指輪は古来より権威を象徴する証として、また、護符や印章などさまざまな目的を含みながら、加工技術の発展に伴い装飾品としての意味合いを強めてきた。現在東京で開催中の「メンズ リング イヴ・ガストゥ コレクション」は、個性豊かなメンズリングの数々と、その背景にある歴史や文化を体験することができる、貴重なエキシビションだ。

本エキシビションは、パリの著名なアンティークディーラーであるイヴ・ガストゥ氏が集めた、古代から現代に至るまでのメンズリングコレクションの中から、厳選された逸品を集めたもの。パリを象徴するメゾン「ヴァン クリーフ&アーペル」のサポートを受けて2012年に開校したジュエリーと宝飾芸術の学校、「レコール」で2018年に展示されるまで、その存在は秘匿にされてきた。

パリに続き、東京と香港で開催される「レコール」によるこの巡回展の意義や見どころについて、ヴァン クリーフ&アーペル ジャパン プレジデントのアルバン・ベロワー氏にお話をうかがった。

メンズリングをめぐる視点は確実に変わってきている

エキシビション「メンズ リング イヴ・ガストゥ コレクション」の会場。神秘的な光の演出が施されたアート空間で、コレクションが放つ時代性と歴史を体感できる。
エキシビション「メンズ リング イヴ・ガストゥ コレクション」の会場。神秘的な光の演出が施されたアート空間で、コレクションが放つ時代性と歴史を体感できる。
40年以上もの間、美術市場で重要な役割を果たしてきたイヴ・ガストゥと彼の息子ヴィクトール・ガストゥ。(c)ギャラリー・イヴ・ガストゥ
40年以上もの間、美術市場で重要な役割を果たしてきたイヴ・ガストゥと彼の息子ヴィクトール・ガストゥ。(c)ギャラリー・イヴ・ガストゥ

世界的にも貴重なコレクションを一同に集めた「メンズ リング イヴ・ガストゥ コレクション」。パリに続く開催地として東京が選ばれた理由について、ヴァン クリーフ&アーペル ジャパン プレジデントのアルバン・ベロワー氏は、次のように語った。

「大きな理由に挙げられるのが、日本のアートの価値がとても高いという点です。歴史に裏打ちされた文化、そしてクラフトマンシップが息づいた絵画や建築を通して、日本の皆さんの審美眼が養われているのではないでしょうか。見る目が育っているという点はフランスと同じであり、だからこそ私たちは東京を選んだのです」

欧州におけるメンズリングの立ち位置について、ベロワー氏はこのように話す。

「かつては宗教や権力、また戦争における勲章として用いられてきた歴史があり、ルネサンスなど、時代ごとに流派があります。20世紀後半から現代にかけてもそうした文化は続いていますが、視点は確実に変わってきています。リングを含めたメンズジュエリーはロックシンガーやスポーツマン、バイカーなどに愛用されるようになり、個性を象徴するものとして、その存在は大きくなっています」

メッセージとしてのメンズリング

ヴェネツィア元首の指輪。カーネリアンに施された楕円形のインタリオ(沈み彫り)には、葉のモチーフがデザインされている。
ヴェネツィア元首の指輪。カーネリアンに施された楕円形のインタリオ(沈み彫り)には、葉のモチーフがデザインされている。/Photo:Benjamin Chelly
英国の哀悼の指輪。オープンワークのゴールドにカメオが埋め込まれている。
英国の哀悼の指輪。オープンワークのゴールドにカメオが埋め込まれている。/Photo:Benjamin Chelly

近年におけるビジネスパーソンの装いの変化は、メンズジュエリーのありかたにも大きな影響を及ぼしているようだ。

「ファッションがカジュアル化、ストリート化しているなか、これまで男性が身に着けていたタイバーやカフリンクスは減ってきています。とはいえ、こうした装飾品が完全になくなったわけではなく、新しいアクセサリーへと移行しているのだと思います。それが時計であり、リングやブローチなのではないでしょうか。しかもこれらのアクセサリーは、オンとオフ、どちらのシチュエーションでも使えるというメリットがあります」

