身長156cmのインテリアエディターDが、おすすめのアイテムを実際に体験しながらレポートする本連載。創業以来100年以上デンマーク製にこだわり続けている家具メーカー「カール・ハンセン&サン」から、誰もが一度は見たことがある名作椅子を前後編でご紹介します。

【前編】となる今回は、世界で一番売れている椅子の一つ“Yチェア”こと「CH24」(以下「Yチェア」と記載)をピックアップ。北欧インテリアにあるダイニングチェアの象徴のようなこの椅子は、今から70年以上前に家具の巨匠デザイナー、ハンス・J・ウェグナーによってデザインされ、今もなお世界中で愛されています。

定番にも多くの仕様が用意されお家の雰囲気に合わせて選べるうえに、身長に合わせて座面高も「45cm」と「43cm」から選べます。

そして、「いつかは手に入れたい」「買い替えの決心がつかない」「既に持っているけれど、買い足したい」そんな風に考えている方がいらしたら、ぜひこの機会にご覧いただきたいフレッシュな限定コレクションが発売されます。しかも定番と合わせても素敵なのです! 

これまでのナチュラルな印象とは異なる新たな魅力を発見するとともに、70年以上にわたり愛され続ける理由を再認識。「Yチェア」の奥深い魅力を、さまざまな角度からレポートします。

合理的な構造美とクラフトマンシップが普遍的な魅力を生む「Yチェア」

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「Yチェア」がそこにあるだけで、北欧モダンな空間になるアイコニックな存在

「Yチェア」は、発売から70年以上経った今でも多くの人に愛され、デンマークにあるカール・ハンセン&サンの工場で生産され世界中に輸出されています。世代を超えて受け継ぎたくなる名作の魅力は、サステナブルの文脈にも沿うことから、近年ますます需要が高まっています。

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背もたれの印象的な形状が「Yチェア」と呼ばれるゆえん

最もアイコニックな特徴は、曲木技術を駆使したアームに「構造上の安定」と「心地よい使用感」を作り出すのが、印象的なY字型の背もたれです。「背もたれとアームを一体化する」という構造は、「Yチェア」がデザインされた1949年当時、他には見られなかった斬新な試みでした。

2種類から選べる座面高。実は43cmがオリジナル!

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「Yチェア」は、座面高43㎝(左)と座面高45㎝(右)の2種類。風合いの違いは素材と仕上げによるものです(左:アッシュ材/ソープ仕上げ、右:ビーチ材/オイル仕上げ )

1949年最初にデザインされた当時の座面高は、デンマーク人の中では比較的小柄だったハンス・J・ウェグナーの身長に合わせて「43㎝」だったとも言われています。2016年に座面高「45cm」がスタンダードの高さとなりましたが、現在でも小柄な体型に方に合わせて、座面高「43cm」も選ぶことが可能です。

私も両方に座って比べたところ、「Yチェア」の形状のバランスやペーパーコードの素材の特性上、通常の座面高45cmの椅子に座った時に感じる印象と、43cmでは少し異なりました。

経年したペーパーコードは柔らかくしなるので、単純に寸法で選ぶよりも実際にご自身でかけ心地を試してみることをおすすめします。なお、座面高43cmの商品については、若干お値段は高くなります。

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ゆったり&短めアームだから自由な座り方が可能

食後にもう少しゆっくりとしたい時などには、背もたれのしなりを楽しむように背もたれに寄りかかると、自然な角度で肘を置くことができます。リモートワークで資料を取りたい時や、ちょっと姿勢を変えたい時には座面に対して90度横に座ることも可能。腰骨が立った状態で寛げるのでこの座り方もとても心地よいのです。

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背もたれに身を預けても、横向きで片肘ついても曲木のアームがいい感じにサポートしてくれます

なじみのフォルムに繊細な色合い。期間限定カラーで新たな魅力を再発見

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【ブランド】カール・ハンセン&サン 【商品名】CH24 | ハンス J. ウェグナー×イルス・クロフォード ピューター色【写真の仕様の価格】¥119,900(座面高450mm) 【サイズ】幅550×奥行51× 高さ750・座面高450 (mm)、または幅550×奥行51×高さ730・座面高430(mm) 【材質】脚部:オーク材、シート部:ナチュラルペーパーコード

