2013年に登場した4ドアスポーツセダンの「ギブリ」「クワトロポルテ」が日本市場でも人気を博したことで、マセラティの名はカーマニア以外の層にも広く浸透している。正確無比で生真面目さ漂うドイツ車とは一線を画す、エロティックなデザイン、そしてアクセルを踏み込んだときの情熱的なフィーリングは惚れ惚れするほどで、イタリア車の醍醐味を堪能できる。さらに2016年からは初のSUV「レヴァンテ」も登場し、その存在感は増すばかりだ。そんなマセラティのラインアップ中、もっとも長いモデルスパンを誇るのが、2ドアクーペ(&カブリオレ)の「グラントゥーリズモ」。洒脱で十分な実用性を備えた、スポーツラグジュアリーの最高峰である。

ラテン男の彫りの深さと頼もしい着用感

「グラントゥーリズモ」「グランカブリオ」共に、2018年秋にビッグマイナーチェンジ。フロント周りはグリルやエアインテークのデザインが改められ、2014年に披露されたマセラティの創業100周年モデル「アルフィエーリ」の雰囲気に近くなった。
「グラントゥーリズモ」「グランカブリオ」共に、2018年秋にビッグマイナーチェンジ。フロント周りはグリルやエアインテークのデザインが改められ、2014年に披露されたマセラティの創業100周年モデル「アルフィエーリ」の雰囲気に近くなった。
グラマラスなリアフェンダーの曲線が美しい。
グラマラスなリアフェンダーの曲線が美しい。

 モータースポーツへの挑戦から始まったマセラティが、初の量産車「3500GT」を発表したのは1957年のこと。コーチビルダー(架装業者)のヴィニャーレが手掛けた、スポーティでエレガントな2+2のボディにレーシングカー由来の直6エンジンを積み、速さと実用性を備えたGT(グラントゥーリズモ)として大いに人気を博した。現行型の「グラントゥーリズモ」は、その再来である。

 なんといっても目を引くのは、そのスタイリングだ。ラテン男のような、彫りの深い色気あるマスクはどの角度から眺めても飽きることがなく、古典的なロングノーズのプロポーションは、前後フェンダー周辺の盛り上がりやルーフラインがセクシー極まりなく、まるで強いシェイプと幅広ラペルで男らしさを主張する、イタリアメイドのスーツのよう。

 繰り返し服にたとえるなら、抜群の「動きやすさ」も忘れられない。ターボの過給なしで最高出力460馬力を発揮するイタリアンV8エンジンは、アクセルの動きに合わせてとめどなく吹け上がり、その爆発的なパワーを受け止めるボディや足回りも頼もしく、俊敏なスポーツ走行が堪能できる。そして耳に入る乾いたV8サウンドが、単調なクルージングでさえも艶やかで濃厚なドライブ体験へと変えてくれる。

アップデートした2018年モデル

珠玉のV8エンジンは、今や貴重な自然吸気型。高回転で威力を発揮する。いいエンジンは、形状も美しい。
珠玉のV8エンジンは、今や貴重な自然吸気型。高回転で威力を発揮する。いいエンジンは、形状も美しい。

 実は現行「グラントゥーリズモ」、現在のマセラティのラインアップのなかで最も古いモデルなのだが(2007年~)、2018年モデルは内外装を刷新し、最新のインフォテインメントシステムも搭載されたことで、古びた印象は皆無。それは走行フィーリングにおいても同様で、「スポーツカーは最新のものに限る」と信じてやまない硬派なドライバーも、一度ステアリングを握ればマセラティの世界に魅了されること確実だ。

 充分な広さの後席とラゲッジを備え、遠出もこなせる「グラントゥーリズモ」は、まだ見ぬ場所への想いを掻き立てる、万能の一張羅だ。さらに、旅先での景色を目に焼き付けたい方のために、ソフトトップを備える「グランカブリオ」という選択肢もある。ロマンティックな人生をイタリア男に独占させておくのは、あまりにももったいない。

コクピットはほどほどにタイトで、視界も良好。新たに大型モニターのインフォテイメントシステムが装備され、快適このうえない。
コクピットはほどほどにタイトで、視界も良好。新たに大型モニターのインフォテイメントシステムが装備され、快適このうえない。
大人ふたりが普通に座れる後席を備える。スポーツカーらしいパフォーマンスを発揮しながら、これほど実用的なGTは貴重だ。
大人ふたりが普通に座れる後席を備える。スポーツカーらしいパフォーマンスを発揮しながら、これほど実用的なGTは貴重だ。

〈マセラティ・グラントゥーリズモ スポーツ 〉
全長×全幅×全高:4,910×1,915×1,380㎜
車両重量:1,780kg
排気量:4,691cc
エンジン:V型8気筒DOHC
最高出力:460PS/7,000rpm
最大トルク:520Nm/4,750rpm
駆動方式:2WD
トランスミッション:6AT
価格:1,890万円~(税込)
■お問い合わせ先
マセラティ コールセンター
TEL:0120-965-120
https://www.maserati.com/maserati/jp/

この記事の執筆者
男性情報誌の編集を経て、フリーランスに。心を揺さぶる名車の本質に迫るべく、日夜さまざまなクルマを見て、触っている。映画に登場した車種 にも詳しい。自動車文化を育てた、カーガイたちに憧れ、自らも洒脱に乗りこなせる男になりたいと願う。