スペクタクルな舞台装置と、感情を揺さぶるような演出で、人々を魅了してやまないオペラやバレエの世界。

「劇場で実際に観るのは初めて!」「観てみたいのだけれど、敷居が高くて…」という方のために、実際に観るまでにすることやマナーを、東京・初台にある「新国立劇場」のバレリーナ、米沢 唯さんに解説していただきます。

3回目は、「劇場内での楽しみ方」についてご紹介します。
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5.プログラムを手に入れる

劇場内に入ったら、ホワイエ(劇場内のロビー)でプログラムを手に入れましょう。オペラの場合、プログラムはホワイエのショップにて購入可能。

作品の予習はマストというわけではありませんが、主な登場人物の名前と人間関係を理解できていなければ、舞台両脇に出る字幕を読んでも、「あれ?」ということになりかねません。オペラは進行が早く情報量も多いので、物語に取り残されてしまうと、とてももったいないことになります。事前に予習できなかった場合は、席に着いてからでも遅くはないので、プログラムに軽く目を通しましょう。

バレエの場合は、プログラムはホワイエで無料配布されているので、受け取るのを忘れずに。

特に、バレエは身体表現がセリフに代わるものなので、プログラムに目を通しておくと、より一層舞台に集中して鑑賞することができます。物語のあらすじのない作品の場合は、ダンサー達の身体が描き出す美しい動きを堪能しましょう。バレエは身体表現の芸術のため、自分の中の想像力を膨らませて観ると、幾通りにも楽しむことができます。

新国立劇場のホワイエを歩くプリンシパル、米沢唯さん

6.シャンパンや軽食を楽しみながら、ホワイエで優雅なひとときを

オペラの公演は2幕~3幕仕立てで、全体で3時間程度。2幕の作品ならば休憩は1回、3幕ならば休憩2回が標準で、休憩時間は1回につき25分前後と長めです。バレエもオペラ同様の構成となっていますが、休憩時間は1回につき20分前後と若干短め。

「幕」というのは場面のことで、幕が替わると通常はいったん緞帳(どんちょう)と呼ばれる幕が降り、舞台転換が入ります。休憩の前後で、すっかり違うシーンが展開されるという訳です。幕数や休憩のタイミング、終演時間などは、劇場の入口に掲示されるほか、WEBサイトでも最新の情報が掲載されます。

シャンパンを受け取るプリンシパルの米沢唯さん

休憩に入ると全員が一斉に席を立ち、ホワイエでシャンパンや軽食を楽しみながら、周りの人との歓談などで気分転換をします。休憩時間の過ごし方は海外の劇場でも共通のため、ぜひマスターしてほしい観劇習慣です。

新国立劇場では、劇場内のレストラン直営のブッフェが出店しているので、小腹を満たせる軽食やおつまみ、スイーツなど、フードメニューも充実しています。公演にちなんだ特別メニューがある場合も!

日本でも少しずつ定着してきましたが、休憩後に席に戻った際は、奥の席の人が入ってくる時にはいったん立ち上がり、「どうぞ」と声をかけて前を通ってもらう、というのも世界共通のマナー。ヨーロッパでは、奥の人が来るのを待ち全員が立ったままだった場合、「あら、お待たせしちゃってゴメンナサイ!」なんて、冗談交じりにあいさつを交わすこともしばしば。

大切なのは、一緒に鑑賞している人は、同じ目的で集まった仲間だ、という意識を持つこと。周りが見えず、自分たちのおしゃべりだけに夢中になってしまうのはマナー違反です。

新国立劇場のブッフェでスイーツを受け取る米沢唯さん

7.有名作品や、見どころを知る

オペラでは、作曲家によって多くの有名作品があります。たとえば、ビゼーの『カルメン』や、ヴェルディの『リゴレット』などは、聞いたことのある曲も多い人気作品。また、プッチーニの『ラ・ボエーム』は、映画のようにドラマティックなストーリーで感情が移入しやすい作品です。

