新しい出会いがあるたびに、「優しそうな人」「仕事ができそうな人」と、その見た目から相手のことを、自分なりに判断しますよね。ではこの第一印象、たった2秒で決まっていることを知っていますか? 出会った瞬間にポジティブな印象を与えることができれば、仕事もプライベートも、うまく進むことが多くなるでしょう。

しかし2秒で感じ取れるのは、目に映ったことだけ。第一印象で損をしないためには、自分の人柄と魅力を外見で表現しなければなりません。そこで百貨店・三越で約10万人ものお客に接客した経験を持ち、現在は国際イメージコンサルタントとして活躍する吉村ひかるさんに、服選びのルールを教えてもらいました。周りから大切にされる女性になるためにも、服装から印象を変えていきましょう。

■服で自分の印象を変える3つのステップ

店頭に並ぶ服
店頭に並ぶ服

吉村さんは、身につける服によって、自分の「なりたいイメージ」に近づくことができると話します。服で印象を変えるためには、まずは以下の3つのステップを実行していきましょう。

(1)どうなりたいのか、自分の目指すゴールを決める

(2)目指す姿に近づけるような服を身につける

(3)ふるまいを変える

まずはしっかり自分と向き合い、「なりたいイメージ」「目指す自分の姿」を明確にすることが大切になるとのこと。具体的には、自分をどんなイメージで表現したいのか、周りからどんな印象を持ってもらいたいのか、自分をどう見せたいかを徹底的に考えます。

ハッキリと浮かばない場合には、「女優の〇〇のようになりたい」「職場の〇〇先輩に憧れる」といったことから、なりたい姿をイメージしてもよいそうです。

そこから、目指す姿に近づく服を選んでいきます。そのときには、目標とする芸能人のスタイルブックやSNS、なりたい系統のファッション雑誌などからコーディネートを参考にするのも有効だといいます。そうすることで「これはやってみたい」「これは好き、嫌い」というポイントが、わかってくるのだとか。

また服を選ぶとき、「私の雰囲気には合わないだろう」などと、選択肢を自分で狭めていませんか?

吉村さんのイメージコンサルティングのメニューのひとつに、お客に同行し、その方が望むイメージの服やアクセサリーなどを選べるようにサポートする「買い物同行」があるそうです。

「一番よくないのは、勝手に自分のイメージを決めてしまうこと。買い物同行をするときには、お客様に『とにかくたくさん着てください』と伝えます。普段は試着をしてしまうと断るのが大変だから…という理由で、『これは似合いそう』『買ってもいいかな』と思えるときしか、試着をしない方が多いです。しかし買い物同行では、『似合わないときには私が代わりに断るので、どんどんいろんな自分を見てください』と言います。実際に着てみると『こんな自分もいたのか』『意外と似合っている』と、新しい自分の発見につながります」(吉村さん)

自分で判断するのが難しい場合は、正直に意見を伝えてくれる家族や親しい友人に聞いてもよいでしょう。

またシチュエーションから、伝えたい自分を表現する方法もあるそうです。例えば、大切なお客様との打ち合わせの日は「信頼感を伝えるために上質なジャケットを身につける」、新人社員の集まりに顔を出すときには「親しみやすさを伝えるために、少しやわらかいデザインの服を身につける」、といった具合に、もたれたい印象をイメージすることができますよね。

そして「ふるまいも目に映るもののため、見た目に入ります」と吉村さん。着ている服とともに、ふるまいも見た目を左右する大きな要素になるのです。

例えば、立ち方がキレイな人、言葉遣いが美しい人など、周りにいる素敵なふるまいができる人を思い浮かべてください。その人たちを真似することから始めることで、自分のふるまいも丁寧になっていくといいます。

さらに服は、着ている人の行動にも影響を与えているそうです。

「パーティドレスを着れば、動きが丁寧になったりしますよね。自分を高めてくれる服を買うと、ふるまいも少し変わります。例えば男性が大切な商談のときに上質なスーツを着ると、服に負けてはならないと、堂々とふるまえたり、自信をつけたりすることができます」(吉村さん)

服装を変えることで、相手に与える印象が変わるだけでなく、自分自身も磨かれていくのです。

■トップスの「襟の形」を変えるだけで大違い!

