最近、耳にする機会が増えた「フェムテック(Femtech)」という言葉。フィメール(Female)とテクノロジー(Technology)」を合わせた造語で、女性の心身の健康を技術の力でサポートする商品やサービスを指します。

そのフェムテックアイテムの中で昨今、注目を集めているのが、ショーツに吸収体を内蔵させた新しいタイプのサニタリーショーツ「吸水ショーツ」です。その吸水ショーツを展開するブランド「Bé-A(ベア)」を立ち上げたのが、美容家・起業家として知られる山本未奈子さん。なぜ、吸水ショーツをつくろうと思われたのか、どんな想いが込められているのかをお聞きしました。

山本未奈子さん
Bé-A Japan CEO 
(やまもと みなこ)12歳から大学卒業までをイギリスで過ごし、32歳のときにニューヨークの美容学校へ入学。首席で卒業した後は同校で教鞭をとる一方、ニューヨーク州でビューティセラピストのライセンスを取得してメディカルスパを立ち上げる。その後、拠点を日本に移し、2009年に髙橋くみCOOと共にMNC New Yorkを設立し、ビューティブランド「シンプリス」、ファッションブランド「キャリー」の事業をスタート。美容家として美容記事の監修やセミナー、イベントの講演など多方面で活躍中。MNC New York

超吸収型サニタリーショーツで女性の活躍を応援!「ベア」の山本未奈子さんがブランドに込めた想いとは?

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「フェムテックブロダクトの力で女性の活躍を応援したい」と語る山本さん。2020年7月に発売された「ベア シグネチャー ショーツ」は、現在まで約6万枚販売されています。

Q:「ベア シグネチャー ショーツ」を発売して1年。振り返っていかがですか?

A:あっという間でしたね。最近はSNSを中心に、女性の権利や健康問題についての意見交換が活発になり、生理は隠すべきもの、恥ずかしいものじゃない、ということを多くの方が発信してくださっています。さらにこの1年で吸水ショーツを扱うブランドが増え、市場の盛り上がりを肌で感じています。

Q:「ベア」を立ち上げようと思われたきっかけを教えていただけますか?

A:2009年に設立したビューティやファッションの製品を扱う会社「MNC New York」は、ヴィジョンに「日本でいちばん女性を幸せにする会社」を掲げ、「あらゆる女性の可能性を信じ、私たちが情熱を持って生み出しお届けする商品を通じてイノベーションを起こしていく」ことをミッションとしています。

吸水ショーツ自体は2013年頃からアメリカで発売されていて、素晴らしいコンセプトだと思ったのですが、吸水量が少なく、お世辞にもクオリティが高いとは言えないもの。日本人は納得できないだろうと思いました。それならば、私たちが満足できる商品をつくろうと発起したのがきっかけです。

工場探しから2年半の歳月をかけて「吸水量120ml」を実現!超吸収型サニタリーショーツ誕生までの長かった道のり

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「ベア」の商品は全てメイド・イン・ジャパン。優れた技術をもつ職人さんによって丁寧につくられています。

Q:デビューまで2年半も要したのはなぜですか?

A:いちばん大変だったのは、工場探しでした。「そんな商品売れない」「その吸水量を実現するのは難しい」「日本人はきれい好きだから受け入れられない」などと言われ、何社も断れました。途方に暮れていたとき、尿漏れショーツの技術をお持ちの日本の工場と出会い、私達の思いに共感してくださって開発を進めることができました。

そこからは、開発メンバー皆でサンプルを試して意見交換し、修正の繰り返し。使用している間の肌触り、ムレ、ニオイ、洗濯の手軽さなど、気になる点を全て解決して発売したかったので、結局2年半の歳月がかかってしまいました。

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5層のテクノロジー構造で、約120ml もの液体をしっかり吸水。防水生地による横漏れ防止テーブを施すことで漏れの心配から解放され、抗菌・防臭加工も施されています。 ベア シグネチャー ショーツ02 ¥7,590/ベア(ベア ジャパン)

Q:いちばんこだわったポイントは?

A:やはり吸水量です。クロッチ(股部分)を5層にすることで「ベア シグネチャー ショーツ」は約120ml、「ベア ウルトラ ヘビー&ナイト ショーツ」は約150mlの吸水量を実現しました。ほかでは「30mlが限界」といわれたので、この吸水量が実現できたのは、工場の方と共に細かく調整したショーツの規格と、職人さんによる高い技術の賜物だと思います。一般的なショーツは5工程で作られるなか、ベアのショーツは実に30もの工程を踏んで1枚を仕上げています。

※公的検査機関のデータをもとに算出しています

知的障がいのある子供をもつ母親やトランスジェンダーの方からも感謝の声

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レスリー・キー氏撮影の躍動感あふれるイメージビジュアル。「ベア」のショーツが叶える自由を表現しています。

Q:発売して印象に残ったエピソードはありますか?

