普段、ビジネス上の取引先の人や、知り合いの人、初対面の人との会話で、沈黙がつらい、世間話が続かないと悩んでいませんか。雑談は「必要」なものではないため、目に見える支障はないかもしれません。でも、世間話や雑談には人間関係をよくする効果があるのです。

そこで今回は、世間話や雑談のメリットや効果、そして雑談力の鍛え方をビジネス講師の方に教わります。

雑談のメリット5つ

相手との雑談が楽しいと、なんだか充実した気持ちになるものです。だからこそうまく雑談できないと残念に思ってしまうのかもしれません。雑談には、具体的にどんな効果があるのでしょうか?

そこで話し方のプロである、株式会社Smart Presenの代表 新名史典さんに、雑談のメリットを教えていただきました。

■1:接点が生まれる

「世間話や雑談の最大の目的は相手との『接点づくり』です。よく誤解されるのが、雑談には知識が必要だということ。しかし相手は知識を与えてほしいのではなく、自分の話を聞いてもらいたいのです。相手の話に自分の感想を乗せるだけで、十分『接点』になります。なぜ天気や暦の話が雑談に使われるか? それは会話をしている両者にとって、天気や暦は絶対に同じだからですね。変に気負わず、相手の話に乗ってあげるだけも十分です!」

■2:相手への関心を示せる

「人は自分に対して関心をもってもらいたいもの。マザー・テレサの有名な言葉に『愛の反対は憎しみではなく無関心です』というものがあります。無関心であることが人を傷つけてしまうことは、今ではLINEの『既読スルー問題』にも見られます。雑談で自分の知らない話が出たら『それ、もっと教えてください!』と言えば、相手への関心の表明になり、接点にもなります」

■3:笑いを生み出しやすい

「人が笑うのは特殊な表現だけとは限りません。友人と昔話で大笑いすることがあると思います。つまり、同じ体験によって共感が生まれるのです。共感とは相手の感情の代弁です。漫才のツッコミはまさにそれです。ボケの発言に対し、聞き手の気持ちの代弁としてツッコミ役がツッコんでくれるから笑いがこみあげてくるのです」

■4:仕事の話のきっかけになる

「誰でも同じ仕事をするなら共通の感覚を持った人としたいでしょう。世間話や雑談で共感を生み出し、『この人は同じ感覚をもっている!』と感じてもらうことができれば、仕事の話もスムーズに進みやすくなります。世間話や雑談は結論を求めるものではありませんが、この『共通の感覚づくり』にはぜひ役立てたいものです」

■5:相手の会社や組織の背景を知ることができる

「営業職の方であれば、相手の会社や相手の家庭の背景を知っておくことはたいへん重要です。また、同じ社内でも他部署と交渉する際に、相手の部署の背景を知っておくことは大切です。世間話や雑談中に『いや、うちの会社でもこんなことが起こってましてね…』などをいう話題が出てきたら、相手の背景を知るきっかけになり、提案や企画を打診する際のヒントにすることもできます」

「雑談力」を鍛える5つの方法

雑談力は、人間関係を取り持ち、ビジネスの成果にもつながる可能性まであることが分かりました。ぜひ日々の雑談を大切にして、雑談のレベルも上げていきたいものです。そこで新名さんに雑談力を鍛える方法を5つ教えていただきました!

■1:お会計のときのひと言を意識する

「雑談力」はお店の人とのコミュニケーションで練習できる
「雑談力」はお店の人とのコミュニケーションで練習できる

「ランチでも夜のお酒の席でも、支払いの段階でお店の人とコミュニケーションをとることは必ずあります。もちろんコンビニの支払い時も。そのときにあえてひと言添えてみてください。例えば『今日のランチのハンバーグ、おいしかったです!』などのように。私はよくコンビニで『これって売れてるんですかね?』と質問します。すると会話が弾むことがあります。気軽にできる練習ですね」

■2:エレベーターのボタンを押すときは雑談のチャンス

「エレベーターで見知らぬ人と一緒になるときに、いきなり話しかけると違和感がありますが『何階ですか?』というのは自然な会話。そこで階数ボタンを押してあげてから、『今日は寒いですね~』とひと言添えると違和感がありません。そこで相手の方があまり乗ってこない場合は、ニコッと笑ってやり過ごすのも練習のひとつです」

■3:敢えてひとりでカウンターに座り、お店の方と会話する

カウンターでの会話が仕事に役立つことも
カウンターでの会話が仕事に役立つことも

「私は仕事柄ひとりで出張することが多いので、必然的にひとりで食事する機会があります。その際にできるだけチェーンのお店ではなく、個店を選び、カウンターに座ります。そこで、お店の大将、オーナーさん、女将さんと会話し、その土地のことを教えてもらいます。ここでも知識は要りません。相手への関心の表明ですから、教えてもらうだけでOKです。そこで情報を収集して、翌日の自分の仕事のお客様との会話に大いに活かすこともできます」

■4:異業種交流などの知っている人がいない場に出ていく

たくさんの人が集まる場所
たくさんの人が集まる場所

「異業種交流会では名刺交換の機会が必ずあるので、そこで会話ができます。すると、いかに自分が普段使っている言葉が一般的でないかに気づかされます。また、知らない業種の方から聞く知らない情報に対して、『教えてください!』の練習にもなります」

■5:セミナーや講演会に出て、隣の人と感想を共有する

「セミナーや講演会も良い機会です。参加者は何かしら共通の関心ごとがあるからです。そういう人と感想を言い合えば間違いなく共感を生み出しますし、会話のきっかけとしても最適です。たまたま隣り合った人に『せっかくなので、ご挨拶だけでもよろしいでしょうか?』と話しかけて嫌がられることはほとんどありません。その際に『今日のセミナーの●●というひと言、すごく共感しました!』などと言えば、相手も乗ってくれるでしょう」

雑談が苦手と思っていた人も、きっと雑談をしたくなってきたことでしょう。ポイントを押さえて、ぜひ雑談力を日々鍛え、そのメリットを享受しましょう!

新名史典さん
株式会社Smart Presen 代表取締役
(しんみょう ふみのり)1971年生まれ。メーカーで営業、商品開発を経験し、2011年に独立起業。プレゼンテーションをノウハウ化し、企業研修で指導にあたる。丁寧な解説!・豊富な体験談!・おもしろい!が研修の信条。
http://www.smartpresen.com/
この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
石原亜香利