ネクタイを核とした、「ソフトな」メンズブランド、ドレイクス

 1977年創業、英国のネクタイ・ブランドとして知られてきた「Drake’s(ドレイクス)」。2010年にマイケル・ヒル氏とマーク・チョー氏がブランドを担って以来、ネクタイを中心に、シャツやジャケットなども幅広く手がけるブランドとなり、現在ではウェブサイトや雑誌などオウンドメディアにも注力して、メンズウェア・トレンドに大きな影響を与える存在となっている。日本でもGINZA SIXにショップがオープンし、フルアイテムが展開されるようになった。先般百貨店などで開催されたトランクショーで来日した、ドレイクスの営業責任者、Christopher Gumbs(クリストファー・ガンズ)さんに、ブランドの現状から、出張が多いクリストファーさんの服装術までお話を伺った。

英国らしさに、インターナショナルなモノの良さを取り入れる

GINZA SIX 5階「BRITISH MADE(ブリティッシュ メイド)」内にshop in shopとしてオープンした「Drake’s(ドレイクス)」。
GINZA SIX 5階「BRITISH MADE(ブリティッシュ メイド)」内にshop in shopとしてオープンした「Drake’s(ドレイクス)」。
「ドレイクス」営業責任者のChristopher Gumbs(クリストファー・ガンズ)さん。
「ドレイクス」営業責任者のChristopher Gumbs(クリストファー・ガンズ)さん。

──現職に就かれてどのくらいになりますか?

「ドレイクスに勤めて1年半ぐらいになります。以前は高級紳士靴エドワード・グリーンに5年間勤めていました。その時も海外でトランクショーを行なっていて、お客様が重なっていたこともあって、ドレイクスのことはよく理解していましたね。さらに前には百貨店リバティのメンズの責任者を務めたり、メンズファッションでのキャリアが長いです」

──クリストファーさんの目から見た、ドレイクスの特徴などをお聞かせください。

「生地づくりのノウハウや職人性など、ソリッドなバックグラウンドをベースとした、ソフトなテイストのメンズウェアというところでしょうか。ネクタイというソフトなものを中心としたトータルなスタイルを提案しています。ネクタイをオンタイムだけでなく、カジュアルでも着こなしていただけるよう提案していますが、そうしたカジュアル感はブランドとしても打ち出していきたいですね」

ドレイクスのメインアイテムであるネクタイ。鮮やかな色と柄が特徴だ。
ドレイクスのメインアイテムであるネクタイ。鮮やかな色と柄が特徴だ。

──英国らしさ、というところにこだわりはあるのでしょうか。

「英国のブランドだから英国製のみ、ということではありません。スコットランドのハリス・ツィードを使う一方で、ジャケットの柔らかなテーラリングはイタリアのファクトリーによるものです。ボタンダウン・シャツはアメリカ由来のスタイルですし、シャンブレー生地は日本製です。インターナショナルにモノの良さを取り入れて、ミックスしていくのがブランドのコンセプトとして大切にしているところです。クリエイティブ・ディレクターのマイケル・ヒルには、ロンドンのサヴィル・ロウで学んだテーラリングのベースがありますが、各国の物づくりの現場を訪ねて、それらの特色を吸収しています。そして、ミックスすることで、新しいスタイルを創造していると思います。

 また、数年前には英国サマーセットにあるシャツファクトリーを買収して、自社生産をしています。シャツの襟を少しロングポイントにしたり、シャツジャケットのディテールを変更したり、そうした細やかなブラッシュアップは、自社工場があるからこそできることでもあります」

ハリス・ツィードなど英国生地を使い、イタリアの柔らかなテーラリングで仕立てられたジャケットには、ドレイクスらしさが表れている。
ハリス・ツィードなど英国生地を使い、イタリアの柔らかなテーラリングで仕立てられたジャケットには、ドレイクスらしさが表れている。

──トランクショーで世界各国をまわられているということですが、その際に気をつけているのはどんなことでしょうか。

「私は会話することが好きなので、まずは会話を通じてお客様を知ることが重要です。その方のパーソナリティや好みを、会話の中で少しずつ探っていきます。生地見本などをお見せしていると、お客様にご自身の新たな好みを発見していただくことも多いですね。また、(ネクタイが)全身でどういう見え方をするかもポイントで、見本を合わせながら一緒に相談していきます。