丸襟のカットソー
丸襟のカットソー

服を選ぶとき、襟の形を意識していますか? 実は、ジャケットの襟によっても、印象を操作することができるといいます。

きちんとした印象を与えたい日には、ノッチドラペルノの襟または、ピークドラペルの襟。もっとやわらかい印象にしたいときには、ショールカラー。一番ソフトな印象を与えるのは、丸襟になるとのこと。

襟の形一覧。左にいくほどソフトな印象、右にいくほどシャープな印象を与える
襟の形一覧。左にいくほどソフトな印象、右にいくほどシャープな印象を与える

吉村さんは「相手の職業や、相手がどんなお客様かで、服をアレンジしてみましょう」とアドバイスします。

例えば、営業をする相手が年配の方の場合は、きっちり過ぎるピークドラペルよりは、やわらかい印象を与えるショールカラーのジャケット。またビジネスマン相手に商談や打ち合わせをする場合は、ピークドラペルやノッチドラペルにするなど、相手に合わせたものを選んでいきましょう。

さらにジャケットに合わせるインナーによっても、印象を変えることが可能。例えば、V字に開く襟はすっきりとした印象になり、ボウタイ襟はソフトな印象に加え、エレガントさを演出できます。

「直線と曲線で考えてみてください。直線であればあるほどシャープになり、曲線が入れば入るほどソフトになります。人は直線にはインパクトを感じ、曲線には優しさを感じるのです」(吉村さん)

つまり曲線のジャケットに曲線のブラウスを合わせれば、とてもやわらかい印象になるということ。また同じ襟のジャケットをいくつも持っているよりも、ソフトな印象のジャケットと、シャープな印象のジャケット、襟の違うインナーをそれぞれ持っていれば、コーディネートの幅もグンと広がり、シーンによって使い分けることができるでしょう。

■少しずつ変身したいときは「インナーから」

ベーシックカラーのインナー
ベーシックカラーのインナー

また、クローゼットを見ると、同じ色のインナーが並んでいませんか? ホワイトやブラックといったベーシックカラーで済ませている人も多いでしょう。

少しずつ変わっていきたい、自分自身でじっくり変化を確認しながらチェンジしたいという人は、インナーの色を変えてみるとよいそうです。

ホワイトはピュアなイメージを発信するため、司会役などにも適したカラー。ブルーやネイビーは、爽やかなイメージを持たれるため、会議や話し合いの場など、決め事が発生するときに最適。

イエローやオレンジは、親しみや温かみのあるイメージを発し、友好関係を築きたいときや、小さな子どもを相手にするときに向いているカラーになります。シーンに合わせて上手に色を選んでいきましょう。

インナーは、ジャケットをはおった際に見える部分が限られるので、好みやトレンドを取り入れやすい部分。ブラウスやシャツの色で変化をつけることを考えると、ジャケットは黒、紺またはグレー、白などのベーシックカラーがおすすめとのこと。ジャケットはいくつもそろえられないため、仕立てがよいものや上質なものを選び、インナーで雰囲気を変えてゆくのがよいそうです。

「昼間は仕事でノッチドラペルのジャケットを着ていて、仕事後にそのまま食事会に行くときには、インナーだけ着替えるのもよいでしょう。白のブラウスから、優しい印象を与えられるピンクのインナーに変えるだけで、印象は変わりますよ」(吉村さん)

色だけでなく、インナーの形や素材の変化を加えることで、さらにバージョンアップができるとのこと。

素材でいえば、パリッとしたければ、コットンやリネンシャツ。エレガントを希望するときは、シルク。かわいらしさを出したいときには、フリルやギャザーが付いたインナーが考えられるそうです。

インナーの色や素材のバリエーションを広げることで、自分のイメージを自由に変えることができるでしょう。

 

見た目が、第一印象を決めてしまいます。「誤解されやすい」「近寄りがたいと言われる」などと悩んでいる方は、もしかすると、服の選び方が間違っているのかもしれません。自分の人柄と魅力をわかりやすく伝える手段が、服装です。周りから大切にされたければ、外見から自分を伝えていきましょう。

吉村ひかるさん
国際イメージコンサルタント、株式会社BEST GRADE代表取締役
(よしむら ひかる)服への思いが強く、東京女子大学と文化服装学院をダブルスクールで卒業後、(株)三越(現・三越伊勢丹ホールディングス)に入社。2010年、国際イメージコンサルタントの資格を米国で取得して独立。AICI国際イメージコンサルタント協会認定国際イメージコンサルタント(Certified Image Professional)日本支部ボードメンバー、文部科学省認定一般社団法人パフォーマンス教育協会公認エグゼクティブ・パフォーマンス・インストラクター、文部科学省後援色彩検定1級取得。
『女は服装が9割』著・吉村ひかる 毎日新聞出版刊
この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
ILLUSTRATION :
舘野啓子
WRITING :
椎名恵麻