オペラらしい、豪華絢爛なスペクタクルさに度肝を抜かれるのは、同じくヴェルディの『アイーダ』ですが、大掛かりな舞台演出のため本格的な上演の機会が少なく、チャンスがあれば観ておいて損はない作品です。ピアノや弦楽器など器楽がお好きな方には、モーツァルトの『魔笛』や『フィガロの結婚』などもおすすめです。

有名なアリアや前奏曲など、“聴きどころ”と言われる曲が、オペラには必ずあります。

『椿姫』の「乾杯の歌」や、『トスカ』の「歌に生き、恋に生き」『蝶々夫人』の「ある晴れた日に」など、どこかで耳にしたことのある曲がきっとあるでしょう。動画検索サイトなどでも簡単に見つけることができるので、あらすじとともにチェックしておくと、本番でも聞き逃さずに済みますよ。

新国立劇場のブッフェで購入したスイーツがテーブル上に乗っています

バレエの代名詞とも言われる作品は、ご存じ、『白鳥の湖』。ロシアの巨匠、チャイコフスキーが作曲した、『白鳥の湖』『くるみ割り人形』『眠れる森の美女』は、“チャイコフスキー三大バレエ”として世界中で愛されている名作です。誰でも一度は耳にしたことのある曲が数多く使用されているため、初めての方にも親しみやすい作品となっています。

また、『ロメオとジュリエット』は、シェイクスピアの物語を原作にバレエ化した演劇的な作品。プロコフィエフ作曲の音楽も劇的で美しく、バレエファンのみならず、演劇ファンや音楽ファンにもオススメの作品です。

バレエでは、ダンサーたちの技を活かした回転跳躍“見どころ”『白鳥の湖』『ドン・キホーテ』で女性ダンサーが見せる32回転や、男性ダンサーの迫力ある跳躍もそのひとつ。また、バレエダンサーの鍛え上げられた美しい姿は、それ自体が“見どころ”といえるでしょう。主役はもちろんのこと、群舞を踊るコール・ド・バレエが創り出す美しいラインやフォーメーションも、ぜひ楽しんでいただきたいです。バレエには、CMなどのBGMとして使用されている曲も多いので、お気に入りの作品をオーケストラの生演奏で聴きたい、という方もきっと満足できるはずです。

 

米沢 唯さんとともにお送りしてきた『オペラ・バレエ鑑賞』入門ガイド、いかがでしたか? 非日常を感じる空間で感動を味わい、教養も深まるオペラやバレエの鑑賞は、ちょっと大人な自分磨きにもぴったり。オペラ歌手やバレエダンサー、舞台装置や衣裳、そして音楽が一体となった、至極の世界がそこにはあります。これを機に“オペラ・バレエ鑑賞デビュー”をして、一度ならず二度、三度と、劇場へ足を運んでみてはいかがでしょうか。

この記事の執筆者
TEXT :
米沢 唯さん バレリーナ
2017.7.9 更新
愛知県出身。塚本洋子バレエスタジオで学ぶ。国内国外の数多くのコンクールに入賞し、2006年に渡米しサンノゼバレエ団に入団。10年にソリストとして新国立劇場バレエ団に入団した。ビントレー『パゴダの王子』で初主役を務め、『白鳥の湖』『くるみ割り人形』『ドン・キホーテ』『ジゼル』『火の鳥』ほか数々の作品で主役を踊っている。13年プリンシパルに昇格。全国舞踊コンクールジュニアの部第1位、ヴァルナ国際バレエコンクールジュニアの部第1位、05年世界バレエ&モダンダンスコンクール第3位、06年USAジャクソン国際バレエコンクールシニアの部第3位など国内外のコンクールでの受賞歴も多い。14年中川鋭之助賞受賞。新国立劇場バレエ団・プリンシパル。
クレジット :
撮影/五十嵐美弥(小学館写真室) 取材・構成/難波寛彦