目に映る佇まい、使う時の手触りや音、放つ香り… ラグジュアリーなアプローチでこその「用の美」の奥深さを、変わりゆく時代こそ見つめ直したい。そんな想いから『Precious』8月号では「五感で慈しむ『暮らしの名品』」と題して、日々を彩る名品を特集しています。

家で過ごす時間を慈しむようになり、2度目の夏を迎えました。暮らしを彩る名品と、その向き合い方までアップデートする…そんな絶好の機会ととらえてみませんか? ナビゲーターは松浦弥太郎さん名品との対話を尊ぶことで生まれる、真の豊かな暮らしへ―。

今回のテーマは「いただく」。お米が大好きな松浦さんの愛用品は、「栗久(くりきゅう)」のおひつ「角漆工房」の合鹿(ごうろく)椀です。

松浦 弥太郎さん
エッセイスト
(まつうら やたろう)2006年から『暮しの手帖』編集長を務める。2015年よりウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げ、現在「おいしい健康」共同CEO。10月29日より、初監督ドキュメンタリー映画『場所はいつも旅先だった』が公開予定。

「栗久」のおひつ、「角漆工房」の合鹿小椀

名品_1,小物_1
■1:おひつ3合¥48,400・■2:しゃもじ¥1,650(栗久)

栗久のおひつは内底の隅を曲線に仕上げているのが特徴。米粒が詰まらない構造になっているのがうれしい。

名品_2,食器_1
合鹿小椀各¥24,200(角漆工房)

かつて石川県能登町の合鹿地方で日常の器として愛された合鹿椀。角 偉三郎(かど いさぶろう)が現代に復活させ、現在は角 有伊(かど ゆい)が受け継いでいる。合鹿小椀は、合鹿椀のおおらかさはそのまま、日々の飯椀、汁椀としてなじむよう、やや小ぶりに仕上げたもの。

「おひつに入れ、合鹿椀によそえば、それだけでごちそうに」( 松浦弥太郎)

「お米を愛して止まない僕がたどり着いたもの。それがおひつと漆のお椀です。炊き立てのごはんをおひつに入れ、木の香りを移し、水分を調整する。それを能登の名匠・角 偉三郎による合鹿椀によそえば、それだけでごちそうに。

ひと口含めば笑顔がこぼれ、ひと粒も残さずいただこうと感謝の念が湧き上がります。おいしさとは与えられるものでなく見つけに行くもの。香りを嗅いで、よく噛んで、味わいを探して、ようやく見つかるものです。滋味という言葉がありますが、最初のひと口より最後のひと口がおいしいもの、そして味わいが余韻として残るのが理想ですね。ただ空腹を満たすのか、恵みを受け取るのかはその人しだい。『いただく』道具を見直してみませんか?」(松浦さん)

※掲載した商品は、すべて税込みです。

問い合わせ先

PHOTO :
本多康司
STYLIST :
来住昌美
WRITING :
本庄真穂
EDIT&WRITING :
兼信実加子、喜多容子(Precious)