雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。

今回は、世界遺産シュパイヤー大聖堂・主任建築家 ヘドウィグ・ドラビクさんの活動をご紹介します。

ヘドウィグ・ドラビクさん
世界遺産シュパイヤー大聖堂・主任建築家
ポーランド生まれ。2歳のときに両親とドイツへ移住。中学卒業後、建築技術の専門学校で学び、カッセル大学で建築のディプロマを取得。その後、バンベルク大学で文化財保存・保護学の修士号を取得。’19年より現職。

世界遺産の大聖堂を未来へつなげる史上最年少、女性では初の主任建築家

ドイツ南西部の街、シュパイヤーにある世界遺産「シュパイヤー大聖堂」。千年の歴史をもつこの貴重な建築物の大規模修復工事を、(※)主任建築家として率いているのがヘドウィグさんだ。

専門学校とふたつの大学で建築と文化財保存・保護学を学び、教会建築の仕事をしたいという思いを抱いていた彼女。その目に、「シュパイヤー大聖堂修復担当責任者募集」の広告が止まったのは、’18年晩夏のこと。

「前任者が退職するため求人募集、という文字を見たとき、心臓が飛び出すほど驚きました。当時私は32歳で、別の街の建築事務所で働いていて、特に新しい仕事を探していたわけではなかったのですが、採用されるはずがないと思いながらも応募してみたんです。書類選考に通り、面接に進むことになったので、実際に大聖堂を訪れて状況を確認しました」

その行動力で見事、史上最年少、女性としては初の主任建築家に就任。担当範囲は大聖堂だけでなく、牧師館や、敷地内の墓地まで多岐にわたり、一か所の修復をするだけでも、建材選びから作業手順など熟考すべきことは多い。

「修復後、30年間は同じ建材で再修復ができることが大切です。また、プラスチックは用いない、大きな破損部分の石は、小さな修復に利用できる可能性があれば保存するなど、一見些細ですが後に大きな影響をもたらす事案がたくさんあります。なにしろ千年の歴史がある大聖堂ですから、ひとつの観点からプロセスを見続けることはなかなか難しい。それでも、未来にどんなことが起こりうるかを想定して、プロジェクトを慎重に進めねばならないのです」

彼女は素晴らしい遺産を次世代へとつなぐ。敬虔な想いと共に。

【SDGsの現場から】

あらゆる資材は将来30年にわたり持続可能なものに

インタビュー_1
ドアノブや階段の手すりといったパーツの修復においても、持続可能な資材選びが重要に。

「カイザードーム」の通称をもつ巨大な大聖堂

インタビュー_2
シュパイヤー大聖堂正面にある歴史を感じる標識。通称は「カイザードーム(皇帝の大聖堂)」。

※女性初の主任建築家とは…「大聖堂の建築家」という職業自体は、ここ20年ほどで女性の採用も進んでいる。シュパイヤー大聖堂修復の主任ではヘドウィグさんが初。

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