大人の女性として、心得ておきたいマナーは数多くあります。しかしいざその場面が来ると、どのようにふるまうべきか迷うこともありますよね。

コラムニストの石原壮一郎さんは、広く常識とされるマナーだけでなく、周りと一歩差をつけるワンランク上の”最強マナー”を身につけることで、大人としての対応力をアピールできるといいます。

そこで今回は石原さんから、「最近の冠婚葬祭ですると評価が高まる行動」についてお聞きしました。事前にマナースキルを磨いておき、あなたの人間関係力をより高めていきましょう。

「結婚式」「披露宴」で大人の対応力が上がる行動3選

■1:親しい相手には「気合いを入れて」招待状の返信はがきを飾る

凝りに凝ったはがきを出そう!
凝りに凝ったはがきを出そう!

結婚式や披露宴への招待状が届いたら、「返信用はがきの『御』や『芳』を二重線で消す」「なるべく早く返信をする」というのは広く知られたマナーです。

披露宴に招かれたときの”最強マナー”となるのが、気合いを入れて「返信用はがきを飾って送り返す」こと。返信用はがきの段階から、セレモニーは始まっているといいます。

「相手にとって、一世一代の晴れ舞台。祝福してほしいという相手の気持ちに応えるのが、一歩踏み込んだ”最強マナー”です。心の底から喜んでいる、祝福していることを形にして見せましょう」と石原さん。

祝福のメッセージを書き添えるだけでなく、親しい相手に対しては、はがきをカラフルにデコレーションしたり、イラストを描いたり、お祝いのシールを貼ったり……。はがきの余白を使って、結婚式に招待されてうれしい、ふたりを祝福したいという気持ちを伝えたいですね。

■2:ご祝儀は「お祝いさせてもらえる」と感謝しつつ、渡す

幸せな気持ちを分けてくれたことを喜ぶこと
幸せな気持ちを分けてくれたことを喜ぶこと

親族や友人の結婚式だけでなく、仕事関係の披露宴に招かれることも多いでしょう。ご祝儀は、社会人としての付き合いを考えると必要なコストですが、「正直ちょっと痛い出費だな」と思ってしまうこと、ありませんか?

石原さんは「ご祝儀は『義務』だから仕方なく出すのではなく、お祝いの輪の中に入る『権利』だと考えてください」とアドバイスします。

受付でご祝儀を渡す際には、新郎新婦の新しい門出を「お祝いさせてもらえてありがたい」という気持ちで渡すことが、大人の気合いであり、本当の意味での祝福になるといいます。

「気乗りしない結婚式も、楽しまないと損、という気持ちで臨みましょう」(石原さん)

受付では、満面の笑顔で「本日はおめでとうございます」などと祝福の言葉を添えて、ご祝儀を渡したいですね。

■3:披露宴では同じテーブルの「知らない人とも積極的に話す」

祝いの席はその場を楽しむことが大事!
祝いの席はその場を楽しむことが大事!

披露宴で、知らない人ばかりのテーブルにポツンと座ることになってしまったら、あなたならどのように考えますか? 「次の料理早く来ないかな」「気まずいから早く終わらないかな」などと思えば、つまらない披露宴になってしまうでしょう。それでは、招待してくれた新郎新婦に対しても、失礼になります。

ここでの”最強マナー”は、知り合いがいない席でも、積極的に話しかけ、お祝いの気運を高めること。「いい披露宴」にするには、ひとりひとりの心がけが大切になるといいます。

披露宴の出席者は、新郎または新婦の知り合いであり、共通の話題を持っています。例えば、隣の席の人が新婦と小学校の同級生だということがわかれば、「A美さんって、小学生のころはどんな子だったんですか?」と話題を振ることができます。このように相手と新郎新婦との関係から、話題を広げていくとよいそうです。

「自分の知らない、新郎新婦の一面をしることができるのは、楽しいですよね。それに同じテーブルの人に積極的に話しかけ、テーブル全体が楽しかったという空気をつくり出せれば、自分の自信にもつながります」と石原さん。

