今や日本では希少性が最大の持ち味(?)となってしまったアメリカ車。それでも歴史のあるブランドが多いため、数が少ない割に、クルマ好き以外にも知られた名が多い。とくに絶大な知名度を誇るのが、軍用車をルーツにもつジープだ。中核モデルの「ラングラー」はまもなくモデルチェンジを迎える時期となるが、一足早く生まれ変わったエントリーモデルの「コンパス」が、この秋より日本に導入が始まった。洗練されたスタイリングをまといながら、ジープならではの骨太な味も堪能できる、魅力的なSUVだ。

「本気印」ではないがゆえの価値

新世代のプラットフォームを使い、軽量かつボディ剛性の向上を果たしている。
新世代のプラットフォームを使い、軽量かつボディ剛性の向上を果たしている。
フロントグリル、エンジンフード、台形のホイールアーチにジープ伝統の骨太なデザインエッセンスを取り入れている。
フロントグリル、エンジンフード、台形のホイールアーチにジープ伝統の骨太なデザインエッセンスを取り入れている。

 ジープのコンパクトSUV、「コンパス」は2006年に初代が登場。前期型は丸目にスリット入りグリルを備えた「ラングラー」風のデザインだったが、後期型は都市型SUV「グランドチェロキー」に近い顔つきになった。そのスタイリングは新型にも継承され、さらにひとつ上の車格で設定されていた「パトリオット」と統合したことで、質感が格段に向上している。ジープブランドを名乗るうえで欠かせない走破性については、前輪駆動とそれをベースにしたオンデマンド4WDゆえ、「どんな場所でも走れる」というほどのレベルではないのだが、それも時代の流れ。今や本気で走るスペックは、それほど求められているわけではないし、そういう人はきっと「ラングラー」を選ぶだろう。

ジープの世界観が随所に!

最新世代のインフォテイメントシステムは、新しいクルマを手に入れるうえでの大きなメリット。パーキングブレーキを電子制御式にするなど、快適性には相当力を入れている。写真は2WDのもので、4WDではセンターコンソール下方に4つの走行モード切り替えダイヤルが付く。
最新世代のインフォテイメントシステムは、新しいクルマを手に入れるうえでの大きなメリット。パーキングブレーキを電子制御式にするなど、快適性には相当力を入れている。写真は2WDのもので、4WDではセンターコンソール下方に4つの走行モード切り替えダイヤルが付く。
ラゲッジには床の高さを3段階に変えられるボードが付く。
ラゲッジには床の高さを3段階に変えられるボードが付く。

「コンパス」は欧州、とくにドイツ製SUVほどつくりや走りはカチッとしていないが、そのぶんシンプルというかおおらかな、アメリカ的な味がある。そこに魅力を感じればもちろん買いだし、デザイン面での魅力もある。つまり、ヘビーデューティ過ぎる服を街で着るのは大げさだし、浮いてしまうという考え方だ。実際、ファッションの世界では、そうしたブランドの服はシルエットを変えて着こなしの幅を広げているし、機能もほどほどにタフというレベルに落としている。もちろん、その底流にはジープという歴史あるブランドの価値があり、だからこそ「街着」にできるだけの説得力があるのだ。何よりも、日本の道で使いやすい手頃なサイズと、よく考え込まれた収納力は、毎日着たくなる(乗りたくなる)魅力に溢れている。

〈ジープ・コンパス Longitude〉
全長×全幅×全高:4,400×1,810×1,640㎜
車両重量:1,490kg
排気量:2,359cc
エンジン:直列4気筒DOHC
最高出力:175PS/6,400rpm
最大トルク:229Nm/3,900rpm
駆動方式:2WD
トランスミッション:6AT
価格:351万円(税込み)
■問い合わせ先
ジープ フリーコール
TEL:0120・712・812
http://www.jeep-japan.com

この記事の執筆者
男性情報誌の編集を経て、フリーランスに。心を揺さぶる名車の本質に迫るべく、日夜さまざまなクルマを見て、触っている。映画に登場した車種 にも詳しい。自動車文化を育てた、カーガイたちに憧れ、自らも洒脱に乗りこなせる男になりたいと願う。