 日本のお客様は生地について、そのバックグラウンドまでお詳しいですね。あと、概して年齢が高くなるとあまり冒険した服装はしないものですが、日本の方はより面白いものを求める傾向があります。また、他の国々ではある特定のスタイルが人気になる傾向がありますが、日本ではご自身独自の考えや信念をお持ちの方が多いように見受けられます。私たちにとっても、大変勉強になります。

 ビジネス的な面においてもトランクショーは重要ですが、エンドユーザーであるお客様と直接お話できることが、自分にとって、ブランドにとって、大切なことです」

「例えばこうしたプリントタイは派手な第一印象ですが、ツィードなどと組み合わせると相性がいいのです」とスタイリングを提案するクリストファーさん。
「例えばこうしたプリントタイは派手な第一印象ですが、ツィードなどと組み合わせると相性がいいのです」とスタイリングを提案するクリストファーさん。

──最近ドレイクスは「Easyday(イージーデイ)」という新しいラインをスタートさせましたが、それについてお聞かせください。

「毎日着られるような服を、ドレイクスとしては抑えた価格で提案しています。従来よりもややカジュアルなテイストが盛り込まれてもいます。また、ネクタイの大剣幅を7センチにするなど、より若い世代を想定しています。もっとも品質に関しては妥協せず、英国ブリスベン・モスのコーデュロイや、ラバットのホップサックなど高い品質の生地を使っています。パターンなども従来同様ですが、縫製は別のファクトリーで行なっています。あと、3枚シャツをお買い上げいただくとディスカウント、というユニークなサービスも採用しています」

「Easyday(イージーデイ)」ラインのジャケットについて説明するクリストファーさん。ナポリのファクトリーでつくられている。
「Easyday(イージーデイ)」ラインのジャケットについて説明するクリストファーさん。ナポリのファクトリーでつくられている。

──旅の達人でもあるクリストファーさんの、トラベル・ワードローブについてお聞かせください。

「例えばアジアへの旅では、こうした軽量なバスケットウィーブの生地を使ったジャケットが便利ですね、アジアでは冬でもちょっと暑い場合がありますから。東京はその前に滞在した台北より少し寒いので、こうしてセーターで調節しています。ネクタイはファイン・グレナディン織りのプレーンなネクタイを必ず持っていきます。さらにこの秋冬はこうした犬の絵型を配した楽しげなプリント柄のネクタイを加えています。シャツはまず白のオックスフォードのボタンダウン、カジュアルにもビジネススタイルにも合わせられますから。そして日本製のシャンブレー生地のシャツ。軽い質感が気に入っています。靴はコードバンのオールデン。コードバンはもともと油を含んでいるので、ポリッシュはそれほど必要ありません。朝ちょっとホコリをはらうぐらいで十分。出張にはもってこいの靴なんです」

バスケットウィーブのネイビージャケットは、少し透けるような生地感。アジアへの旅では重宝するという。
バスケットウィーブのネイビージャケットは、少し透けるような生地感。アジアへの旅では重宝するという。
ホワイトオックスフォードとブルーシャンブレーのボタンダウン・シャツ、ミッドナイトブルーのファイン・グレナディン織りタイと犬のプリントを配したウールツイルタイ。今回のビジネストリップでクリストファーさんがチョイスしたアイテム。
ホワイトオックスフォードとブルーシャンブレーのボタンダウン・シャツ、ミッドナイトブルーのファイン・グレナディン織りタイと犬のプリントを配したウールツイルタイ。今回のビジネストリップでクリストファーさんがチョイスしたアイテム。
ウーステッドのパンツに合わせていたのは、ブラウン・コードバンを使ったオールデンのウィングチップ。コードバンが含む油分による自然な艶が出ている。
ウーステッドのパンツに合わせていたのは、ブラウン・コードバンを使ったオールデンのウィングチップ。コードバンが含む油分による自然な艶が出ている。

問い合わせ先

東京都中央区銀座6-10-1 GINZA SIX 5F

www.drakes.jp

この記事の執筆者
『エスクァイア日本版』に約15年在籍し、現在は『男の靴雑誌LAST』編集の傍ら、『MEN'S Precious』他で編集者として活動。『エスクァイア日本版』では音楽担当を長年務め、現在もポップスからクラシック音楽まで幅広く渉猟する日々を送っている。