瀬戸康史さん
俳優
(せと・こうじ) 1988年5月18日福岡県生まれ。2005年デビュー後、舞台・映画・テレビドラマなどで活躍。最近の出演作にNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』、テレビドラマ『霊媒探偵・城塚翡翠』(NTV)、映画『劇場版ルパンの娘』(2021年)・『コンフィデンスマンJP -英雄編-』(2022年)、舞台『日本の歴史』(2021年)、『世界は笑う』(2022年)ほか多数。主演映画『愛なのに』(2022年)では、第44回ヨコハマ映画祭主演男優賞受賞。

「コロナ禍の経験によって、どんな状況にも突破口はあると気付けたことはよかったと感じています」瀬戸康史さん

――『笑の大学』で瀬戸さんが演じる座付き作家・椿一(つばきはじめ)は、検閲官の理不尽な要求を逆手に取って、「上演したい」という思いを貫いていきます。ところで、瀬戸さんご自身が理不尽な思いをしたことはありますか?

誰かに反対されたりしたことはないのですが、最近、最も理不尽な想いをしたのは、コロナ禍の状況でした。新型コロナウィルスは、多くの人の「さあ、これからだ!」というタイミングで現れ、それぞれが大切にしてきたこと、重ねていた努力を根こそぎ奪っていきました。

日常が分断されて、悲しい思いもしましたが、工夫して生活すれば何とかなることもわかりましたし、助け合って生きることを気付かせてくれました。僕たちのような表現をする仕事…俳優、ミュージシャン、アーティストなどは、活動の場を奪われ、仕事もストップして、長期間の強制的な休養を余儀なくされました。だからこそ、思いを発信し続けることの大切さに気付くことができたとも思っています。

俳優・瀬戸康史さん
だからこそ、思いを発信し続けることの大切さに気付くことができたとも思っています。(瀬戸康史さん)

――瀬戸さんご自身はどのようなことを発信したのでしょうか。

僕は絵を描くのが好きなので、絵を描いてSNSにアップしていました。それがある程度まとまって、ぬり絵として画集(『セト絵』/公式サイトで販売中)になったり、あとは動画を配信したりと、できる範囲で工夫をして発表していたので、外出自粛期間中も、気持ちをすぐに切り替えることができましたね。この経験によって、どんな状況にも突破口はあると気付けたこともよかったと感じています。

――このインタビューの2回目で、お母様が久しぶりに、息子・瀬戸康史の舞台を観に来るとお話されていました。お母様との交流にはコロナ禍の影響もあったと思います。ところで、お母様はどんな方なのでしょうか。

僕は 16 歳と割と早くに家を出たので、いわゆる家族の親密な結びつきは、かなり懐かしいものになりました。ただ、とても大切な存在ですね。
母も多くは語らない人で、東京と福岡で離れて暮らしていますが、応援してくれていること、支えてくれていることは感じています。久しぶりに会ったときは、表情で、お互いに考えていることがわかるというか…。お互い大人になった親子のいい距離感が心地いいとも思います。

俳優・瀬戸康史さん
お互い大人になった親子のいい距離感が心地いいとも思います。(瀬戸康史さん)

――瀬戸さんとお母様のいい距離感とは真逆で、いろいろな意味で密接なのが『笑の大学』の向坂と椿。おそらく、稽古を通じて最も距離が近くなる内野聖陽さんは、瀬戸さんから見てどのような方なのでしょうか。

実はこれまで作品でご一緒したことはなくて、このキービジュアルの撮影の日に初めてお会いしたんです。実際にパルコ劇場で撮影したのですが、作品の検閲室さながらに、机と椅子が置かれているのみで。「さあ、どうぞ」という雰囲気で、思わず二人で顔を見合わせてしまいましたね。
「これは、技量を試されているのか?」と半ば笑ってしまうような心持ちで、内野さんといい雰囲気で撮影を終えたことができたと思います。

――必死な表情の椿(瀬戸康史)と、相手を睥睨し値踏みするような向坂(内野聖陽)の表情に心をつかまれます。これから演じるうえで“見せ場”はどこだと考えていますか?

見せ場はありません!というか、すべてが見せ場ともいえる作品です。密室での丁々発止のやり取りと、驚きのクライマックスが、この作品の妙です。
ここでの僕のテーマは「絶対に狙わない」ということ。狙って面白くできる人もいますが、僕は絶対に裏目に出てしまうので。純粋に、真正面から演じていきます。みなさんには、ただただ笑いに来ていただければと思っています。劇場でお待ちしております!

俳優・瀬戸康史さん
純粋に、真正面から演じていきます。みなさんには、ただただ笑いに来ていただければ。(瀬戸康史さん)

■PARCO劇場開場50周年記念シリーズ『笑の大学』

■あらすじ
舞台は戦時色が濃厚になる1940(昭和15)年。登場人物は、警視庁検閲係・向坂睦男(さきさかむつお)(内野聖陽)と劇団「笑の大学」座付作家・椿一(つばきはじめ)(瀬戸康史)の2人のみ。向坂は椿に対し「非常時にコメディなど断じて許さない」と上演中止に追い込むために、執拗なまでに脚本の改定を要求する。椿はなんとしてでも上演許可がもらいたい。そこで、向坂が要求する無理難題を逆手に取りながら、あくまで真正面からの書き直しに挑戦する。警視庁の取調室という密室で、権力対表現者の攻防戦を描くコメディ。

■作・演出:三谷幸喜
■出演:内野聖陽 瀬戸康史
■公演日程・会場:
2月8日(水)~3月5日(日) 東京・PARCO劇場
3月11日(土)・12日(日) 新潟・りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場
3月18日(土)・19日(日) 長野・まつもと市民芸術館 主ホール
3月23日(木)~3月26日(日) 大阪・サンケイホールブリーゼ
3月30日(木)~4月2日(日) 福岡・キャナルシティ劇場
4月6日(木)~4月9日(日) 宮城・仙台 電力ホール
4月13日(木)~4月16日(日) 兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
4月20日(木)・21日(金) 沖縄・那覇文化芸術劇場なはーと 大劇場

舞台『笑の大学』公式サイト

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