ほとんどの仕事はひとりではなり立ちません。社内、社外、あるいは組織の関わりの有無にかかわらず、複数の人間が役割をもって共同で何かを成し遂げること、何かをつくり上げること、あるいはサービスなどを提供することが“仕事”ですね。だから仕事に「協力」はつきもの。今回はその「協力」という単語を用いたフレーズのなかでも、頻繁に使われる「ご協力のほど」について解説します。

【目次】

「ご協力のほど」はソフトな〝お願いフレーズ〟です
「ご協力のほど」は“お願いフレーズ”です

「ご協力のほど」の「意味」と「ビジネスでの使い方」】  

■意味 

今さら…ですが、「協力」という単語を辞書でひいてみると、「力を合わせて事にあたること」「力を合わせて努力すること」「心を合わせて働くこと」などが。例として「協力を仰ぐ」「事業に協力する」なども掲載されています。「ご協力」は、「ご」という接頭語が付いているので丁寧な言い方ですね。では、「のほど」の意味を正しく説明できますか? この場合は、格助詞「の」と、名詞「ほど」で考えるのではなく、「のほど」で一語として捉えます。断定を避け、表現を和らげるために用いられるものです。

■ビジネスでの使い方

「ご協力のほど」は、協力を要請したり、協力に感謝するシーンで使います。「ご協力お願いします」では、少々強いトーンで強制的に聞こえることもありますが、「のほど」を付けることで受け入れてもらいやすいという利点があります。上司など、目上の人に協力を頼みたいケースでは欠かせない、とても重宝するフレーズです。仕事のシーンではソフトな言い回しの「ご協力のほど」ですが、プライベートな会話などで使用すると、逆に堅苦しいニュアンスになってしまいます。


「ほど」と「程」、正しいのはどっち?】

「ご協力のほど」でも「ご協力の程」でも「御協力の程」でも構いません。メールの文章で使用するなら、前後の文面を見合わせ、漢字が多ければひらがなで、ひらがなが続いて読みにくいようなら漢字でと、字面を見て使い分けると親切です。メールでも資料でも、「読みやすいか」「意味は通じやすいか」「誤った受け取り方をされる可能性はないか」などに留意しながら、必ず読み返して確認することが肝心です。


そのまま使える「例文」5選

■1:「引き続きご協力のほど、よろしくお願いいたします」

■2:「ご協力のほど感謝申し上げます」

■3:「ご協力のほど、お引き受けいただけますでしょうか」

■4:「ご理解ご協力のほど、よろしくお願いいたします」

■5:「ご支援ご協力のほど、何卒よろしくお願い申し上げます」


【語彙力アップ間違いなし!「類似フレーズ」と「言い換え」

類似フレーズには、「ご支援のほど」「お力添えのほど」「ご助力のほど」などが。あとに続く「お願いします」も、「お願いいたします」「お願い申し上げます」「賜りますよう~」と丁寧にしたほうが好印象です。「何卒」と強調するのも効果的。「お忙しいところ恐縮ですが」「ご多用とは存じますが」「お手数をおかけしますが」などの“クッション言葉”も用いたいですね。


「上司」など「目上の人」に使う際の「注意点」

「ご協力のほど」は、相手への敬意が込められた敬語表現であると同時に、命令ニュアンスの“依頼フレーズ”ではなく、印象が柔らかな“お願いフレーズ”。上司や初対面の相手などにも適しています。とはいえ、何かしら手を煩わせることを依頼するわけですから、前後の文章にも敬意と誠意を込めて仕上げましょう!

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「ご協力のほど(程)」の「のほど」や、「ご確認のうえ(上)」の「のうえ」など、普段何気なく使っているけれど…というワードってありますよね。この連載の第70回で「ご理解のほど」を取り上げているので、そちらも参考にしてください。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『敬語ネイティブになろう!!』(くろしお出版)/『敬語マニュアル』南雲社 :