ところで上の写真の「Yチェア」、とても不思議な色だと思いませんか? ブルーがかったグレーのような、一言で表せないニュアンスカラーなのです。

これは、70年以上にわたるハンス・ウェグナーとの協働とそのロングライフデザインを記念して、厳選した現代的なカラーパレットを開発したもののひとつ「ピューター色」。なじみのあるフォルムに深みと複雑さを加え、独特の雰囲気を醸し出します。

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一番手前と奥のものは同じピューター色。陽の当たり方で全く異なる表情を見せてくれる複雑な色合いがなんとも素敵

ピューター色を含む繊細で複雑な全5色は、ロンドンを拠点に世界で活躍するデザイナー兼アートディレクターのイルス・クロフォードが、デンマークを代表する表現派の画家、ペア・キルケビーの作品にインスピレーションを受けて選んだもの。

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オーク材の天然の木目の美しさを穏やかに際立たせる、水彩絵具を思わせる期間限定カラー。透明感のある質感は多色使いしてもOK! PHOTO:大谷 宗平(ナカサアンドパートナーズ)

「Yチェア」を含む、初期の5モデルにのみ採用できるこの特別なカラーパレットは、2021年10月1日(金)~2022年3月31日(木)の期間限定で手に入れることができます。ピューター以外の色も甲乙つけがたいのですが、多色使いしてもうるさくならず、上質な遊び心を感じられる空間になるので、迷われたら複数の色を選ぶのも素敵ですよね。

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期間限定カラーのアイテムは、フラッグシップストア、オンライン・ショップおよび、全国の限定店舗にて発売。東京・外苑前にあるフラッグシップでは、9月初旬より先行展示予定 PHOTO:大谷 宗平(ナカサアンドパートナーズ)

伝統的な職人技術と最新技術を組み合わせ、タイムレスなモダンデザインを世界中に提供する「カール・ハンセン&サン」

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世界各地で愛用される家具メーカー「カール・ハンセン&サン」はファミリーオーナー企業

1908年、創始者のカール・ハンセンが自身の名を付けた家具工房をデンマーク・オーデンセに開業。当時の多くの工房がそうだったように、イギリスやフランスの影響を受けた華美な装飾が特徴のヴィクトリアンスタイルの注文家具を手仕事で製造するのが主流でした。当時のデンマークは、第一次・第二次世界大戦によって物資不足に悩み、常に隣国ドイツとの力関係に振り回されていました。

今ではコペンハーゲンはもちろん、ニューヨーク、ミラノ、ロンドン、パリ、東京のほか多くの国の主要都市にフラッグシップストアを構え、今も成長し続けている「カール・ハンセン&サン」。ハンス・J・ウェグナー、アルネ・ヤコブセン、コーア・クリント、ボーエ・モーエンセンと名だたる巨匠デザイナーの椅子を製作し、110年にわたりデンマーク・デザインの名作を世界中に送り出し続けています。

そんな「カール・ハンセン&サン」が目指しているもの、そのための取り組みも、多くの人から支持される理由なのです。

■1:デザインを「商品」にし、生活の中で愛され続けることで「名作家具」に

創業当時から、いずれは機械を導入して量産家具を生産することを当初から目指していたという将来を見据えた創始者の考え方が、多くのデザイナーの優れたデザインを世に送り出すことを叶えました。

70年以上も世界中で売れ続けている「Yチェア」は、完成までに100を超える伝統的な職人による工程を経て製作されています。座面には120メートルのペーパーコードを使用しており、今でも手作業で一脚一脚編まれています。

一部は高度な機械化に成功し、製造効率を上げながらも手作業でしかできない製造工程は引き続き保つことで、高い耐久性をもつ、長く愛される家具を作り出しています。

■2:クラフトマンシップの継承と優れた家具職人の育成

そのように作り続けるためには、次世代の職人の育成も欠かせません。そこでカール・ハンセン&サンでは2019年から「The Lab」という新たな指導者ガイドプログラムを導入。見習工が製作現場において学ぶ時間を取れるようにしています。

