マックスマーラやドルチェ&ガッバーナなど、Precious.jpでも人気の海外トップブランドのプレスを歴任してきたロイ・明美さんによる連載企画。

結婚を機に英国へ渡りロンドンで暮らし、2014年からはスコットランドの小さな町と村に2つの住まいをもつ彼女の素敵なカントリーライフを、自然、食、インテリアなどさまざまな側面からお伝えします。

今回は、スコットランドに現存する数少ない中世の教会のひとつであるダンブレーン大聖堂で知られる町、ダンブレーンの魅力をご紹介。気軽に海外旅行できない今、ひとときの旅気分を味わってください。

スコットランドで希少な中世の教会、ダンブレーン大聖堂

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重要歴史的建物に指定されているダンブレーン大聖堂。

セントラル・スコットランドにあるスターリングは、1314年にスコットランドがイギリスから独立を勝ち取った歴史に深く残る場所として、スコットランドの古都、スコットランド人の心の故郷といわれています。

そのスターリングから車で15分ほどの小さな村ダンブレーンには、ダンブレーン大聖堂があります。スコットランドに現存する数少ない中世の教会のひとつで、興味深い歴史がつまった大聖堂です。

7世紀に創設され長い年月をかけて再構築された大聖堂は、ほぼ無傷の初期ゴシック様式。建築的または歴史的に重要な建物で特定の時代、様式、建築の優れた例とされる、“カテゴリーA”に登録された建造物で、古代遺跡として指定されているだけに見応えがあります。

独立型の鐘塔の下半分は11世紀に建てられたプレ・ロマネスク様式。15世紀に増築した上部は後期ゴシック様式。残りの大部分は13世紀のドミニコ会修道士のクレメント司教が再構築した初期のゴシック様式です。

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本堂。真正面のアーチの向こうの大聖堂の東側は、聖職者と聖歌隊席とパイプオルガンがある教会の中で最神聖な場所です。
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1914年にスコットランド人の著名な建築家兼家具デザイナーのロバート・ロリマー卿がデザインしたオルガンケースは、1990年にオランダのオルガン工房、フレントロップ・オルゲルバウがオルガン建設時に巧みに生かしました。

1600年頃に本堂の屋根が落ち、300年近くそのままだったのですが、1889年からスコットランドを代表する建築家ロバート・ロワンダ・アンダーソン卿によって大修復が始まり、1893年に公共礼拝が再開されました。

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アンダーソン卿がデザインした説教壇。階段手すりには天使の彫刻が。
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説教壇を取り囲むように7人の聖職者の木彫りの彫刻が施されています。

聖書をもとに描かれた19世紀後半から20世紀初頭のステンドグラスや、動物、天使や聖職者をモチーフにした優れた木の彫刻も多くあります。スコットランドで2番目に中世スコットランドの教会用木工品のコレクションを多く保持している教会でもあります。

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大聖堂の中で最も古く、丸天井のアーチが美しいチャプター・ハウス。ステンドグラスは第一次世界大戦のメモリアルウインドーとして作られたもの。天井ボスには葉の装飾が彫り込まれています。

現在では、長老派(キリスト教プロテスタントの一派)であるスコットランド教会の大聖堂は司教がいないため教区教会です。それでも「スコットランドの歴史を通してキリスト教の証しの発展における役割」を称えて大聖堂の名前が残されています。建物は王室の所有でヒストリック・スコットランドによって管理されています。

歴史的な建造物も多くある、こぢんまりした可愛らしい町並み

古い歴史をもつダンブレーンは、川が流れる可愛らしい街並みが魅力です。300メートルほどの細いハイストリートにはカフェ、花屋、アンティークやギフトショップなどが軒を連ね、その先に進むと大聖堂にたどり着きます。

大聖堂の周りには、スコットランドらしい石造のコテージやピーチ色のダンブレーン博物館、1660年代にダンブレーンの司教を務めたロバート・レイトンの1400冊の宗教史の蔵書を保管するために1687年に建てられたレイトン図書館など、歴史的重要建造物が多くあります。

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大聖堂の前にあるダンブレーン博物館。17世紀初頭に建てたられたカテゴリーAの登録建造物。大聖堂の歴史やプロテニス選手アンディ・マレーの記録まであり、ボランティアの人たちが運営しています。
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「スコットランド最古の蔵書のための図書館」であるレイトン図書館。

この小さな町、ダンブレーンが大聖堂の他に知られるようになったのは、オリンピックのテニス男子シングルで、ロンドンとリオの2大会連続で金メダルを獲得したアンディ・マレーの出身地でもあるからです。

ハイストリートの北側入口の角には、アンディ・マレーの金メダル獲得を祝した金色のポストボックスがあります。町の人々だけでなくスコットランド人の誇りと称えられ、ダンブレーンのインスタスポットになっています。

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大聖堂に近いハイストリートの北側。
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アンディ・マレーの金メダルを称えて金色に塗り替えられたポストボックス。

ハイストリート南側の入口近くにあるのは、名前も可愛いお花屋さん「The Secret Garden」。ショップに入ると壁から床一面に、レトロからモダンなガーデン雑貨、さまざまな素材と色の花瓶や鉢、ガーデンツール、虫除けキャンドル、ブーケ、カラフルな紐や手袋などが上手にディスプレイされています。

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可愛らしいショップが立ち並ぶハイストリートの南側。
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カントリー調のお花屋さん「The Secret Garden」。
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シックな色とりどりの花とレトロな雑貨が並ぶテイストフルなセレクション。

新鮮でシックな色とりどりの花も見やすくインテリアにブレンドしていてセレクションも絶妙。何よりお店の人が自由に気楽にゆっくり選ばせてくれるのが嬉しかったです。

ダンブレーンは、人も景観もゆったりとして心地よく、素敵なパブやビストロ、カフェも多く、昔からある建物や石畳の道も風情があって、大聖堂で歴史に触れ、川沿いの散歩道は緩やかな丘につながって、のどかで森林浴も楽しめます。童話のようなチャーミングな町です。

今日のおすすめ「なごみワンコ」は…近寄ると吠えながら逃げる面白いちびっ子

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ゲートから先には来ないちびっ子。
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目をキラキラさせて嬉しそうに尻尾を振ってワンワン吠えます。

Fish & Chipsショップのワンコ。人が通るとワンワンと大騒ぎ。近寄っていくと吠えながら遠ざかっていきます。ゲートを越えてこちらまでは来ません。自分のテリトリー内で得意げにワンワン、本当は気が弱いのかなあと思えば尻尾は振りっぱなしで、可愛いちびっ子ワンです。


以上、スコットランド在住のロイ明美さんの連載第18回をお届けしました。

豊かな自然や歴史と共に生きる、「リアル・ラグジュアリー」なライフスタイル。次回はどんなエピソードが届くのか、ぜひお楽しみに!

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この記事の執筆者
東京生まれ。父の仕事の関係で小学生時代をペルーのリマで、高校から大学までを米国シカゴで過ごす。帰国後、ジョルジオ・アルマーニ、マックスマーラ、ロメオ・ジリ、シンシア・ローリー、モスキーノ、ドルチェ&ガッバーナと海外有名ブランドのプレスを歴任。東京で知り合ったスコットランド出身のカメラマンのご主人と8年の遠距離恋愛の末、2005年に結婚して英国へ。 撮影コーディネートや、伝統工芸の取材執筆などを手がけながら、温かくセンスのいいカントリーライフを楽しんでいる。掲載写真の多くは夫のコリン・ロイ氏によるもの。インスタグラムアカウント:akemi_okumura_roy