大人の女性の感性を刺激するグレー系の服は、色と素材を繊細に重ねることで、その着こなしの魅力を最大限に高められるカラー。ファッションのプロはどんなグレー色の服、グレージュ(グレーとベージュの中間の色)のアイテムを愛用しているのか? どのように取り入れているのか?

今回、”グレージュの達人”との異名をもつ、セレクトショップ「The SECRETCLOSET」のオーナー・小野瀬慶子さん、イメージングディレクター・髙橋みどりさん、PR会社「Voluptus」代表・桑井春湖さん、スタイリスト・望月律子さんの4人に密着取材。

それぞれから、グレーを使ったカジュアル着こなしのコツと、愛してやまないアイテムを教えていただきました。

■1:グレーに「グレイッシュなピンク」を合わせて今っぽさを出す着こなし

コート・ニット・パンツ/CYCLAS、バッグ/ザ ロウ、靴/ニナ リッチ
コート・ニット・パンツ/CYCLAS、バッグ/ザ ロウ、靴/ニナ リッチ

まずは、40代・50代の女性に愛されているブランド「CYCLAS」のクリエイティブ・ディレクターを務める小野瀬さん。コレクションのカラーリストには必ずグレージュを入れる、自他ともに認めるグレージュラバーです。

小野瀬慶子さん
「The SECRETCLOSET」オーナー/CYCLASクリエイティブ・ディレクター
(おのせ けいこ)2007年、神宮前にセレクトショップ「The SECRETCLOSET」をオープン。同名のコレクションも始め、大人の女性に支持される。2016年、「CYCLAS」として海外展開をスタートする。

「グレージュのもつ絶妙な色のニュアンスや奥行き感は、クオリティの高い素材でのみ表現されるもの。だから素材選びにはとことんこだわります。油断すると、ただのくすんだグレーになり、残念ながら老けて見えてしまうのです」(小野瀬さん)

そんな小野瀬さんが私的グレージュ名品として紹介してくれたのが、上写真のコート。ハイクオリティなホワイトカシミヤを使用したダブルフェースのコートは、日本のクラフトマンシップによって特別に仕立てられたものだそう。

「上品で明るいグレージュが美しいダブルフェースのコートは、軽やかだから、3シーズン着こなすことができる実用名品です。バッグやパンプスでワントーン濃い色を合わせつつ、ボトムスにピンクを投入してメリハリのあるスタイリングに仕上げます」(小野瀬さん)

そして着こなしポイントは、「グレイッシュなピンクを効かせて、定番のグレージュ・アイテムに今季らしさをプラスします」とのこと。

「ドロップショルダーやエッグシェイプで今っぽさを加えました。これまでは、ワントーンやオフホワイトを合わせて着ることが多かった気がしますが、グレイッシュなピンクを合わせることでよりモダンな印象に。グレージュは永遠のベーシックカラーだからこそ、旬のニュアンスを加えることがフレッシュに着こなすコツですね」(小野瀬さん)

また、仕事のためのグレースタイルなら、旬&きちんと感のバランスを意識するといいそうです。

■2:グレーに「素材と色を混ぜて」ニュアンス感を演出する着こなし

ダウンベスト/イレブンティ、トップス・スニーカー/ブルネロ クチネリ、パンツ/バンフォード、ストール/ジョンストンズ、バッグ/エルメス
ダウンベスト/イレブンティ、トップス・スニーカー/ブルネロ クチネリ、パンツ/バンフォード、ストール/ジョンストンズ、バッグ/エルメス

続いては、「8年くらい前からグレージュを基本にしたコーディネートを楽しんでいます」と語る、イメージングディレクターの髙橋みどりさん。きっかけは、それまで好きだった黒が、堅く感じられたことだったのだそう。

髙橋みどりさん
イメージングディレクター
(たかはし みどり)ジョルジオ アルマーニ広報室長を経て、2000年にセレクトショップ「エストネーション」の創業に携わる。2005年には株式会社「オーエンス」を設立。マーケティング、ブランディング、商品開発などを手がけている。

