雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。

今回は「ファームキャニング」代表 西村千恵さんの活動をご紹介します。

西村 千恵さん
「ファームキャニング」代表
(にしむら ちえ)東京から葉山への移住を機に「もっと畑を日常に」をコンセプトに’16年に「ファームキャニング」を設立。有機野菜や無農薬野菜の生産者から規格外で出荷できない野菜を仕入れ、野菜のびん詰めの製造販売などを行う。

持続可能な農地づくりのために魅力的なコンテンツを発信

8年前に都心から葉山に移住した西村さん。葉山でオーガニック野菜づくりを行う農家でボランティアを始めたことをきっかけに、現在はサステイナブルな農業を支えるさまざまな活動を行う。

「手伝っていた農家は、とても環境に配慮した農法で野菜づくりを行っていたにもかかわらず、常に資金や人が足りないという問題を抱えていました。社会的にも環境的にもいいことをしている彼らが、経済的に成り立たず、また行政に守られることもなく廃れていくのはおかしいと思い、少しでも経済的に還元できることはないかと考えました」

そこで西村さんは農業を体験しながら仲間を得られるコミュニティをつくった。またボランティアを通して知った「規格外野菜」(※)の存在にもスポットを当てた。

「規格外野菜の多くは、味の問題ではなく、形が不揃いなため、はじかれてしまい市場に出ることができない野菜です。市場では価値がないと判断されたものを加工して瓶詰めにすれば再び価値があるものに蘇るのでは、と商品開発を始めました」

西村さんは、無農薬や減農薬、プラスチックビニールを使わず土を覆うやり方など、環境に負荷をかけない取り組みをしている地元の農家に出向き、規格外の野菜を買い取っている。そして、野菜ペーストの瓶詰めを毎月約600本生産。現在は大手百貨店などでも販売している。

「最近は、企業からグリーンな取り組みをしたいとの相談も増えました。持続可能な農地づくりは、私たち、そして未来の子供たちの命に直結する問題。そのためのアクションをしている農家をいろいろな角度からサポートしたい」

【SDGsの現場から】

●駅チカ敷地内で日常に溶け込む野菜づくりを

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ハーブや旬野菜づくりのほか環境についてのワークショップも行う「畑クラブ」を主宰。

●毎週月曜日のポッドキャストで情報を発信

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にんじんのバーニャカウダソースや小松菜のジェノベーゼソースなどリピーターも多い。

※規格外野菜とは…色や形、大きさの不揃いから市場に流通されない野菜。収穫の約1/3を占めるといわれるが、最近では直売所や朝市で売られることも。

PHOTO :
篠原宏明
EDIT :
喜多容子(Precious)
取材・文 :
大庭典子