東京は、世界中の名画が集まる街ですが、2018年は特に引きも切らずに巨匠の大作がやってきます。アートを担当する編集者も大忙し! というわけで今回は、2018年2月にスタートした3つの展覧会をピックアップしました。

いずれも大人の女性の感性を刺激する、ふくよかで充実した展覧会です。お仕事帰りやパートナーとの「お出かけリスト」に是非、加えてみていただければと思います。

■1:三菱一号館美術館で幻想的なひとときを。『ルドン―秘密の花園』展@丸の内

人間の内面世界に目を向けた幻想的な作品で、日本でも人気の高い画家のオディロン・ルドン。その特異な画業のなかでも、植物に焦点を当てた、これまでにない展覧会です。

オディロン・ルドン 《グラン・ブーケ(大きな花束)》 1901年 パステル/カンヴァス 三菱一号館美術館蔵
オディロン・ルドン 《グラン・ブーケ(大きな花束)》 1901年 パステル/カンヴァス 三菱一号館美術館蔵

最大の見どころは、こちらの《グラン・ブーケ(大きな花束)》。248.3×162.9cmという巨大なカンヴァスにパステルで描かれた、華やかな作品です。これは、実業家であり、美術愛好家であったロベール・ド・ドムシー男爵が、その城館の大食堂の壁面全体を覆う装飾として、ルドンに発注したもの。2011年にパリで初めて一般公開されるまで、100年近くも所有者以外の人目に触れることなく、男爵邸の大食堂の壁を飾っていたという、ミステリアスなエピソードにも興味をそそられます。

オディロン・ルドン 《神秘的な対話》 1896年ごろ 油彩/カンヴァス 岐阜県美術館蔵
オディロン・ルドン 《神秘的な対話》 1896年ごろ 油彩/カンヴァス 岐阜県美術館蔵

国内外のルドンの名品が多数そろうのも、今回の展覧会の見どころのひとつ。《グラン・ブーケ(大きな花束)》とともに、ドムシー城の大食堂を飾っていた15点がオルセー美術館から来日し、当時の装飾画が一堂にそろうほか、世界有数のルドンコレクションを有していることで名高い岐阜県立美術館の《神秘的な対話》も、ドムシー男爵の旧蔵品です。

ほかにもボルドー美術館、プティ・パレ美術館(パリ)、ニューヨーク近代美術館MoMA、ワシントン・ナショナル・ギャラリーなど、海外の主要美術館からルドン作品が集結。またとないこの機会、見逃せません。

問い合わせ先

  • 『ルドン―秘密の花園』展
  • 会期/2018年(2月8日)〜5月20日まで開催
  • 会場/三菱一号館美術館
  • 住所/〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-6-2
  • 開館時間/10:00〜18:00 ※入館は閉館の30分前まで (祝日をのぞく金曜、第2水曜、会期最終週平日は〜21:00)
  • 休館日/月曜日(ただし4月30日、5月14日とトークフリーデーの3月26日は開館)
  • 観覧料/¥1,700(一般)ほか
  • TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)

■2:日本初公開のルノワールやモネが観られる! 国立新美術館で開催『至上の印象派展 ビュールレ・コレクション』@六本木

ドイツ生まれで、スイスに移住した実業家エミール・ゲオルグ・ビュールレ。1937年にスイス国籍を得て移り住んだチューリヒの邸宅を飾るため、美術品の購入を始めという彼が、生涯をかけて収集したプライベート・コレクションが「ビュールレ・コレクション」です。フランスの印象派とポスト印象派を中心に、古典作品から1900年以降のフランス前衛絵画まで、名作がそろいます。

ピエール=オーギュスト・ルノワール 《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)》 1880年 油彩・カンヴァス 65×54cm ©Foundation E.G. Bührle Collection,Zurich(Switzerland) Photo:SIK-ISEA,Zurich(J.P.Kuhn)
ピエール=オーギュスト・ルノワール 《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)》 1880年 油彩・カンヴァス 65×54cm ©Foundation E.G. Bührle Collection,Zurich(Switzerland) Photo:SIK-ISEA,Zurich(J.P.Kuhn)