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名作家具が残る背景には伝統技術の継承が必須

熟練の職人による修理や張替を請け負う部門を社内に設けられており、何十年と大事に使い込まれた家具は、修理・修繕することで美しく蘇り、また次の何十年と使用できます。「一生もの」として次の世代にも受け継ぎたくなるサステナブルなデザインと言えますよね。

■3:使う素材を選び、余すところなく使いきる

椅子のフレーム部の木材は、長きにわたる信頼関係を築いてきた製材所から入手しているサステナビリティに配慮した森林で伐採されたものです。

全ての製品を、環境ラベルを有した木材(FSC認証)に変更する取り組みのほか、端材を用いた小物開発や、もっと小さな端材やおがくずは地元ゲルステッドの地域暖房設備の燃料として、カール・ハンセン&サンの工房をはじめ、地域400世帯以上の暖房に一役買っています。

生涯にわたり500脚以上の椅子をデザイン。20世紀を代表する家具デザイナー、ハンス・J・ウェグナー

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ハンス・J・ウェグナー

1914年、デンマークとドイツの国境の町・トゥナーに生まれたハンス・J・ウェグナー。家具職人のもとで修業し17歳で家具職人の資格を取得。アルネ・ヤコブセンの事務所に勤めた後、1943年自身の事務所を開設しました。

椅子の古典の良い点を純化させ、現代生活に合うよう機能的にかつシンプルに椅子の機能として必要最低限にまで無駄を削ぎ落とすことで「デンマーク・モダン」という独特のスタイルを作り出します。そして生涯にわたって進化(深化)させ続けることで500以上の椅子のデザインを残し、その多くが名作として評価されています。

メーカーの特性を活かすデザインを提供する有能なマーケターの一面も

「Yチェア」は、中国の明代の椅子をデザインの源流としています。威厳のある風格を醸し出すプロポーションと優美な曲線、それでいて合理的な木材の使い方をしているため軽くて丈夫でパーツごとの修理が可能だという機能を純化し、ほかにも「チャイニーズチェア」や「ザ・チェア」などの名作家具をそれぞれ異なるメーカーにデザイン提供しています。

ハンス・ウェグナーは、デザイナーである前に家具職人なので、デザインが商品になる工程に見合ったパートナー企業を選んでいたのです。名作が作られ続け、愛され続けるには、メーカーとデザイナー双方の両想いの関係がとても重要だということがわかります。両想いが70年も続くとはすごいことですよね。

「私はデザインの依頼があったら、とにかくそのメーカーの体質に適したデザインをするように心がけている。メーカーの工場の性格や技術的な特性を調べ、その得意とする特徴を最大限に活かせるようなデザインを考える」(「ハンス・ウェグナーの椅子100」織田憲嗣著/2002/平凡社/P.10より)


以上、「カール・ハンセン&サン」の名作「Yチェア」をご紹介しました。

日々の生活で豊かな時間を共に過ごし、世代を超えて受け継いでもらえる名作家具を手に入れることはサステナブルな取り組みでもあります。今しか手に入らない限定カラーを検討しがてら、定番に立ち戻るのもまた一興。ぜひこれを機会にご自身の体と心に相談して、欲しいと思える一脚を探してみませんか?

※掲載した商品の価格は、すべて税込みです。

※新型コロナウイルスによる緊急事態宣言下では一部情報が変更となる可能性があります。公式HPなどでご確認ください。

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この記事の執筆者
イデーに5年間(1997年~2002年)所属し、定番家具の開発や「東京デザイナーズブロック2001」の実行委員長、ロンドン・ミラノ・NYで発表されたブランド「SPUTNIK」の立ち上げに関わる。 2012年より「Design life with kids interior workshop」主宰。モンテッソーリ教育の視点を取り入れた、自身デザインの、“時計の読めない子が読みたくなる”アナログ時計『fun pun clock(ふんぷんクロック)』が、グッドデザイン賞2017を受賞。現在は、フリーランスのデザイナー・インテリアエディターとして「豊かな暮らし」について、プロダクトやコーディネート、ライティングを通して情報発信をしている。
公式サイト:YOKODOBASHI.COM