身長156cmのインテリアエディターDが、おすすめのアイテムを実際に体験しながらレポートする本連載。今回は、デンマークブランドの「フリッツ・ハンセン」から『エッグテーブル』をご紹介します。

『エッグテーブル』は、1952 年にアルネ・ヤコブセンの名作『アントチェア』と同時期にデザインされており、『アントチェア』3脚がきれいにフィットするサイズ感とデザイン。制作されていたのはたったの8年間で、一度限定品として復刻するもヴィンテージ品を探さなくては見つからない「幻の名作」でした。それが誕生から70年の時を経た今年、フリッツ・ハンセン社の設立150周年を記念して復刻されたのです!

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1952年当時の『エッグテーブル』。
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復刻版の『エッグテーブル』も、『アントチェア』3脚が美しくおさまるデザイン。

その名のとおり、卵型の有機的なカーブの天板が特徴。これが、見た目のスタイリッシュさだけでなく現代の暮らしにマッチする大きな理由となっています。

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【ブランド】フリッツ・ハンセン 【商品名】エッグテーブル 【価格】¥297,000 【サイズ】幅1150×奥行き840×高さ 740(mm) 【材質】天板:ウォールナット  脚部:スチール・クロームメッキ仕上げ

「卵の形」「三本脚」の効果で、心も空間も広々と自由に

リモートワークが当たり前になってから2年以上経ちますが、同じテーブルで食事も仕事もするという方も多いのではないでしょうか? 

そういった方には、『エッグテーブル』を使う目的ごとに座る位置を変えることをオススメします。卵の形は、着席する場所によって視線の向きを変えてくれるため見える景色がガラリと変わるのが特徴。同じテーブルを使いながらも、手軽に気分転換ができるのです。

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左/一番狭い辺でも幅840mmあるので食事をとるには十分のスペースがあります。右/窓に向かって視線が抜ける位置に座ると解放感もあり、目の休憩時間をとることもできます。
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集中したいときは壁に向かった位置に座って。

また、四角形の天板のテーブルは効率的に大きな作業面積をとるにはよいのですが、実は向かい合って座った相手と目線を合わせた際に、緊張感を高める心理効果がある配置になります。

その点『エッグテーブル』は、3本脚で椅子の入る場所が自ずとアシメトリーに決まるので、テーブルにつく人の視線を心地よくずらしてくれます。これによって近くにいながら別のことをしていても気にならず、リラックスした雰囲気で会話をしたりできる配置に自然に導いてくれます。

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フリッツ・ハンセン ジャパンの相澤社長と。絶妙な距離感と角度の効果でリラックスして会話も弾みます。

さらに、部屋の角を有機的なカーブで余白を残しながら切り取ってくれる形状の効果で、小さな空間でも広がりを感じられます。無造作に置いても空間がまとまるというのも嬉しいですよね。

アルネ・ヤコブセンらしいスタイリッシュな『エッグテーブル』

『エッグテーブル』は、『スワンチェア』や『アントチェア』でも有名な世界を代表するデザイナー、アルネ・ヤコブセンによって1952年にデザインされました。ヤコブセンのデザインの特徴を一言で言うならば「スタイリッシュ」。美しさに対してとてもシビアなデザイナーだったとさまざまな文献にもあります。『エッグテーブル』は、木質家具のもつ優しい風合いでありながら、ほっこりさせない軽やかな魅力がありますよね。

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薄く仕上げた天板と斜めに伸びた直径18mmの細いスチール脚。筋交いのように溶接されたトラス構造でグラつきも起こりにくく3本脚なので安定しています。


天板の厚みは通常の木質テーブルの半分程度、縁を斜めに深く面取りを施すことでさらに薄く軽やかに仕上げています。1960年までの8年間のみ製造されたオリジナルモデルはチークとローズウッド製でしたが、現在はワシントン条約で伐採禁止。そのため今回の復刻にあたり、天板の表面にはFSC認証(※)されたウォールナット突板に仕様変更。薄くても反ることがなく、水が染み込まず汚れも拭き取りやすい仕様になっています。

※FSC認証:適正に管理された森林から産出された木材であることの認証

ウォールナットの深い色味と穏やかな木目は、日本の住宅にもなじみやすく人気があります。環境に配慮した材に仕様変更して再び発売されたことで、定番として未来に受け継ぐことができるようになりました。

フリッツ・ハンセン の卓説した職人技と企業ポリシーが垣間見えるこだわりです。

デンマークを代表する北欧デザインの巨匠、アルネ・ヤコブセン

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左/数々の名作家具をデザインした巨匠デザイナー、アルネ・ヤコブセン。右/彼が手掛けた606号室のインテリア。

1902年、デンマーク・コペンハーゲンで生まれたアルネ・ヤコブセン。デンマーク王立芸術アカデミー卒業後、建築家として活躍。ユダヤ人のため1940年にナチス・ドイツの迫害を逃れるためにスイスに亡命し、第二次世界大戦終戦後にデンマークに帰国。その頃から後に世界中に愛される『アントチェア』『スワンチェア』『エッグチェア』『セブンチェア』など数々の名作家具を生み出します。

1956年竣工のデンマーク国内初の高層ビルとなった「SASロイヤルホテル(現ラディソンブルーロイヤルホテル)」では建物の設計からインテリアデザイン、照明やドアノブ、食器類などの細部までを一貫して手がけ現在でも当時のまま現存している606号室は観光名所となっています。


今回は、デンマークの人気ブランド「フリッツ・ハンセン」から待望の復刻を果たした『エッグテーブル』をご紹介しました。

優れたデザインはいい暮らしをつくり、日々の暮らしが人をつくります。今もなお、新しい暮らし方の提案をしてくれる『エッグテーブル』。ご自宅のインテリアの再考に、ぜひ一度ショールームでお試しください。

※掲載商品の価格は、すべて税込みです。

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この記事の執筆者
イデーに5年間(1997年~2002年)所属し、定番家具の開発や「東京デザイナーズブロック2001」の実行委員長、ロンドン・ミラノ・NYで発表されたブランド「SPUTNIK」の立ち上げに関わる。 2012年より「Design life with kids interior workshop」主宰。モンテッソーリ教育の視点を取り入れた、自身デザインの、“時計の読めない子が読みたくなる”アナログ時計『fun pun clock(ふんぷんクロック)』が、グッドデザイン賞2017を受賞。現在は、フリーランスのデザイナー・インテリアエディターとして「豊かな暮らし」について、プロダクトやコーディネート、ライティングを通して情報発信をしている。
公式サイト:YOKODOBASHI.COM