「重々承知」は「十分にわかっている」という意味の言葉で、依頼や謝罪の場面など、ビジネスシーンでもよく使われていますね。対面での会話でも「はい。よくわかっております」と応じるよりも、「重々承知しております」と応えたほうが、信頼度は確実に上がりそうです。とはいえ、注意点もありますので、この機会に正しい使い方をマスターしましょう。

【目次】

「重々承知」は敬語表現ではありません。
「重々承知」は敬語表現ではありません。

【「重々承知」を使いこなすための「基礎知識」】

■読み方

「重々承知」は「じゅうじゅうしょうち」と読みます。

■意味は?

「重々承知」が四字熟語だと思っている人もいるようですが、「重々承知」は副詞「重々」と名詞「承知」からなる言葉です。「重々」には「同じことを何度も繰り返すさま。かさねがさね」という意味のほか、「十分であるさま。よくよく」という意味があります。そして「承知」は「事情などを知ること。わかっていること」。つまり、「重々承知」とは「十分わかっていること」という意味の言葉です。

■「重重承知」との違いは?

「重々」の「重」を省略せずに「重重」と書くこともあります。どちらの表記も間違いではありません。


【「重々承知」を使ったビジネス「例文」8選】

「重々承知」という言葉自体、敬語表現ではありません。上下関係の有無にかかわらず使うことができますが、敬意を払うべき相手に対しては、前後で敬語を正しく使う必要があります。具体的に「重々承知」がどんなシーンで使われているのか、例文と共にチェックしてみましょう。

■強い依頼のシーンで

・「勝手なお願いであることは重々承知しておりますが、なんとかご検討いただけないでしょうか」

・「お忙しいのは重々承知で申し上げますが、なんとか明日までにお返事をいただきたく存じます」

依頼のシーン、特に少々無理なお願いをするときに使われます。「迷惑なのは十分わかっておりますが…」「お忙しいのは十分わかっておりますが…」と前置きすことで、「それでもどうしてもお願いしたい」という気持ちを謙虚に伝えることができます。

■謝罪のシーンで

・「このたびは私の不手際から○○さまにご迷惑をおかけいたしましたこと、重々承知しております。誠に申し訳ございませんでした」

・「謝罪だけでは足りないことは重々承知しておりますが、平にご容赦くださいますようお願い申し上げます」

謝罪の際に「重々承知」を使うことで、こちらに非があったことを認め、失態を重く受け止めていることを伝える事ができます。必ず謝罪の言葉をあとに続けます。

■「確認」を求められたシーンで

・「そちらの経緯につきましては私共も重々承知しておりますので、ご安心くださいませ」

・「リスクにつきましても重々承知しておりますが、そのうえで今回の結論に至りました」

相手から何か確認されたとき、単に「承知しています」と伝えるよりも、「十分に考えたうえでの結論である」ことを印象づけることができます。

■依頼を断るシーンで

・「お気持ちは重々承知しておりますが、今回は辞退させていただきたく存じます」

・「そちらのご事情も重々承知しておりますが、このたびはご期待に添えず申し訳ございません」

ビジネスシーンで依頼をお断りする際に「重々承知」を使うと、期待に添えず申し訳なく思う気持ちを表しつつお断りの意志を伝えることができます。


【同じ意味で使える「類語」「言い換え表現」】

「重々承知」と似た意味の言葉をいくつかご紹介しましょう。

■百も承知

「百も承知」は「重々承知」同様、「十分に承知していること」の意味ですが、少々カジュアル。「何度も見聞きしているから知っている」というニュアンスを含むため、「重々承知」のほうが謙虚な印象です。

■先刻承知

「先刻」が副詞的に用いられると、「すでに、とうに」という意味になります。つまり「先刻承知」は「前々から知っていること。すでにわかっていること」。「とっくの昔から知っています」といった自慢のニュアンスを含むため、目上の方に対しては使わないほうが無難です。

■委細承知

こちらも「委細」の副詞的用法で「細かいことまですべて。万事」の意。ここから「委細承知」は「すべてを承知している」という意味になります。「重々承知」よりも強いニュアンスで、口頭には「重々承知」のほうがなじみます。

■十分知っている ■十分理解している


【「重々承知」を「英語」にすると?】

「重々承知」の英訳には[understand]や[aware]が使われます。

・I understand that very well.(そのことなら十分承知しています)

・I am fully aware of it.(十分承知しています)


「重々承知」注意点まとめ】

■お詫びの場面では、自分の非を認め謝罪の言葉を続けて

・「在庫が少ないことは重々承知していましたが、即日に売り切れてしまうとは考えておりませんでした」

「重々承知」していたにもかかわらず、「~考えていなかった」は、ビジネスマンとしての想定不足で言い訳がましいうえに、聞きようによっては「わかっていたのやらなかった」とも解釈されかねません。もし使うのであれば、「重々承知しておりましたのに準備不足によりご迷惑をおかけし、大変申し訳ありませんでした」と、自分の非を認めて謝罪の言葉を述べましょう。

■「重々承知」するのは常に自分側

・NG「このような経緯がございましたこと、重々承知いただけますと幸いです」

「重々承知」という言葉自体は敬語ではありませんが、「承知」本来がもつ謙譲語としてのニュアンスから、目上の人の行為に対して使うのは適切とはいえません。不遜な態度と取られかねませんので、ご注意くださいね。

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「重々承知」は敬語表現ではなく、基本的に立場に関係なく使うことができます。強めの依頼や謝罪、お断りの場面など、さまざまなビジネスシーンで使われる言葉ですから、この機会に注意点も含め、使い方を確認しておきましょう。

この記事の執筆者
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