10月29日に開催されたラグジュアリー5つ星ホテル「シャングリ・ラ ホテル 東京」のエグゼクティブ・シェフ、アンドレア・フェレーロ氏による、男性12名限定参加の「メンズ・クッキング クラス」。男たちが集まり、天才との評判も高いシェフから本格イタリアンを学ぶというまったく新しいその試みは、参加者募集の告知をするやいなや、あっという間に定員に達した。 

 その会場となった会場となったのは「Studio + G GINZA クックラボ」。最新の家庭用コンロとガスオーブンを搭載した可動式調理台や、講師の手元を映すモニターなども備えた、クッキング・スクールとしては画期的なスペースだ。

開始前。各調理台には、レシピとともに、参加者ひとりひとりのネーム入りエプロンが用意されていた。
開始前。各調理台には、レシピとともに、参加者ひとりひとりのネーム入りエプロンが用意されていた。

 午前11時、アンドレア・フェレーロ氏本人と、「シャングリ・ラ ホテル 東京」のイタリアンレストラン「ピャチェーレ」のスタッフ数名が出迎える中、参加者は会場に入り、2名1組となって用意された6つの調理台に着いた。 

シャングリ・ラ ホテル 東京 総料理長アンドレア・フェレーロ氏

アンドレア・フェレーロ氏は、スペイン デニアのキケ・ダコスタ、ドバイのヴィヴァルディ、レストラン、インドネシアのブルガリ ホテルズ&リゾーツ・バリで腕を振った後、2011年から2014年まで、エグゼクティブ シェフとしてイタリアのブルガリホテル・ミラノで活躍。2014年9月1日より、シャングリ・ラ ホテル 東京のエグゼクティブ シェフに就任。
アンドレア・フェレーロ氏は、スペイン デニアのキケ・ダコスタ、ドバイのヴィヴァルディ、レストラン、インドネシアのブルガリ ホテルズ&リゾーツ・バリで腕を振った後、2011年から2014年まで、エグゼクティブ シェフとしてイタリアのブルガリホテル・ミラノで活躍。2014年9月1日より、シャングリ・ラ ホテル 東京のエグゼクティブ シェフに就任。

  まずは、黒縁のレイバンがとびきり似合うシェフのアンドレア・フェレーロ氏が、これから伝授する「どれも簡単で有名なイタリアの伝統的料理」を紹介。シチリアの伝統的な家庭料理茄子のカポナータ、「ピャチェーレ」のシグネチャーディッシュであるスパゲットーニ カルボナーラ、そしてパンナコッタの3品だ。 

 参加者たちは、天才シェフを前に緊張気味ながらも、期待感を高める。いよいよ、3時間におよぶメンズ・クッキング クラスのスタートだ。 

 一品目の茄子のカポナータは、野菜をたっぷりと使う料理。初めに、基本となる野菜の切り方から伝授。大型のモニターにシェフの包丁使いが映され、参加者はそれに倣うが、そう簡単にはいかない。その様子を見たシェフは、各調理台を回ってひとりひとりにアドバイス。

アンドレア・フェレーロ氏によるチェック。料理教室というより、真剣勝負の厨房といった熱い空気に、参加者の背筋が伸びる。
アンドレア・フェレーロ氏によるチェック。料理教室というより、真剣勝負の厨房といった熱い空気に、参加者の背筋が伸びる。

 続いて野菜を炒めるときも同様に、フライパンの回し方、火加減、野菜の火の通り方などを確認する。塩加減にいたっては、2度も3度もチェックして回って味見を重ねる真剣さ。さらに、プリントアウトされたレシピを何度も確認する参加者の様子を見て、「レシピより味見が大切!」と一喝する場面も。

 スタートから1時間を過ぎる頃、2品目のカルボナーラに突入。カポナータと同じように、アンドレア・フェレーロ氏は、味見、アドバイスをエネルギッシュに繰り返す。その熱意に応えるように2人1組の参加者の協調性がぐっと高まり、手際もアップ。なにより皆がいい顔になっている。  