「若いころは大人っぽく見せたいと思って黒を着ていましたが、もうだれが見ても十分、大人なので(笑)。今度はカジュアルが素敵に着こなせる女性になりたいと思うようになったころ、グレージュという色に出合いました。素材や色のさじ加減で変化をつけやすいところも気に入って、以来、ワードローブのメインカラーはグレージュにシフトしました」(髙橋さん)

そんな髙橋さんが着こなしの参考にしているのが男性ファッション誌なのだとか。「参考にしているのはメンズ誌。グレージュを辛口に着るヒントが詰まっています」と言います。

「メンズ誌のスナップページはすごく勉強になります。男性って限られたアイテムを色や素材の組み合わせで素敵に見せるのが上手な方が多くて、ハッとすることもしばしば。特にイタリア人のグレージュ系スタイリングは絶妙。流行もさりげなく取り入れて、自分のスタイルにしている。それを女性におき換えて、あれこれ考えてみるのもおもしろいものです。おしゃれの幅がぐんと広がりますよ」(髙橋さん)

髙橋さんから教えていただいたのは、ふたつの着こなし。ひとつめは、ドライブするときにピッタリなコーディネート。カジュアルなシーンだからこそ、上質素材と色合わせが決め手になるとのこと。

「スポーティな印象が強い、グレージュ×アースカラーも、上質な素材を重ね、ストールなどのニュアンスを加えることで大人の上品なカジュアルが完成します」(髙橋さん)

■3:グレーに「白をプラスして」引き締まった印象を出す着こなし

ニット・靴/イレブンティ、カシミヤストール・パンツ/ブルネロ クチネリ、シャツ/ジル サンダー、サングラス/ロンハーマン、バッグ/エルメス、ファーベスト/オーダー品
ニット・靴/イレブンティ、カシミヤストール・パンツ/ブルネロ クチネリ、シャツ/ジル サンダー、サングラス/ロンハーマン、バッグ/エルメス、ファーベスト/オーダー品

もうひとつは、美術館に行くときにピッタリなコーディネート。ほんの少しきちんと感が欲しいときは白シャツの力を借りるといいそうです。

「グレージュ×グレーの微妙なグラデーションに白シャツを効かせることで、全体がくすまずに、きちんと感もアップします」(髙橋さん)

■4:ワントーン明るいグレーで爽快感をプラスする着こなし

ニット・Tシャツ/ザロウ、パンツ/セリーヌ、バッグ/エルメス、靴/ドルチェ&ガッバーナ
ニット・Tシャツ/ザロウ、パンツ/セリーヌ、バッグ/エルメス、靴/ドルチェ&ガッバーナ

3人目は、グレージュ好きが高じて、ワードローブだけでなく、気がつけば愛車までグレージュだった、というPR会社「Voluptus」代表・桑井春湖さん。

桑井春湖さん
「Voluptus」代表
(くわい はるこ)フランスを中心とした外資ラグジュアリーブランドでコミュニケーション業務を担当。独立しPR会社「Voluptus」を主宰。ファッションのみならず、ライフスタイルブランドのPRまで多岐にわたって活躍中。

「グレージュの魅力は、ヨーロッパの成熟した文化の香りが漂うところ。ニュアンスのある色合いが、日本の古代色とも親和性があり、とてもなじみ深い色です。しかも色そのものは主張が強くないので、さまざまな色と相性がよく、コーディネートしやすいところも長年好きな理由です」(桑井さん)

そんなグレージュ好きの桑井さんも、着こなすうえで気をつけている鉄則があるのだそう。それは艶感。「艶感を随所に効かせ、リッチに仕上げるのが私流」とのこと。

「洗練されたシックな色ですが、地味な印象とも紙一重。特にカジュアルシーンで着るときは、“艷”をプラスして“華やぎ”を意識します。しなやかな上質レザーの艶やかさ、クロコダイルの迫力ある風合い、シルクの輝きなど、アイテム自体はシンプルでも、素材をラグジュアリーにすることでたちまち華やかに。さらには、ネイルやヘアなどを整えることも重要。くすんだ印象にならないためにも、細やかなディテールにも気を遣いたい。それだけで完成度が変わる気がします」(桑井さん)

