すべてお手製でつくる方、シンプルに時間をかけずにつくる方、百貨店や料亭などで購入する方など、おせちの在り方は人それぞれです。伝統的なおせちをクラシックにいただくのもステキですが、カジュアルに、楽しく、様々な食べ方で味わってみるのもいいですね。そこで今回は、日本料理を中心とした料理教室を主宰し、あまりの人気に「予約が取れない料理教室」と呼ばれている料理家の吉田麻子先生に、「おせち料理」にまつわるテクニックを10つ、教えてもらいました。

【おせちテクニック 1】冷凍おせちは冷蔵庫で解凍を

 
 

通販などで購入した冷凍おせちを美味しくいただくには、冷蔵庫でゆるやかに時間をかけて解凍を。基本的には、商品に記載されている解凍法や時間に従います。

冷凍おせちを電子レンジや常温で解凍するのはNG

早く解凍しようと、電子レンジや常温で解凍するのはNGです。ドリップ(冷凍した食材内の氷が溶けて出てくる水分)とともに旨みが逃げてしまう可能性があります。

なお、お正月のご馳走で冷凍庫がいっぱいで、おせちを入れるスペースがないという場合は、氷を入れたクーラーボックスや発泡スチロールに入れて解凍するとよいでしょう。

【おせちテクニック 2】イクラも冷凍OK? おせちの冷凍保存

 
 

すぐに食べた方が味はうんとよいですが、栗きんとんでも田作りでも、ほとんどのおせち料理は冷凍保存が可能です。ただし、冷凍することで食感が損なわれる、コンニャクやレンコンが入った煮しめはおすすめできません。

手づくりおせちは、つくってすぐに冷凍すると◎

おいしさを保つ冷凍のコツは、手づくりの場合はつくってすぐに急激に冷やすこと。バットなどに入れて平らにならし、ムラなく均一に冷やすとよいでしょう。その後、小分けにしてラップに包んでから、ファスナー付きのビニール袋に密封して冷凍庫へ保存しておくと、必要な時に必要なだけ解凍できて便利です。

エビ、イクラなどの高級食材は早めに購入して冷凍保存を

また、エビやイクラなど、年末に値段が上がる食材は、早めに購入して冷凍保存しておくという手も。エビは、生のまま塩水に漬けて冷凍庫へ入れれば、浸透圧が作用して旨みを逃さず保存できます。使うときは流水解凍すればOKです。イクラは醤油漬けにして、そのまま冷凍庫へ。食べるときは冷蔵庫でゆっくり解凍しましょう。

【おせちテクニック 3】重曹を使えば黒豆は30分で戻せる!下ごしらえの時短

 
 

黒豆を戻すには、ひと晩ほど水に浸けておかねばなりませんが、重曹を入れた熱湯に浸ければ、なんと30分で戻せます。

干ししいたけはラップに包んでレンジで加熱して時短戻し

干ししいたけはさっと水洗いして、ラップで包んでからレンジで3分ほど加熱し、そのまま置いて余熱で火を通すと早く戻せます。もちろん、きちんと水で戻した方がおいしいですが、急ぎの場合は、こちらの方法で。

【おせちテクニック 4】おせちを美しく盛り付けるには、真ん中に高さをもたせる

四隅を空ける盛り付け方の場合には、重箱の真ん中を高く盛ると美しく見えます。

 
 

重箱全体に詰める時は、真ん中に高さを出しつつ、壁面が見えないようにするのもポイントです。

 
 

最近では、お皿に盛りつける人も多いですが、南天や裏白、松葉、はらんなどを少しあしらうだけでも、各段にお正月らしくなります。

 
 

おせちのグリーンは、菜の花やきぬさやを用いて彩りを

いずれの場合も、似たような色の料理が隣り合わないように、彩のバランスを見ながら盛り付けましょう。おせちは、野菜のグリーンが少ないので、菜の花やきぬさやを湯がいたものを彩として加えるのもおすすめです。

また、なますなど汁が出るものは小さな器に入れますが、竹の器や、柚子をくり抜いてつくった器に入れるとよいでしょう。

【おせちテクニック 5】おせちの新定番・ローストビーフはフライパンで簡単に

フライパンでローストビーフ
フライパンでローストビーフ

300~400gくらいの量なら、オーブンを使わずに、フライパンでも手軽につくれてしまいます。

ローストビーフはアルミホイルに包んで余熱で火を入れて

牛の塊肉に塩コショウをし、表面にバターやオリーブオイルなどを塗って、熱したフライパンへ。中火にして、肉を転がしながら、表面をこんがりと焼き色がつくまで焼いたら、フライパンから上げて、アルミホイルに包んで余熱で火を通したら完成です。

フライパンの代わりに、魚焼きグリルを使ってもOKです。

【おせちテクニック 6】ドライフルーツ入りのなます?イマドキおせちのアイディア

おせち料理が苦手な人も増えているといいますが、そんな人はちょっとアレンジを加えたイマドキおせちに挑戦してみてはいかがでしょう。

なますにはドライフルーツで自然な甘みを

なます×ドライフルーツ
なます×ドライフルーツ

「酸味が苦手」と言う人が多いなますには、アンズやマンゴーなどドライフルーツをIN! ドライフルーツの自然な甘さが加わるので、砂糖は少なめでOKです。

田作りにはナッツで触感と風味を

ナッツ×小魚
ナッツ×小魚

田作りには、ピーナッツやアーモンド、カシューナッツなど、お好みのナッツを入れて。ミックスナッツを入れても楽しい食感&風味になります。

栗きんとんにはリンゴ、黒豆にはコーヒーやバニラフレーバーを

 
 

