美容ジャーナリスト 高橋美智子さんの軽井沢『森と一体化する家』｜窓からの景色そのものがインテリア

これまで当たり前だと思っていた日常が一変したここ数年を経て、住まうこと、暮らすことを見直した人も多かったのではないでしょうか。

そんななか、雑誌『Precious』10月号では、暮らしの拠点として、週末の別宅として、自然と触れ合う場所で、自然と共に生きるキャリア女性たちを取材。海や山、森や湖、あるいは砂漠…。そこでの暮らしが彼女たちにもたらしたものに迫ります。

今回は、美容ジャーナリスト 高橋美智子さんのお住まいをご紹介します。

「窓からの景色そのものがインテリアであり、アート。森の中を浮遊するような感覚は、心身をリセットしてくれます」

長野県・軽井沢駅から車で15分ほど。緑豊かな樹木のトンネルを抜け、坂を登りきると見えてくるアプローチ。森の中に溶け込むようにひっそり佇む一軒家に暮らすのは、美容ジャーナリストの高橋美智子さん。

日本で有数の避暑地、軽井沢の緑の中のテラス。

「この家を建ててから16年が経ちました。当時はちょうど『デュアルライフ（二拠点生活）』という言葉が、女性誌などで取り上げられ始めた頃。毎週金曜日の夜、仕事を終えて新幹線に乗り、週末を軽井沢で過ごして、月曜朝にまた新幹線で都内の自宅へ。当初は、東京と軽井沢、ふたつの暮らしを楽しんでいました」

30代半ば、フリーランスとして活躍していた高橋さんにとって仕事場＝自宅。資料やコスメなどで自宅にモノが溢れるなか、「自分にとって心地よい広さ」を求めて家を買おうと決意。旦那さんと一緒に都内で物件探しを開始します。

「徹夜も当たり前の忙しさもあって、オンとオフの区別がつかない日々にストレスがたまっていました。都心から少し離れてもいいので、とにかく広さにこだわりたくて。都心から1時間くらい、鎌倉や東京郊外なども視野に入れて探していました」

ぐるりと四方を木々に囲まれた、自然豊かな傾斜地。この景観が変わらぬように、隣の土地も、家を建てた2年後に購入ずみ。

「自然の中に身を置くことでよけいなものが削ぎ落とされてどんどん、本来の自分に戻っていく。その感覚が心地よくて」

「物件を探しているうち、東京から新幹線で約1時間も圏内では？ と思い立ちました。軽井沢は、以前勤めていた会社の保養所があり、なじみもあるエリア。土地探しの条件は、とにかく自然が感じられる静かな場所。森に抱かれるようなリビングで、できればカーテンなしで暮らしたい、と不動産会社に伝えました」

理想の土地が見つかり、次は建物。森の中に浮遊するような家をイメージしていた高橋さんは、建築雑誌を見て「海と一体化する家」を手掛けていた建築家・西田司さんに、ぜひ森バージョンを、と依頼。天井まである大きなガラス窓が3面に配されたリビング・ダイニングからは、森の景色が大パノラマで眺められます。

メインルームは2階。傾斜地を利用して森の中に浮遊するような感覚に。ソファ、ダイニングセットは「アルフレックス」。「長く使えるもので、自然の景色を邪魔しない、上質な色や質感を重視して選びました」。シンプルなキッチンは「トーヨーキッチン」。「キッチンにいる時間が長いので、外の景色を見ながら楽しく料理ができるアイランドキッチンありきで建築デザインをお願いしました。収納もたっぷりあって、カウンターバーのように使える点も気に入っています」

仕事の合間にダイニングでお茶を入れてほっとひと息。「カーテンがない暮らしゆえ、夜は早々に真っ暗に。自然とスローダウンした暮らしになります」

「春・夏の瑞々しい緑、秋の真っ赤な紅葉、冬の一面白銀の世界。四季折々の景色そのものがインテリアであり、アートです。ここでは、ほとんど外食をしません。ずっと家にいたくて。朝、昼、夜と刻々と表情を変える木々や空の色を眺めているだけで心身共に満たされます」

バスルームからも絶景！ 猿やイノシシ、テンやクマなどがときどきやってくるとか。

週末軽井沢生活から、コロナ禍を経て、現在は軽井沢がメインに。

「長年住むことで、近隣の方との交流も楽しく、お得な地元情報を得られることも。なにより、自然の中に身を置くことで、本来のおっとりした自分、いい意味でマイペースな自分に戻った気がします。よけいなものが削ぎ落とされて、どんどん自分に戻っていく感覚が心地いいんです」

仕事部屋。椅子はヴィトラの「イプシロン」。「座りやすくて疲れにくい。16年愛用していてもまだ快適に使えています。昨年家族になった三毛猫のひなたにとっても居心地がいいらしく、よく占領されてます（笑）」

お隣の葵崎さんちのフクロウ散歩（！）に出合うのも、自然豊かなこの地ならでは。

散歩友達のクリスティーン

軽井沢暮らしの唯一のデメリットは「光熱費が高いこと。冬の寒さは本当に厳しく、薪ストーブは必需品。薪の調達が意外と大変で、1シーズンで1.5トンくらい使います」。

薪ストーブはデンマークの「SCAN」

コンパクトですっきりしたデザインがお気に入り。

「四季折々の色合いを邪魔したくなくて、インテリアや床は自然と調和する色でシンプルに。そのぶん、ストールなど小物で色を添えています」。ストール類は、「ラルフローレン」や「バーニーズニューヨーク」で購入。

高橋さんのHouse DATA

●場所…軽井沢。東京から新幹線で約70分。駅からは車で15分ほど。
●建物…設計は「オンデザインパートナーズ」代表の西田司さん。「当時はまだ29歳で、この家が初めて軽井沢で手掛けた家。以降、軽井沢の建築を多数手掛けています」
●間取り…2LDK。1階は駐車場。居住スペースは2階。リビング・ダイニング・キッチン、寝室、仕事場、バスルーム。
●訪れる頻度…2020年4月からはほぼ軽井沢。東京には事務所のみ。月に2回ほど、仕事や用事をまとめて東京へ。
●ここに決めたいちばんの理由…「森の中の自然豊かな傾斜地」が条件。星野リゾートの「軽井沢別荘Navi」に依頼。「森と一体化する家の理想をすべて叶えていたので」

※高橋美智子さんの【高】は「はしごだか」が正式表記です。