桑井さんから教えていただいたのは、ふたつの着こなし。ひとつめは、小旅行するときにピッタリなコーディネート。カジュアルな装いも、素材の豊かさで大人の風格が備わります。

「リラックス感のあるたっぷりとしたニットに、センタープレスを効かせたワイドパンツできちんと感をアピール。バッグと靴にレザーの艶をプラスして、リッチ感のある大人のカジュアルスタイルに」(桑井さん)

■5:グレージュにプラスした小物で「濃淡をしっかりつける」着こなし

コート・スカート/ザロウ、ブラウス/ラルフ ローレン、バッグ・靴/トッズ
コート・スカート/ザロウ、ブラウス/ラルフ ローレン、バッグ・靴/トッズ

もうひとつは、ギャラリーへ行くときにピッタリなコーディネート。シンプルなシルエットが、控えめながらも華やぎを演出します。

「温もりを感じるベージュ系のグレージュコートを主役にするときは、ぼやけた印象にならないように、小物で濃淡をしっかりつけて引き締めます。上質なレザーコートの光沢感を生かしたいので、小物はマットなクロコダイルを」(桑井さん)

■6:グレーに「カーキを合わせて」こなれ感を演出する着こなし

ニット/アパルトモン ドゥーズィエム クラス、パンツ/ブルネロ クチネリ、ストール/エルメス、バッグ/フェンディ、サングラス/スーパー バイ レトロフィーチャー、靴/ニナ リッチ
ニット/アパルトモン ドゥーズィエム クラス、パンツ/ブルネロ クチネリ、ストール/エルメス、バッグ/フェンディ、サングラス/スーパー バイ レトロフィーチャー、靴/ニナ リッチ

最後は、グレージュ使いの名手として、編集部も絶大な信頼を寄せているスタイリストの望月律子さん。「グレージュを今季らしく仕上げるコツはカジュアル要素のさじ加減」と言います。

望月律子さん
スタイリスト
(もちづき りつこ)雑誌『Precious』をはじめ、数々の女性誌や広告で幅広くスタイリングを手がける。ラグジュアリーな大人カジュアルの達人としてファンも多く、インスタグラム(@ritsukomochizuki)も大好評。

「グレージュはリッチで素敵な色ですが、落ち着いた色調ゆえに若干老けた印象に転びがち。ふだんからどこかに必ずカジュアル要素を入れることを意識しています」(望月さん)

今回のコーディネートでも、ざっくり感のあるニットやサイドにラインが入ったパンツを合わせ、軽快さをプラスしたのがポイント。

望月さんによると、「グレージュにこなれ感を演出するカーキを合わせ、グラデーションに仕上げるのが気分。辛口にまとめることで、印象がきりっと引き締まります」とのこと。確かに、濃淡のグラデーションでメリハリのあるスタイルになっています。

また、グレー系カジュアルには小物使いが最も重要なのだそう。

「ラフすぎるスタイルは得意でないので、足元も断然パンプス派。ヴィクトリア・ベッカムのように、シンプルだけどかっこよく着こなすのが理想です。バッグは、大きめサイズでメリハリをつけるのが私流。荷物が多いという実用的な理由もありますが、ストールと一緒にくずして持つのが好み。上質なレザーの風合いでグレージュを盛り上げるのも、大人のカジュアルに仕上げるためのこだわりです」(望月さん)

そして、「グレージュはコントラストをつけて着るよりも、洋服はあくまでもニュアンスカラー同士のグラデーションでまとめるのが気分」なのだそうです。

 

ファッションのプロは個人的に実践しているコーディネートや偏愛私物には、並々ならぬこだわりが満載でしたね。ぜひヒントにして、もっとグレー色のおしゃれを楽しんでみてください。

※この記事で紹介した商品は、すべて私物です。現在は取り扱っていないものもありますので、各ブランドへの問い合わせはご遠慮ください。
PHOTO :
佐藤 彩
EDIT :
土橋育子、小林桐子(Precious)