その他、栗きんとんにリンゴを入れたり、黒豆を煮る時にコーヒーやバニラのフレーバーを付けたりするのもおすすめです。最後の味付けの際に、インスタントコーヒーまたはバニラビーンズを少々加えるだけととっても簡単にできます。

【おせちテクニック 7】手軽にもう1品!あり合わせでできるおせち

思いのほか早くおせちが減ってしまった…、という時に、冷蔵庫にあるものでパパッと補充を。簡単にできるレシピを2つ、ご紹介します。

おせちもう1品:やわらかい卵焼き「ふくさ焼き」

まずは、彩豊かな具材入りの卵焼き「ふくさ焼き」。溶き卵にみりんを入れて、いんげんの細切りやスモークサーモンなど、お好みの具材を入れて、いつもの卵焼きを作る要領で焼けば完成です。

おせちもう1品:戻し汁が染みる「豚肉の昆布巻き」

もう1つは、「豚肉の昆布巻き」。昆布を戻して、薄切り豚肉を重ねて巻いて、醤油とみりん、昆布の戻し汁で煮込むだけで出来上がり!

【おせちテクニック 8】シャンパンやフレッシュジュースも!おせちにはどんな飲み物を合わせるべき?

 
 

おせちに合わせる飲み物といえば日本酒ですが、栗きんとんなど甘い料理が多いので甘めのシャンパンも良く合います。

フレッシュなフルーツや野菜ジュースでおせちにビタミンをプラス

また、栄養のバランスという点で見れば、フレッシュなフルーツや野菜を使ったドリンクもおすすめです。おせちは、生の野菜が不足しているので、ビタミン類の摂取量がどうしても少なくなります。そこで、ドリンクでフルーツや野菜を摂って補充するのです。

イチゴやミカンなどをミキサーにかけて冷凍しておいて、日本酒やシャンパンに入れると見た目も華やかなカクテルに。甘酒や炭酸水に入れてもおいしくいただけます。

【おせちテクニック 9】余ったおせちのアレンジ&リメイクレシピ

余ってしまったおせち。ちょっぴり食べ飽きてきたと思ったら、アレンジ&リメイクしてみましょう。

栗きんとんを使った「栗のもちもちケーキ」はいかがでしょうか? お正月に余りがちなお餅も使っています。

余った栗きんとんとお餅でアレンジ!「栗のもちもちケーキ」レシピ

材料(18㎝パウンド型)

切り餅…………2個
栗きんとん……150g
栗の甘露煮……5個
くるみ…………40g
牛乳……………180cc ※80ccと100ccに分けておく
溶き卵…………1個分
薄力粉…………100g
バター…………10g

作り方

1:餅は1㎝角に切り、牛乳80cc、バター10gと一緒に耐熱容器に入れ電子レンジで5分ほど温める。レンジから取り出したら、ダマがなくなるまでよく混ぜる。
2:1に栗きんとんを入れよく混ぜ合わせる。
3:2に溶き卵を2~3回に分け入れ、その都度よく混ぜる。
4:3に牛乳100ccを入れる。このとき、きんとんの水分によって牛乳の量は調整する。
薄力粉はふるい入れ、粉っぽさがなくなるまでよく混ぜ合わせる。くるみをも加え混ぜる。
5:型にクッキングシートを敷き、生地を流し入れ、栗を乗せて170℃のオーブンで50分湯煎焼きする。竹串を刺して何もついてこなければ完成。

まだまだある! 余ったおせちのアレンジ&リメイクレシピ

栗きんとん……冷凍パイシートに包んで焼いて、栗のパイに!
数の子……細かく切って、サラダのトッピングに。
煮しめ……具を刻んで、酢飯に混ぜてちらし寿司に。関西では、こちらを温めて食べる「蒸し寿司」にする場合も。

【おせちテクニック 10】おせちの重箱はお正月以外でも大活躍

 
 

「年に1度、おせち料理のためだけにだけ重箱が登場」、「毎年購入するおせち、キレイな重箱コレクションが増え続けるので、もっと使いたい」。そんな方へ、重箱の活用法をご紹介します。

重箱は、ちらし寿司やおもたせの和菓子を入れて

ちらし寿司はもちろん、いなり寿司やてまり寿司を作った時にお重に詰めれば格がぐっと上がります。おもたせとして、おはぎや和菓子などを持って行く時に使っても素敵です。

その他、ゲストを招いてのホームパーティーや、行楽のお弁当などに使えば、いつもの料理が一段と華やかになります。

例年とは違ったおせちの楽しみ方を

「いつものおせちに、もう1品加えよう」「おせちが余るのが楽しみになってきた」なんて声が聞こえてきそうな、実用的でステキなテクニックを教えていただきました。

今年は今までとは違ったおせちの楽しみ方で、お正月をおいしく過ごしてくださいね。

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連載「彼女たちの三都物語」吉田麻子さん編

吉田麻子さん
料理家
(よしだ あさこ)確かな技術に基づいた日本料理に定評がある。吉田麻子料理教室主宰。東京と大阪にて家庭で作りやすい日本料理の教室を主宰。企業のメニュー開発、メディアでのレシピ提供なども行う。2018年2月に『和食の基本(仮)』を出版予定。
http://www.asakoyoshida.com/
この記事の執筆者
TEXT :
Precious.jp編集部 
2018.12.27 更新
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