ご存知のように、自動車教習所では運転免許取得に必要な知識と技術しか学ぶことができない(一部の教習所ではテーマ別の運転講習会を行っているが)。免許取得後は、自発的に学習しない限り、腕を磨く機会はない。運転技術を客観的に理解し、クルマを安全に楽しく操るなら、自動車ブランドが主にオーナーを対象に開催するドライビングレッスンに参加するのがいい。レクサスのイベントに参加した記者が、その魅力をリポートする。

インストラクターには小林可夢偉氏も!

小林可夢偉氏(左端)をはじめ、現役のトップドライバーがインストラクターを務める豪華なイベント。適切なドライビングポジションを保ちながら、ピットインした時に、いかにかっこよく見せるかという「小ネタ」も披露してくれた。
小林可夢偉氏(左端)をはじめ、現役のトップドライバーがインストラクターを務める豪華なイベント。適切なドライビングポジションを保ちながら、ピットインした時に、いかにかっこよく見せるかという「小ネタ」も披露してくれた。
プリンシパルを務めた木下隆之氏は、レーシングドライバーとしての活動も豊富な、ベテランのモータージャーナリスト。機械としてのクルマを評価する分析力もさることながら、見た目重視で豪快なクルマを好むわかりやすさが魅力でもある。
プリンシパルを務めた木下隆之氏は、レーシングドライバーとしての活動も豊富な、ベテランのモータージャーナリスト。機械としてのクルマを評価する分析力もさることながら、見た目重視で豪快なクルマを好むわかりやすさが魅力でもある。

 レクサスはこれまでにさまざまなテーマを設けてドライビングプログラムを実施してきた。場所はサーキットだけでなく、離島の特設コースだったり、雪道だったりとさまざま。プログラムにはリゾート施設での宿泊も含まれていて、クルマを核にライフスタイル全般への提案に力を入れる、レクサスならではの世界を満喫することができる。

 今回体験したプログラムのステージは、富士スピードウェイ。レクサスの高性能モデル「F」シリーズが登場して10年という節目を記念した、特別企画だ。前日に御殿場のホテルにチェックインし、エンジニアも同席してのディナーがすすむなか、インストラクター陣が登場するとひときわ大きな歓声が上がった。F1参戦経験をもつ小林可夢偉氏をはじめ、現在活躍中の現役レーシングドライバーが勢揃いしたのである。

 記者の隣に着席されたのは、2018年、スーパーGTのGT300クラスにレクサス・RC Fで参戦中の新田守男氏。御年51歳の大ベテランである。若手時代の思い出を楽しそうに話してくれた新田氏に(きっと辛いことの方が多かったはずなのに!)、長きにわたって活躍されるうえで大切な条件をうかがってみると、「視力」だと教えてくれた。新田氏は昔も今も驚異的な視力を保っているそうで、年をとっても視力だけは運転に支障のないレベルを維持したいと痛感した次第。

「LCF」をはじめとする「F」シリーズが整然と並ぶ、富士スピードウェイのピットレーン。
「LCF」をはじめとする「F」シリーズが整然と並ぶ、富士スピードウェイのピットレーン。

雨の富士ストレートを走る!

約1,500メートルのメインストレートを走る。雨で視界が悪く、恐怖感は相当なもの!
約1,500メートルのメインストレートを走る。雨で視界が悪く、恐怖感は相当なもの!
慣熟走行でライン取りを学び、あとは隊列を積んで走りまくる。インストラクターのペースは絶妙で、かなり本気で走ることができた。
慣熟走行でライン取りを学び、あとは隊列を積んで走りまくる。インストラクターのペースは絶妙で、かなり本気で走ることができた。

 楽しい前夜祭を過ごした翌日は、朝から富士スピードウェイへ。富士山麓という立地にあるために天候の急変が多いサーキットだが、当日は朝から雨だった。プリンシパルの木下隆之氏を中心に、インストラクター陣が注意事項を説明する。そして、いきなりコースイン! これはプリンシパル木下氏の「とにかく楽しむこと」を汲み取った本イベントの大きな特徴であり、先導車両を運転するコーチ陣もけっこうなスピードで加速して行くので、うかうかしていると置いて行かれる。

 記者が運転したのは、主に「RC F」。富士の本コースを走るのは久しぶりということもあり、はじめは抑え気味にしていたが、上りのテクニカルセクションを難なく駆け上がっていくそのパフォーマンスの高さに、徐々にアクセル開度が大きくなっていく。それでもメインストレートで200km/hを超えると、さすがに怖かった。降り続く雨のせいもあるし、何よりも1コーナーの進入を考えると、アクセルペダルを踏み込む足を緩めずにはいられないのだ。

本気で遊べるから楽しい!

特設コースでの旋回走行の様子。簡単にドリフトアングルがつくりだせるので、誰もがクルマの挙動変化を体感しながら運転を楽しめる。
特設コースでの旋回走行の様子。簡単にドリフトアングルがつくりだせるので、誰もがクルマの挙動変化を体感しながら運転を楽しめる。

 本コースでの走行を終えたら、パドック前に移動。ここにはパイロンを立てた円形の特設コースがあるのだ。参加者に課せられたのは、いわゆる定常円旋回走行。後輪駆動の「RC F」を使い、ドリフト状態にもっていきながら、その状態でくるくる回れたら合格だ。路面が濡れて摩擦が低い状態なのに加え、簡単にオーバーステア(クルマの鼻先が内側に向く状態)をつくりだせるように、後輪につるつるのカバーをはかせてあるため、ちょっとアクセルを強めに踏むだけでカウンターステアにもっていける。

 これが実に楽しかった。本コース走行のように高速でコースアウトする恐れがないこともあり、アクセルとステアリング操作に集中できる。そして、きれいな旋回を続ければ、インストラクターから無線で「お見事!」とお褒めの言葉が。一般参加者も最初は戸惑い気味だったが、慣れるにつれて派手なドリフトアングルをつくりだし、楽しそうに走っていた。

 ちなみに、今回の参加者はレクサスオーナーだけでなく、レクサス車に興味のあるオーナー予備軍も多かった。地味な練習を繰り返すのではなく、さりとて競争めいた息苦しさもないメニューは、ビギナーにとって安心が高いうえ、正しいテクニックを身につけるうえでも効果は高い。向上心さえ失わなければ、運転技術は生涯を通じて磨かれていくもの。レクサスへの興味を深めることも含めて、ご興味ある方はぜひ参加されたし!

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この記事の執筆者
男性情報誌の編集を経て、フリーランスに。心を揺さぶる名車の本質に迫るべく、日夜さまざまなクルマを見て、触っている。映画に登場した車種 にも詳しい。自動車文化を育てた、カーガイたちに憧れ、自らも洒脱に乗りこなせる男になりたいと願う。