個性を表す装飾品として、メンズジュエリーの人気は今後高まっていくのだろうか。

「ヨーロッパでは、コミュニティや信仰する宗教によってさまざまではありますが、子供の頃に両親からペンダントやメダルなどをもらって身に着ける機会が少なくありません。そして大人になると、今度はメッセージを出す機能的な装飾品として自分で選ぶようになります。いまお話したように、有名なスポーツ選手の間ではネックレスやイヤリングが好まれていますね。メンズジュエリーの中でもっともつけやすいのがリングであり、現代性を帯びることでメッセージ性が高まるのではないでしょうか」

そして、「メンズ リング イヴ・ガストゥ コレクション」が、その手がかりになるとも。

「イヴ・ガストゥ氏のコレクションを通じて、皆さんはきっと歴史の変遷に興味を惹かれると思います。メンズリングをつぶさに観察すれば、古典的なファッションをモチーフにしていることも実感できるでしょう。伝統とモダンの魅力を、感じ取ってください」

腕利きの職人がもてる技術を駆使して創造した、荘厳で奥深く、ロックな魂さえも感じられるメンズリングコレクションを、ぜひ皆さんも自分の目で確かめ、感じてほしい。小さなサイズに凝縮された珠玉のアートに、魅入られることは確実だ。

今回お話をうかがった、ヴァン クリーフ&アーペル ジャパン プレジデントのアルバン・ベロワー氏。Ecole des Hautes Etudes Commerciales(HECパリ 経営大学院)の経営学部を卒業。ソルボンヌ大学で哲学の学士号を取得、パンテノン アッサス大学で法律の学士号を修めた。その後、著名なラグジュアリーブランドで研鑽を積み、2010年にはヴァン クリーフ&アーペル中東&インド地区のマネージング ディレクターとしてドバイに拠点を移す。2015年9月より現職。自らを「トラディショナルな人間」と称するベロワー氏は、仕事においてスーツを着用することが多いそう。洗練された着こなしは、メンズプレシャスが掲げるモダンジェントルマンのスタイルとも合致する。
今回お話をうかがった、ヴァン クリーフ&アーペル ジャパン プレジデントのアルバン・ベロワー氏。Ecole des Hautes Etudes Commerciales(HECパリ 経営大学院)の経営学部を卒業。ソルボンヌ大学で哲学の学士号を取得、パンテノン アッサス大学で法律の学士号を修めた。その後、著名なラグジュアリーブランドで研鑽を積み、2010年にはヴァン クリーフ&アーペル中東&インド地区のマネージング ディレクターとしてドバイに拠点を移す。2015年9月より現職。自らを「トラディショナルな人間」と称するベロワー氏は、仕事においてスーツを着用することが多いそう。洗練された着こなしは、メンズプレシャスが掲げるモダンジェントルマンのスタイルとも合致する。
東京でのエキシビションは3月13日(日)までの開催。お見逃しなく!
東京でのエキシビションは3月13日(日)までの開催。お見逃しなく!

「メンズ リング イヴ・ガストゥ コレクション」

会場/21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン内
期間/2022年3月13日(日)まで ※会期中無休・予約不要
開館時間/11:00~18:00(状況によって変更の可能性あり)

詳細はこちら

レコール事務局

TEL:0120-50-2895(平日11:00~19:00)

問い合わせ先

ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク

TEL:0120-10-1906

※新型コロナウイルスの影響により一部情報が変更となる可能性があります。最新情報は公式HPなどでご確認ください。

この記事の執筆者
名品の魅力を伝える「モノ語りマガジン」を手がける編集者集団です。メンズ・ラグジュアリーのモノ・コト・知識情報、服装のHow toや選ぶべきクルマ、味わうべき美食などの情報を提供します。
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