日常会話で機会はないけれど、ビジネス上の挨拶や慶弔時などの大切なシーンで使われる「厚誼」という熟語。あなたはその意味を正しく理解していますか? そもそも読めますか? 漢字で書けますか? 間違った使い方をして恥ずかしい思いをしないよう、本日は「厚誼」の基礎知識から使い方、言い換えなど、しっかり身に付けていきましょう。

【目次】

「ご厚誼に感謝」ってどんな意味?
「ご厚誼に感謝」ってどんな意味?

【「厚誼」の読み方から意味までの基礎を学習】

■厚誼の「読み方」と「意味」

「厚誼」と書いて「こうぎ」と読みます。「誼」という漢字を用いた熟語には「恩誼(おんぎ)」や「交誼(こうぎ)」などがありますが、いずれも日常会話ではあまり使われないので馴染みがない漢字かもしれませんね。

「誼」という漢字の意味には【親しい交わり。また、それによる親しみや好意】(『日本国語大辞典』より)があり、「厚誼」は【情愛のこもった親しいつきあい。厚いよしみ】(『デジタル大辞泉』より)ということ。

同じく「こうぎ」と読む「交誼」という熟語も、人と人との親しい関係、心の通い合った付き合いを意味するので紛らわしいですね。「厚誼」は目上の人にも使えますが、「交誼」は同等以下の間柄のみで使用する、と覚えておきましょう。


【ビジネスや弔事でよく使われる「例文」5選】

■1:「ご厚誼を賜りますようお願い申し上げます」

■2:「ご厚誼のほど、何卒よろしくお願いいたします」

■3:「在職中はひとかたならぬご厚誼を賜り、ありがとうございました」

■4:「この度は貴殿のご厚誼に助けていただきました」

■5:「生前のご厚誼に対し、厚く御礼申し上げます」

■1と2は「これまでと変わらない関係を続けたい」という希望を表しています。この例文によって、「厚誼」はすでによい関係が築かれている間柄に使うものだと理解できますね。■3は退職時の挨拶に、■4は弔事に使用します。このように、親しく付き合っている相手に対して敬意をもって使うのが「厚誼」なのです。


【「厚誼」の言い換えソフト表現

「厚誼」は主に取引先や目上の人に使用するので、上記の例文のように接頭語の「ご」を付けて「ご厚誼」と尊敬表現にするのが基本ですが、少々堅苦しい言い回しですね。「厚誼」は自分と同等以下の相手にも使えますが、長年親しく付き合っている相手には、もう少し柔らかな言い方のほうがふさわしいかもしれません。そんな場合のソフトな言い換え例を挙げておきましょう。

■1:「今後も変わらず、親しくお付き合いいただけましたらうれしく存じます」

■2:「在職中は大変よくしていただき、感謝の言葉もございません」

■3:「生前の手厚い交際に心から感謝申し上げます」



【「交誼」「高配」「厚情」「厚意」など類語との使い分け】

先に「厚誼」と「交誼」の違いを解説しましたが、「厚誼」の類語はほかにも「高配」「厚情」「厚意」などがあります。正しく使い分けできるようまとめます。

■「厚誼」と「交誼」

「厚誼」は目上に、「交誼」は同等以下の相手に、で正解!

■「厚誼」と「高配」

「高配」は、相手の心配りを敬って表現した熟語です。「平素よりご高配を賜り、厚く御礼申し上げます」などと使うので、「厚誼」同様に目上の人にも使ってOKです。

■「厚誼」と「厚情」

ほぼ同義で、使用シーンも同じと考えてよいでしょう。「厚誼」にもあてはまりますが、上司(社内や身内の目上の人)には使用しません。

■「厚誼」と「厚意」

「厚誼」の類語で、ビジネスメールや手紙の冒頭の挨拶文、あるいは会話でも使用可能なのが「厚意」です。「厚誼」や「厚情」では堅苦しいかなと感じる相手には、「ご厚意に甘えさせていただきます」などと使うとよいでしょう。


【「厚誼」の「使用上の注意」】

■1:基本的には接頭語を付けた敬語表現に

■2:目上の人に使えるが、上司など身内には使用しない

以上の2点をおさえておけば、取引先への感謝を伝えるシーンや、お悔やみのシーンなどで、躊躇せず正しく使えるはずです。

 

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本日学んだ「厚誼」は、日常会話ではほとんど使用しなくても、お礼や挨拶といった大事なシーンで活躍する熟語です。このような表現をしっかりマスターして、“敬語美人”を目指しましょう!

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『敬語マニュアル』(南雲堂)/『印象が飛躍的にアップする大人の「言い方」練習帳』(総合法令出版) :