瀬戸康史さん
俳優
(せと・こうじ) 1988年5月18日福岡県生まれ。2005年デビュー後、舞台・映画・テレビドラマなどで活躍。最近の出演作にNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』、テレビドラマ『霊媒探偵・城塚翡翠』(NTV)、映画『劇場版ルパンの娘』(2021年)・『コンフィデンスマンJP -英雄編-』(2022年)、舞台『日本の歴史』(2021年)、『世界は笑う』(2022年)ほか多数。主演映画『愛なのに』(2022年)では、第44回ヨコハマ映画祭主演男優賞受賞。

「通常の舞台の稽古より、密度は高く、数時間の稽古だとしても、かなりのパワーが必要だと感じています」瀬戸康史さん

―――――『笑の大学』の舞台は、戦時色が濃厚になり、華美なものや笑いがタブー視されてきた1940年。喜劇作品を上演したい座付き作家と、警視庁の検閲係が密室で繰り広げる攻防戦を描いています。

たった2人で物語を牽引していく。しかも、攻撃と守備が目まぐるしく入れ替わり、そこが面白さでもあります。さまざまな方向からアプローチしていきたいと考えています。共演する内野聖陽さんに対しては、プレッシャーのようなものはあります。「きっと脚本を全部覚えてから稽古場に入るんだろうな」とか(笑)。

僕自身は、これまでに上映された舞台の映像(1996年初演/向坂睦男〈西村雅彦〉、椿一〈近藤芳正〉)や、映画(2004年公開/向坂睦男〈役所広司〉、椿一〈稲垣吾郎〉)を観ました。そこで感じたのは、「演じる人により作品が変わる」ということ。つまり、向坂と椿の呼吸、パワーバランスがこの作品の要だということです。
僕と内野さんではどのような作品になるのかな…パッと見は内野さんの方が強そうですが、意外なところをくすぐると弱いんじゃないかな…なんて考えています。

俳優・瀬戸康史さん
パッと見は内野さんの方が強そうですが、意外なところをくすぐると弱いんじゃないかな…なんて考えています(瀬戸康史さん)

――真逆の立場の2人だからこそ、食い違いが生まれ、そこが面白さにつながっていくんですね。

上演のための検閲があるから、考え方も育った環境も全く異なる2人が、7日間にわたって双方が必死に戦う。
滑稽なことでも、大真面目に考え実行し、そうするうちに互いに信頼関係のようなものが、期せずして形成されてしまう。
言葉にならない部分を内野さんと作るので、親しくなっていきたいですね。

――戦局下という特殊な時代ですが、時代背景について学んでいることはありますか?

2022年に出演した『世界は笑う』(作演出・ケラリーノ・サンドロヴィッチ)という作品の舞台が、戦争の爪痕が深く残る昭和 30 年代だったんです。『笑の大学』は、その時代と地続きのようにも感じています。

俳優・瀬戸康史さん
言葉にならない部分を内野さんと作るので、親しくなっていきたいですね。(瀬戸康史さん)

――瀬戸さん演じる座付き作家・椿一は、脚本家・三谷幸喜さんが「作家としての自分を投影する」と語るほど、大切な作品です。また、ロシア語、韓国語、中国語、フランス語に翻訳され世界各国で上演され続けており、1998年以来、再演されていない幻の作品。プレッシャーや緊張はありますか?

特にありません。それよりも、楽しんで作品に向き合っていきたいです。

目下の課題は、セリフを全部(自分の中に)入れること。おそらく、通常の舞台の稽古より、密度は高く、数時間の稽古だとしても、かなりのパワーが必要だと感じています。相手役である、検閲官・向坂のセリフも入れて、稽古に挑みたいと思っています。

――ファンが多い作品だけに、『笑の大学』は、全国 8 都市で上演します。この全国ツアーで楽しみにしていることはありますか?

とても個人的なことなのですが、今回、僕の地元の福岡県でも上演するので、母も招待することができます。母も楽しみにしてくれているみたいで、僕自身も嬉しく思っています。

俳優・瀬戸康史さん
母も楽しみにしてくれているみたいで、僕自身も嬉しく思っています。(瀬戸康史さん)

――Vol.03は、2月4日公開予定。コロナ禍で感じた理不尽や、本記事でも出たお母様とのお話についても、もう少し深堀りします。

■PARCO劇場開場50周年記念シリーズ『笑の大学』

■あらすじ
舞台は戦時色が濃厚になる1940(昭和15)年。登場人物は、警視庁検閲係・向坂睦男(さきさかむつお)(内野聖陽)と劇団「笑の大学」座付作家・椿一(つばきはじめ)(瀬戸康史)の2人のみ。向坂は椿に対し「非常時にコメディなど断じて許さない」と上演中止に追い込むために、執拗なまでに脚本の改定を要求する。椿はなんとしてでも上演許可がもらいたい。そこで、向坂が要求する無理難題を逆手に取りながら、あくまで真正面からの書き直しに挑戦する。警視庁の取調室という密室で、権力対表現者の攻防戦を描くコメディ。

■作・演出:三谷幸喜
■出演:内野聖陽 瀬戸康史
■公演日程・会場:
2月8日(水)~3月5日(日) 東京・PARCO劇場
3月11日(土)・12日(日) 新潟・りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場
3月18日(土)・19日(日) 長野・まつもと市民芸術館 主ホール
3月23日(木)~3月26日(日) 大阪・サンケイホールブリーゼ
3月30日(木)~4月2日(日) 福岡・キャナルシティ劇場
4月6日(木)~4月9日(日) 宮城・仙台 電力ホール
4月13日(木)~4月16日(日) 兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
4月20日(木)・21日(金) 沖縄・那覇文化芸術劇場なはーと 大劇場

舞台『笑の大学』公式サイト

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