新国立劇場開場20周年のシーズンを締めくくるオペラは、イタリア・オペラの至宝プッチーニの『トスカ』。19世紀ローマを模した荘厳重厚な舞台や衣装が素晴らしい、新国立劇場のレパートリーの中でも屈指の人気を誇る作品となっている。

新国立劇場 開場20周年記念公演『トスカ』

トスカ歌いとして世界中から高い評価を受けるキャサリン・ネーグルスタッド

 19世紀末から20世紀にかけてのオペラ史に、リヒャルト・シュトラウスと並んでその名を残すジャコモ・プッチーニは、『マノン・レスコー』、『ラ・ボエーム』、『蝶々夫人』、そして『トスカ』をはじめ、遺作『トゥーランドット』に到る12の粒ぞろいのオペラ作品を遺している。

 プッチーニのオペラの特徴は、旋律が流麗で、とにかく音楽が美しいこと。なかでもこの『トスカ』は、“おいしい思いができるオペラ”といわれるほど全編に有名なアリアが散りばめられている。つまり、歌声のエンターテインメントとして、歌手の存在を存分に楽しめる作品なのだ。

19世紀ローマを模した荘厳重厚な舞台も見どころ

新国立劇場「トスカ」2015年公演より 撮影:寺司正彦
新国立劇場「トスカ」2015年公演より 撮影:寺司正彦

 エンリコ・カルーソーならビゼー作『カルメン』のドン・ホセ、マリオ・デル・モナコならヴェルディ作『オテロ』のオテロ、マリア・カラスなら同じくヴェルディの『椿姫』のヒロイン、ヴィオレッタ、といった風に、歴史的なカリスマ歌手たちは得意とする役柄をもっていた。それらの役は、幾度となく舞台で演じられ、多くの観客たちを魅了した。

 もちろん、現在活躍するオペラ歌手にも自らが得意とする役があり、この役ならあの歌手!と評される“当たり役”がある。今回の新国立劇場の『トスカ』でヒロインのトスカを歌うのはキャサリン・ネーグルスタッド。同役は彼女が最も得意とし、世界中の名門歌劇場で絶賛を博してきた、まさに彼女の当たり役。キャスティングに彼女の名前が挙がった段階で期待に胸躍らせたオペラ・ファンも多いだろう。

新国立劇場「トスカ」2015年公演より 撮影:寺司正彦
新国立劇場「トスカ」2015年公演より 撮影:寺司正彦

 幼少の頃から歌手になることを夢見ていたというキャサリン・ネーグルスタッドはアメリカ出身。舞台に立つようになったきっかけはミュージカルだったが、声楽を学ぶうちにオペラの虜になり、勉学の場をヨーロッパへと広げる。そして、2006年にドイツ芸術省より宮廷歌手の称号を授与され、同年、ドイツのオペラ雑誌Opernwelt誌で、最優秀女性歌手に選出されるなど、めきめきと頭角を表していった。そんな中で、トスカ役は、ウィーン国立歌劇場、パリオペラ座、チューリヒ歌劇場、英国ロイヤルオペラなど、数々の名門劇場で演じてきている。来日直前にも、ウィーン国立歌劇場の舞台でトスカを歌った。

 そして、なんと新国立劇場へは今回が初登場。誰もが待ちわびる、あの有名なアリア「歌に生き、恋に生き」を、ネーグルスタッドはどのような思いを込めて歌ってくれるのだろうか。

「幕が上がった瞬間から、ただひたすらトスカの心情になり、トスカとして彼女の運命を歩み、第二幕のその場面に至ったときの思いで歌います。それが、このアリアだと考えています。私自身のトスカに対するアプローチや解釈も、年月を経て変遷しています。新国立劇場の舞台においても、過去のものとは決して同じものにはならないでしょう。オペラ、そして、芸術の醍醐味はそこにあるのではないでしょうか」とその思いを語っている。(新国立劇場・情報誌『ジ・アトレ」のインタビューより)

新国立劇場「トスカ」2015年公演より 撮影:寺司正彦
新国立劇場「トスカ」2015年公演より 撮影:寺司正彦

 オペラ『トスカ』はローマを舞台に、政治犯をかくまう画家カヴァラドッシと、彼に一途に恋をする歌姫トスカにふりかかる悲劇の物語。登場人物それぞれが愛の心情や欲望に全身全霊をかけて対峙していく激しいドラマが、たった1日の出来事として描かれる。緊迫した展開、それを彩るメロディアスな音楽の数々。幕の上がった瞬間から観客は深く舞台に引き込こまれていく。そして、幕が降りるころには、歌姫キャサリン・ネーグルスタッドの虜になっているにちがいない。

■新国立劇場開場20周年記念特別公演 2017/2018シーズンオペラ
『トスカ』【全3幕/イタリア語上演 日本語字幕付】
公演日:2018年7月1日(日)~15日(日)
会場:新国立劇場 オペラパレス/東京都渋谷区本町1-1-1

問い合わせ先

■2018/2019シーズンラインアップももご覧ください。
http://www.nntt.jac.go.jp/opera/variety/

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この記事の執筆者
音楽情報誌や新聞の記事・編集を手がけるプロダクションを経てフリーに。アウトドア雑誌、週刊誌、婦人雑誌、ライフスタイル誌などの記者・インタビュアー・ライター、単行本の編集サポートなどにたずさわる。近年ではレストラン取材やエンターテイメントの情報発信の記事なども担当し、ジャンルを問わないマルチなライターを実践する。