身長156cmのインテリアエディターDが、おすすめのアイテムを実際に体験しながらレポートする本連載。創業以来100年以上デンマーク製にこだわり続けている家具メーカー「カール・ハンセン&サン」から、誰もが一度は見たことがある名作椅子を前後編でご紹介します。

昨日公開した【前編】に続いて今回は、好きな場所で寛げる優雅なフォールディングチェア“キューバチェア”こと「MG501」(以下「キューバチェア」と記載)をピックアップしました。

その日の天気や気分で、屋外でも屋内でもお気に入りの一脚でゆったりとした時間を過ごせたら素敵ですよね。「お家が狭くなるからモノはいらない」「エクササイズするスペースが欲しいからソファは置けない」「賃貸だから家具は間に合わせのもので構わない」…そんな風に今まで諦めていた方にも、極上の寛ぎは必要です。

場所によって複数の椅子を設置するのではなく、お気に入りの一脚の椅子を持ち運んでリビングや寝室、テラスや中庭などで寛ぐとしたら、どんな椅子を選んだらいいのでしょうか?

極上の座り心地・洗練されたデザイン・大きすぎず運べる重さ・手の届くお値段で、なおかつ将来の名作家具になるポテンシャルを兼ね備えている…。そんな椅子あるの? と思いますよね。実は、あります。

欲張りなニーズに応えてくれる、たためる美しいラウンジチェア「キューバチェア」の魅力を、さまざまな角度からレポートします。

短い夏を大いに楽しむ北欧で生まれた、美しい屋外仕様の「キューバチェア」

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往年の名作のような風格が感じられる「キューバチェア」

「キューバチェア」は、モーテン・グッドラーによる1997年のデザイン。無駄のない構造美と機能性を追求したデンマーク・モダンの特徴をもち、先代の巨匠デザイナーたちの影響を色濃く受けた風格のある折りたためるラウンジチェアです。

「キューバチェア」にはさまざまな仕様があるのですが、今回はその中からチャコールグレイがシックな、アウトドアでも使用できるモデルをご紹介します。

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【ブランド】カール・ハンセン&サン 【商品名】MG501キューバチェア アウトドア 【写真の仕様の価格】¥90,200 【サイズ】幅610×奥行790×高さ760、座面高390(mm) 【材質】脚部:オーク材、背もたれシート部:フラットロープ

「キューバチェア」のアウトドア仕様は、フレームにチーク材、座面や背面に屋外用のフラットロープを使用。雨風による劣化を考慮して、金具はすべてステンレススチールを採用しています。

夏が短いデンマークは、日が長い白夜を活かして屋外で過ごすことに長けています。おうち時間の増えた私たちも、デンマークの人々にならって屋外で過ごす時間をもっと豊かにしてみませんか?

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通り雨がやんだテラスに「キューバチェア」を設置すると、一瞬にして寛ぎ感のあるコーナーができました。

しっかりとしたハンモックのような極上の座り心地

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素材感や高さの感じの効果か、温泉旅館の窓辺にいるような懐かしさを感じるかけ心地

木製フレームに回された幅広のロープは、表と裏にしっかりと編み込まれ二重構造になっています。かけ心地の第一印象は「しっかりとしたハンモック」のような浮遊感。さらに深く身を預けていくと座面フレームのカーブが心地よく体を導いてくれて、腰から背中にかけて「張り感」と「しなり」を感じます。

体重が分散されてどこにも力がかかっていない感覚が、心をほぐしてくれます。深く座っても膝裏が当たらずに両足をつくことができる低めの座面、深すぎない奥行きもいい感じです。目線が低くなるので、天井の高さが感じられて室内が広く感じられます。ロープが素肌に当たる感覚はチクチクした感じは一切なく、畳マットのような触感の印象を受けました。

たためて運べて、好きな場所に“おひとりさまスペース”を作れる

「キューバチェア」の重さは約6kg。女性一人でも楽に持ち運ぶことが可能です。たためる椅子と聞くと、なんとなく間に合わせのような臨時的扱いに捉えられがち。でも、「キューバチェア」は違います。たたんで壁に立てかけられた姿も美しいのです。

また、たたんで壁に立てかけた時に安定感ある状態で保持されるのも嬉しいポイント。これなら安心してヨガマットやエクササイズボールを使うスペースも確保できます。

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往年の名作家具と同じ空間にあっても、しっくりとなじむ佇まいの「キューバチェア」

ラウンジチェアとしては比較的コンパクトなので、寝室の片隅において読書をしたり、リビングダイニングのコーナーで夕暮れの時間を楽しんだり、テラスに出して飲み物を楽しんだりと、気負わずに移動して、贅沢なひとりの時間を心ゆくまで過ごすことができます。

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持つときは、カーブを自分の体側に脇にグッと差し込む感じでギリギリ手が届きました。座面側も軽く手を添えると安定します
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広げる時もゆったりとした気持ちで簡単に設置できる寸法体系

「キューバチェア」をデザインしたのは、デンマーク・モダンを継承するモーテン・グッドラー

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木材への深い造詣で知られるデザイナー、モーテン・グットラー

1944年、デンマーク・コペンハーゲンに生まれたモーテン・グットラー。海上輸送の教育を受け、独学で建築とデザインを学んだ後、さまざまな企業のインハウスデザイナーとして社内の商品開発とデザインを担当。1972年に自身のデザイン事務所を創立し、家庭用品、パッケージ、グラフィック、照明など多様な仕事を手掛けていきます。

1984年以降、グットラーは家具のデザインに専念することを決意。スカンジナビアデザインの伝統を継承する、シンプルで軽快なフォルムをもつ製品を発表していきます。高品質の素材を使用し細部への配慮をすることで、使う人に絶妙な快適さを感じてもらえる家具を生み出すデザイナーです。


以上、「カール・ハンセン&サン」の名作「キューバチェア」をご紹介しました。

無理なく自然体で寛げる極上の座り心地。置いただけで洗練されたコーナーができるデンマーク・モダンの王道をいく「キューバチェア」が10万円以下で手に入れられるなんて、正直とても驚きました。ぜひ座り心地と持ち運びやすさやチャコールグレイの深い色味を、ご自身の目と体で試してみてください。

※掲載した商品の価格は、すべて税込みです。

※新型コロナウイルスによる緊急事態宣言下では一部情報が変更となる可能性があります。公式HPなどでご確認ください。

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この記事の執筆者
イデーに5年間(1997年~2002年)所属し、定番家具の開発や「東京デザイナーズブロック2001」の実行委員長、ロンドン・ミラノ・NYで発表されたブランド「SPUTNIK」の立ち上げに関わる。 2012年より「Design life with kids interior workshop」主宰。モンテッソーリ教育の視点を取り入れた、自身デザインの、“時計の読めない子が読みたくなる”アナログ時計『fun pun clock(ふんぷんクロック)』が、グッドデザイン賞2017を受賞。現在は、フリーランスのデザイナー・インテリアエディターとして「豊かな暮らし」について、プロダクトやコーディネート、ライティングを通して情報発信をしている。
公式サイト:YOKODOBASHI.COM