雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。

今回は、「MATI」デザイナー マリア・ホセ・ジェルマーノさんの活動をご紹介します。

マリア・ホセ・ジェルマーノ
「MATI」デザイナー
ミラノのデザイン・ファッション専門学校でファッションのディプロマを取得。イタリア、ドイツでデザイナーとして経験を重ねた後、'18年にサステイナビリティをテーマにしたバッグブランド「MATI」を立ち上げる。

フィレンツェ発祥の麦わら帽子に発想を得た個性派バッグブランド

「MATI」は、リサイクル素材やデッドストック素材(※)だけを使ったバッグブランド。素材の供給から配送に伴うCO2の排出まで、ものづくりのあらゆる面で責任あるアプローチを行っている。

「私の初めての仕事は、ファストファッションブランドのレディスラインのデザイナーでした。毎日毎日、驚くほどのデザインを考えるなかで、ふと、誰が縫製しているの? 誰が着るの? 量産後にこの服たちはどうなるの? と考えて。そのときから、『意識、倫理、環境、動物・人間への敬意をベースにしたファッションづくり』が私のテーマになりました」

サステイナビリティを実現するためにリサーチを続けるなかで大きなヒントになったのが、イタリアを象徴するファッションアイテムである『麦わら帽子』だった。

「麦わら帽子はトスカーナ地方のフィレンツェが発祥です。そして、トスカーナ州の主な産業は農業。つまりフィレンツェには麦わらを扱う工場が集まっていて、そこにはデッドストックがある」

マリアさんは、わらを使って、トスカーナの美しい田園風景や、植物をデザインモチーフにしたバッグをつくる。環境負荷の少ない素材を使うことから始まり、麦わら帽子に関わる伝統的技術や熟練の職人にもアプローチ。さらに地元企業や工場とも交渉して、「MATI」を誕生させたのだ。

「麦わら以外にも、オーガニックコットンや、着用後のニットをリサイクルした素材などにも挑戦しています。職人など生産に関わる人たちの声を聞き、彼らの長年の経験をデザインに落とし込むのが私の役目。働きがいがあり、みんなの生活が豊かになることが、真のサステイナビリティですから」

【SDGsの現場から】

●職人たちとのチームワークでつくり上げる

インタビュー_1
パタンナーと共に手縫いでバッグを試作。素材の特徴を生かせるフォルムを研究していく。

●サステイナブルを叶えるために大量生産はしない

サステナブル_1,インタビュー_2
オーガニックコットンを使った手編みバッグのコレクション。3色のみで、大量生産もしない。

※デッドストックとは…売れ残りなどの在庫品のこと。ファッション業界でも近年大きな問題となっている。廃棄をなくすことが環境負荷の低減につながる。

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PHOTO :
Francesco Dolfo
EDIT&WRITING :
正木 爽(HATSU)、喜多容子(Precious)
取材 :
Yuki Karagiri
文 :
剣持亜弥(HATSU)