A:使ってくださった方から「人生が変わった」といった多くのお言葉をいただきました。その中でとくに印象に残ったお話は3つあります。

1つ目は、知的障がいのあるお子さまをおもちのお母さまからの感想です。自分のからだに起こる変化を理解できないお子さまは、その日になるとベッドや部屋の壁まで汚してしまうため、その度にシートで覆わなければいけなかったそうです。それが「ベア シグネチャー ショーツ」をはくことで解決し、壮絶な日々から解放されたとおっしゃいました。そのお母さまは施設などを回って講演会を開き、「こんなに素晴らしいものがある」と紹介してくださったと聞いて感動しました。

2つ目はトランスジェンダーの方の声。その時期を過ごすのも嫌だしファンシーな色や飾りのついたサニタリーショーツをはくのも嫌、男性用トイレには汚物入れもなくて不便。その点弊社のショーツは黒1色のシンプルなデザインで、その時期の面倒なあれこれを解決してくれるのでありがたいとおっしゃっていました。

そして3つ目はZ世代の方の「これならゴミが出なくて環境にいいですね」という声です。若い方は想像以上に環境保全に対して意識が高く、海洋プラスチックゴミに対しての知識も深い若い世代のお声に、私たちも勉強になっています。

銀座三越のポップアップストアには男性の姿も。時代の変化を実感!

Q:ドラッグストアや百貨店など販売する場が広がっていますが、手応えはいかがですか?

A:目に触れる場所、手にする場所が増えれば、吸水ショーツの存在を知っていただくきっかけになると思います。世の中はフェムテックや吸水ショーツの話題で盛り上がっているように見えますが、私の肌感ではまだ10%程度の方にしか知られていない気がします。

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2021年 8月4日〜10日の1週間、銀座三越1階プロモーションスペースで開催されたポップアップストアの内観

そんな中、8月には銀座三越の1階でポップアップストアを開催し、ご夫婦やカップルで来店される方が多かったのは驚きました。女性のからだの変化を考えるのは女性だけ、ではなく男性も吸水ショーツの仕組みについて聞き、女性の悩みに耳を傾け寄り添っている姿が見られて嬉しかったですし、時代の変化を実感しました。

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2021年2月5日にジュニアライン「ベア ペティート シグネチャー ショーツ」(¥7,150/サイズ展開140・150・160)を発売

Q:これからのフェムテックはどうなるのが理想だと思われますか?

A:まずは、性差を問わずに誰もが生き方や暮らし方を自由に選べる、それが当たり前の世の中になるといいなと思います。悩みを抱える女性にとって「個人差があるから仕方ない」で片付けるのではなく、それを解決してくれるアイテムは救いになると思います。性差なく活躍できる世の中がフェムテックプロダクトの力で実現できるのであれば素晴らしいですよね。

新しいことにチャレンジすることで、自分の考え方も広がる

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プラスチックを使用していないスタイリッシュなパッケージ。ブランド名の「ベア」は「Girls be ambitious!」に由来します

Q:読者へのメッセージをお願いできますか?

A:吸水ショーツにまだ抵抗がある方が多いかもしれませんが、一旦、先入観を白紙にしてぜひ試していただきたいです。「そんなの絶対無理」とおっしゃっていた方ほど、実際に使ってみると感動されるんですよ(笑)。否定から始まった方も、使ってみると「いいのかも…」となり、なくてはならない存在に変わっていく。その過程がイノベーションだと私たちは思っています。

私のテーマは「固定概念を外す」なんです。「こうじゃなきゃいけない、こうであるべき」というのが自分の中にずっとあったのですが「世の中にはいろんな意見があるから、それを柔軟に受け入れてみよう」と思うようになってからは、新しいことへの挑戦に抵抗がなくなりました。新しいことにチャレンジすることで、考え方も広がると感じています。


「ベア」はこれまで、18の18の医療施設や、児童福祉団体に合計3250枚の吸水ショーツを寄贈するなど社会貢献活動も活発です。今後は、高齢化社会やさらなる女性の活躍を見据えて、尿漏れショーツなども手掛ける予定だそう。プロダクトを通じて女性を応援する山本さんの強くしなやかな生き方に多くの刺激を受けたインタビューとなりました。

※掲載した商品はすべて税込み価格です。

問い合わせ先

ベア ジャパン

03-3473-3939

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この記事の執筆者
文化服装学院卒業後、流通業界で販売促進、広報、店舗開発を約10年経験した後、フリーランスとして独立。下着通販カタログの商品企画などを経て、現在はランジェリーを中心に、雑誌、新聞、ウェブサイトなどで執筆・編集を行なう。モットーは「ラグジュアリーからプチプラまで」。国内外の展示会・店舗を幅広く取材する。
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WRITING :
川原好恵
EDIT :
石原あや乃