お礼状やお祝い、おくやみなど、挨拶状というのはある程度の定型がありながらも、季節やその人らしさを織り込まないと気持ちがこもって見えないという、やっかいな存在。

作家・青木奈緖さん

作家の青木奈緖さんの担当編集者が気持ちを伝えることばに感動したのが、青木さんからのメールの文末にあった、つい書きがちな「ご自愛ください」ではなく、「ご機嫌よくいらっしゃいますように」ということば。相手をおもんばかりつつ、余韻があって、心に残ることばですよね。

この文末ことばのような「自分らしい言い回し」はどうやったらできるのか、青木さんに教えてもらいました!

ご自宅でインタビューに応じる青木奈緖さん

自分が書いたものの蓄積がいちばん役立つ

ご自身のことを「面倒くさがり」という青木さんは、挨拶状を手書きする前の下書きを、パソコンに全部保管してあるのだそう。そのずらりと並んだ礼状のファイルというのが、とても役にたつのだとか。

「礼状や冠婚葬祭、込み入った内容のお手紙は苦労して書きますよね。その苦労を、一度きりで無にしてしまうのはもったいないと思うんです。あのときは、〇〇さんに何をどう書いたっけ、なんて参照できるから、とても役にたつんです。時候の挨拶なんか、桜が咲いたり、若葉のころになったり、ぐるぐるめぐっているんですけどね(笑)。人からいただいたもので、気になる表現があったりすると、礼状ファイルに足したりもしています。ウェブに載っている挨拶状の例文を参考にするのもいいですけれど、自分に蓄積があって見返すことができれば、少しずつアレンジも加えられます。毎回ゼロから考えなくてもいいと思うんです」(青木さん)

青木奈緒著、小学館刊『幸田家のことば 知る知らぬの種をまく』


意外にも、合理的な方法で「自分らしい言い回し」を管理していた青木さん。この柔軟性も、幸田家の教えにかなっているのかもしれません。

関連記事:「幸田家のことば」から学ぶ、生きるための哲学、心意気

BOOK
『幸田家のことば 知る知らぬの種をまく』
著/青木奈緖 発行/小学館 ¥1,500(税別)
小学館 楽天ブックス Amazon
 
この記事の執筆者
東京・小石川生まれ。大学卒業後、オーストリア政府奨学金を得てウィーンへ留学し、足かけ12年ドイツに滞在。1998年に帰国して『ハリネズミの道』でエッセイストとしてデビュー。『動くとき、動くもの』、『幸田家のきもの』、小説『風はこぶ』や絵本の翻訳『リトル・ポーラベア』シリーズなどの著書を持つ。幸田露伴は母方の曾祖父、幸田文は祖母にあたる。 好きなもの:寝ること、食べること、猫、犬、植物、読書、オペレッタ、戦前のドイツ映画、歌舞伎、三味線、きもの、料理、お茶、家でゆっくりすること 撮影/五十嵐美弥(人物)
クレジット :
撮影/大畑陽子 構成/安念美和子