参加者が作った、茄子のカポナータ(写真上)とカルボナーラ(写真下)
参加者が作った、茄子のカポナータ(写真上)とカルボナーラ(写真下)

 用意されている材料は「ピャチェーレ」のカルボナーラで使うものとまったく同じ。パスタのスパゲットーニは18分茹で。熱湯の中にスパゲットーニを入れて茹でつつ、同時進行で、シェフがこだわって選んだ奈良の葉山養鶏所の卵を使って、カルボナーラのソース作りをする。それでも、パスタの茹で上がりまではもう少し。急遽、参加者からアンドレア・フェレーロ氏への質疑応答タイムとなった。

 レシピに関する質問が多いなか、「普段はどんなものを好んで食べていますか? ジャンクフードは食べますか?」なんて質問も。 

「ピッツァは週に1回は食べるね。ジャンクフードも好きなんだけど、休みの日は、いろんなレストランを回ったりするので、食べるヒマがないんだ」

 とユーモラスに返す。 

 話も盛り上がった頃に、パスタの茹で上がりの時間が来た。「Go!Go!Go!」というシェフのアンドレア・フェレーロ氏の声が上がり、会場の空気が一変。カルボナーラのソースが入ったボールに茹で上がったパスタを一気に入れ、卵が固まらないよう手早くからめて、すぐにサーブ。さあ、出来上がりだ。 

 参加者はテーブルに着き、一品目の茄子のカポナータと、出来上がったばかりのスパゲットーニ カルボナーラをいただく。どのテーブルも、ひとくち目から、美味い! と自画自賛。自分たちがこしらえた絶品料理を食べている間に、3品目のイタリアンドルチェ、パンナコッタのデモンストレーション。レシピは、シェフ、アンドレア・フェレーロのおばあさんのパンナコッタを元にしたという。そのパンナコッタの優しい味に、参加者たちの緊張もほぐれ、会話が弾む。

 そんな中、どんな思いで参加をしたのか訊いてみると……。

 「仕事仕事の毎日に、これはいけないと思い、気持ちと頭の切り替えをしようと参加しましたが、大正解でした」 

 「友人に誘われて参加。本気で教えてくれるシェフの厳しさに驚きましたが、最高でした」

 「もともと料理が好き。アンドレアさんから直々に教えてもらえるこの機会、絶対に逃せないと思いました」

参加者の様子。自分で作った料理にご満悦のようだ。
参加者の様子。自分で作った料理にご満悦のようだ。

  などなど、動機は多様。包丁捌きなどから察するに、料理の経験もさまざまのようだが、この日に限っては、全員が天才シェフのもとで修行をした仲間。そんな一体感も漂っていた。

 開始から、ちょうど3時間。アンドレア・フェレーロ氏からの最後のアドバイス。 

「わたしが言ったこと、注意したこと、そして見せたことは、きっと貴方の頭の中に残っているはず。だから、帰ったら家で作ってみてください。今日の3品は、どれもかしこまった料理ではありません。見た目より、味。なによりも味が大切。レシピを見ずに、皆それぞれのアレンジで自分の味を作ってください」

 冒頭の魯山人の言葉につながる。実行することが何よりも大切。そして、人から人へ受け継いでいく、ということが、イタリア料理に限らず、伝統を作り、文化を生み出していく。そう実感させられる熱いイベントだった。 

 次の回があったら、絶対にまた参加する! と全員が声を揃える12人の参加者。その夜、自宅で作ったカルボナーラの味は、いかがだったろう。 

シャングリ・ラ ホテル 東京
http://www.shangri-la.com/jp/tokyo/shangrila

 Studio + G GINZA
http://home.tokyo-gas.co.jp/shoku/ginza/access/index.html

この記事の執筆者
音楽情報誌や新聞の記事・編集を手がけるプロダクションを経てフリーに。アウトドア雑誌、週刊誌、婦人雑誌、ライフスタイル誌などの記者・インタビュアー・ライター、単行本の編集サポートなどにたずさわる。近年ではレストラン取材やエンターテイメントの情報発信の記事なども担当し、ジャンルを問わないマルチなライターを実践する。
TAGS: