「承服しかねます」というフレーズ、目にする機会があると思います。ビジネスなどオフィシャルなシーンでよく使われますが、「承服」って一体どういうこと? 強い語気を感じるけれど、ソフトな言い回しにできる? そんな疑問を解消しながら、「承服」の使いこなし方を見ていきましょう。

【目次】

「承服」を否定ではなく使うには?
「承服」を否定ではなく使うには?

【「承服しかねる」の「承服」って一体どんな意味?】

まずは「承服」の意味を正しく理解しましょう。

『デジタル大辞泉』に【相手の言うことを承知してそれに従うこと】とあるように、「承服」とは納得して従うこと。「従う」というと何やら穏やかではありませんが、ビジネスシーンでは、「先方の提案や条件をのんで進めること」という理解でよいでしょう。

【「承服しかねる」はどういう意味?】

ビジネスシーンで、会話ではなくメールなどの文面でよく使われるのが「承服しかねます」というフレーズです。「しかねる」は 、それをすることに抵抗を感じたり拒否したりすることを表しているので、「承知できない」「納得できない」「受け入れられない」といった意味で使われます。

【「承服できる」「承服する」は正しい?】

「承服」は主に否定的なシーンで使われますが、「承服」自体は肯定的な意味をもちます。ビジネスシーンでは、相手の提案を受け入れる際に肯定的な意味のまま使用することも可能です。例を挙げてみましょう。

・そのようなことでしたら、上司も承服できるかと思います。

・納期につきまして、承服いたしました。

ただし、肯定的な意味なら「了承」や「承諾」「承知」のほうが、こなれた言い回しなのでおすすめです。


【すぐに使える「例文」で使い方をチェック!】

ビジネスメールや文書で、そのまま使ってOKな例文をご紹介しましょう。

「承服」がふさわしいのは、「不満はあるが受け入れる」「不服だが従う」という少々難しいシーン。だからこそ、相手とのパワーバランスを考慮して正しい敬語を使いたいものです。

<「承服」を否定の意味で使った例文>

■1:「この条件につきましては、承服しかねる点がございます」

■2:「恐縮ではございますが、当方としましては承服いたしかねます」

■3:「何度ご説明いただいても承服できかねます」

■4:「私の一存で承服するわけにはいきませんので、上司の判断を待って改めてご連絡申し上げます」

<「承服」を否定以外の意味で使った例文>

■5:「この条件で承服していただけますと幸いです」

■6:「今回は承服したほうが得策でしょう」

「承服」を言い換えると? 似た意味で使われる「類語」「言い換え」

上記の例文を、「承服」の言い換えワードを使ってつくり変えてみましょう。

■1:「この条件につきましては、承認しかねる点がございます」

■2:「恐縮ではございますが、当方としましては許諾することはできません」

■3:「何度ご説明いただいても容認できかねます」

■4:「私の一存で認めるわけにはいきませんので、上司の判断を待って改めてご連絡申し上げます」

■5:「この条件で受け入れていただけますと幸いです」

■6:「今回は賛同したほうが得策でしょう」


【ケースによっては「承服」の対義語でスマートに】

「承服」の対義語は「不服」です。納得しない、満足できない、不満、従わないといった意味なので、「承服」を否定するシーンで使えます。

■「承服」の代わりに「不服」で言い換え例文

1:「この条件では承服できません」→「この条件では不服です」

2:「承服が得られるまで説得を続ける」→「不服が残らないよう説得を続ける」

■「承服」と「不服」の使用上の注意

「承服+否定ワード」=「不服」と理解してもOKですが、使い分けをしっかり把握しておきたいもの。

本来は肯定を表す「承服」を「承服しかねる」と否定表現にすると、より強調したフレーズに。否定や拒絶などネガティブ要素の伝達は、「承服いたしかねます」「承服できかねます」などの敬語表現にするとスムースだということも覚えておいてください。

 

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相手との交渉事でよく使われる「承服」というワード。契約などの大切な場面で使われることも多いので、しっかり使い方をマスターしておきましょう。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『敬語マニュアル』(南雲堂) :