もの改良を重ね、さまざまな仕様の「ダイニング チェア」が複数のメーカーから発売されています。イデーからは、生前の長氏監修のもと1953年に発表された際のオリジナルを忠実に再現した仕様のものを発売しています。

時間をかけてひとつのものを作っていくということがモノづくりにおいてどれほど大切であるかを私たちに考えさせてくれる、本当の意味で贅沢な椅子です。

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2006年/世田谷美術館発行/展覧会「クリエイターズ−長大作/細谷巖/矢吹申彦」図録P.16,17より

こちらの仕様の「ダイニング チェア」は、1955年に完成した六本木にある国際文化会館のカフェテリアにも納品されました。

国際文化会館は日本建築界の巨匠、坂倉準三、前川國男、吉村順三の三氏の共同設計という極めて稀な取り組みで、その家具担当として坂倉から長大作、前川から水之江忠臣、吉村から松村勝男が選ばれ協働で担当していました。現在のカフェテリアにも、2脚ほどイデーの仕様のものがあるので機会があればぜひ探してみてくださいね。

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左/登録有形文化財に選ばれた巨匠達の競演の舞台、国際文化会館。右/長大作氏。

日本の建築に合わせ設定された、少し低めシートがちょうどいい

実際に座ってみるとカーブが程よくお尻を受け止め、膝裏のあたりも心地よく、両足をきちんと着地させた状態でPCに腕が自然と置ける高さになります。

「ダイニング チェア」のビニールレザーと合板の組み合わせが、【前編】でご紹介したメラミンと木の組み合わせの「スティルト テーブル」と共に、空間に温もりだけでなくほどよいアクセントを加えてくれます。

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「スティルト テーブル」との高さの相性も抜群。レザーの黒をひろって、黒のデスクランプ「ビューロー トレピエ」を合わせて。Photo by Koji Fukuzaki
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背板を固定している脚の上部に手をかけると肩甲骨が心地よく伸びます。Photo by Koji Fukuzaki

歴史的に価値のある名作「ダイニング チェア」を自宅に迎え入れることで、毎日が少し違って見えてくる。そんな気がしませんか? ワークスペースを作るのをきかっけに、名作家具と一緒に年月を重ねていく暮らしの楽しみ方を始めるのも悪くないですよね。

※掲載した商品の価格は、税込みです。

※新型コロナウイルスによる緊急事態宣言下では一部情報が変更となる可能性があります。公式HPなどでご確認ください。

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この記事の執筆者
イデーに5年間(1997年~2002年)所属し、定番家具の開発や「東京デザイナーズブロック2001」の実行委員長、ロンドン・ミラノ・NYで発表されたブランド「SPUTNIK」の立ち上げに関わる。 2012年より「Design life with kids interior workshop」主宰。モンテッソーリ教育の視点を取り入れた、自身デザインの、“時計の読めない子が読みたくなる”アナログ時計『fun pun clock(ふんぷんクロック)』が、グッドデザイン賞2017を受賞。現在は、フリーランスのデザイナー・インテリアエディターとして「豊かな暮らし」について、プロダクトやコーディネート、ライティングを通して情報発信をしている。
公式サイト:YOKODOBASHI.COM