たとえば、ルノワールの《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)》。絵画史上、最も有名な少女ともいわれるこの絵も、ビュールレ・コレクションだったのです。さらに、セザンヌ、ファン・ゴッホ、ゴーギャンの重要な作品も。ピカソやブラックなど、20世紀のモダン・アートにも注目です。

クロード・モネ 《睡蓮の池、緑の反映》 1920-1926年 油彩・カンヴァス 200×425cm ©Foundation E.G. Bührle Collection,Zurich(Switzerland) Photo:SIK-ISEA,Zurich(J.P.Kuhn)
クロード・モネ 《睡蓮の池、緑の反映》 1920-1926年 油彩・カンヴァス 200×425cm ©Foundation E.G. Bührle Collection,Zurich(Switzerland) Photo:SIK-ISEA,Zurich(J.P.Kuhn)

さらに今回の展覧会のすごいところが「出品作のおよそ半数が日本初公開」ということ。そのうちの1枚、モネの代表作のひとつである《睡蓮の池、緑の反映》に至っては、これまでスイス国内から一度も外へ出たことがなかった、門外不出の傑作です。約高さ2m×幅4mという大作を、ぜひその眼で!

問い合わせ先

  • 『至上の印象派展 ビュールレ・コレクション』
  • 会期/2018年(2月14日)〜5月7日まで開催
  • 会場/国立新美術館 企画展示室1E
  • 住所/〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2
  • 開館時間/10:00〜18:00 ※入場は閉館の30分前まで (毎週金・土曜日、4月28日〜5月6日は〜20:00)
  • 休室日/火曜日(ただし5月1日はのぞく)
  • 観覧料/¥1,600(一般)ほか
  • TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
  • ※5月19日〜7月16日九州国立博物館、7月28日〜9月24日名古屋市美術館へ巡回。

■3:国交樹立150周年のおかげでベラスケスが7点も! 国立西洋美術館で開催『プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光』@上野

マドリードにあるプラド美術館から、スペインが誇る西洋美術史上最大の画家のひとり、ディエゴ・ベラスケスの作品が7点も来日する”奇跡”の展覧会が、こちら。

ディエゴ・ベラスケス 《王太子バルタサール・カルロス騎馬像》 1635年ごろ マドリード、プラド美術館蔵 ©Museo Nacional del Prado
ディエゴ・ベラスケス 《王太子バルタサール・カルロス騎馬像》 1635年ごろ マドリード、プラド美術館蔵 ©Museo Nacional del Prado

17世紀、国王フェリペ4世の庇護を受けた宮廷画家ベラスケス。この《王太子バルタサール・カルロス騎馬像》で凛々しい姿を見せているのは、フェリペ4世の長男です。5〜6歳ころかと思われるあどけない顔つきの一方で、その眼差しには、広大なスペイン帝国の王位継承者として国中の期待を一身に背負っていることを自覚しているかのような、強い意志を感じさせます。マドリード郊外のグアダラマ山脈を描いた背景も、印象画の技法の先駆ともいえるグラデーションが見事! 肖像画でありながら、ドラマティックな風景画でもある傑作です。

また、今回の展覧会では、ベラスケスに強く影響を与えたティツィアーノ、ティントレット、ルーベンスといったスペイン国王のコレクションを代表する芸術家たちの作品も来日。フランドル絵画、イタリア絵画の名品も楽しむことができます。

ティツィアーノ 《音楽にくつろぐヴィーナス》 1550年ごろ マドリード、プラド美術館蔵 ©Museo Nacional del Prado
ティツィアーノ 《音楽にくつろぐヴィーナス》 1550年ごろ マドリード、プラド美術館蔵 ©Museo Nacional del Prado

国民的画家ベラスケスの絵画が、これほどまとまった数で貸し出されることは極めて稀なこと。スペインの黄金時代を間近で観られる迫力の展覧会、まさに必見です!

問い合わせ先

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
EDIT&WRITING :
剣持亜弥