招待されたからには、思いっきり楽しむ姿勢で臨むことが、主役である新郎新婦と自分自身に対するマナーになるでしょう。


「葬儀」で大人の対応力が上がる行動5選

■4:通夜も告別式も参加できない場合は「弔電を打つ」

続いては、葬儀で求められる大人の対応をご紹介します。

葬儀には参列できればよいですが、遠方に住んでいたり、事情があったりと、難しいこともあるでしょう。通夜も告別式も参列できない場合は、「喪主宛てに弔電を打つこと」が、ワンランク上のマナーになるとのこと。電話やインターネットで手配できるため、告別式の前日までに届くようにしましょう。

「例えば親しい友人の親御さんが亡くなったときには、慰めたいと思うし、葬儀に参列できないときには、後ろめたさを感じます。弔電を打つことで、悼む気持ちを形にすることができます。強く印象にも残り、友人との絆も深まるでしょう」と石原さん。

やむを得ない事情で葬儀に出られない場合は、弔電を手配し、相手側に誠意を伝えましょう。

■5:訃報を受けた瞬間は「驚きや困惑の気持ちを表現」する

思いきり悲しむことはマナーのひとつ
思いきり悲しむことはマナーのひとつ

身内や友人から訃報を受けたときは、心から悲しいと感じても、会社関係の訃報は、故人をあまり知らないケースも多く、それほど感情的に悲しくならないこともありますよね。

しかし大人として、そのような本音は隠さなければなりません。悲しんでいる遺族や関係者に寄り添い、死を悼むのが、故人の人生への敬意を示すことになるといいます。

「大人だから落ち着かなければならないと、訃報を受けたときも、冷静に対応してしまうかもしれません。しかし落ち着き過ぎていても、相手は『この人は悲しくないのね』という気持ちになってしまいます。『えっ』と驚き、3秒ほど時間をおいて、『急ですね』『何と言えばいいのか……』と、平常心を失っていることを表現するのもよいでしょう」(石原さん)

淡々とお悔やみの言葉を伝えるのではなく、訃報を受けた瞬間は、驚きや困惑の気持ちを表現することが大切なのです。

■6:香典は「袱紗(ふくさ)」に包んで持っていく

香典には「新札を使わない」というのは常識ですが、これに加えて必要となるのが、袱紗に包んで持っていくこと。

「マナーは、余分なことをどれだけやるかというところがあります。結婚式にしろ、お葬式にしろ、その場にふさわしい服装で行くのは決まりごとで、わざわざ手間がかかることをしています。香典もそのまま渡していいところを、袱紗に包んで持参することで、より相手に敬意や気持ちを示すことができます」と石原さん。

香典を袱紗から取り出すことで、きちんとした振る舞いができる人であることを、周りにもアピールできるでしょう。

■7:お悔やみの言葉は「不明瞭に伝える」

できるだけハキハキと伝えない
できるだけハキハキと伝えない

葬儀の場面では、いつも以上に繊細な心遣いが求められます。通夜や告別式では、テキパキした動きはあまりよくありません。肩を落として、ゆっくり行動する必要があるとのこと。

「お悔やみの場面でふさわしいとされる言葉も、スラスラ言ってしまえば、悲しくて残念という気持ちは伝わりません」と石原さん。

遺族に直接お悔やみの言葉を伝えるときには、「このたびは……、本当に……」とモゴモゴ話すことが、求められている大人の対応であり、思いやりになるといいます。

故人や遺族の気持ちに寄り添い、節度のある行動を心がけましょう。

■8:知らない人とも、故人の思い出を話し合う

個人を知る人々と一緒に故人を悲しむこと
個人を知る人々と一緒に故人を悲しむこと

通夜の後に、お酒や食事が振舞われることがあります。そこは、飲み食いをすることが目的ではありません。

石原さんは「故人についてみんなが思い出したり、惜しんだりする場なので、参加をするのなら、役割を果たさなければなりません」と指摘します。

周りの人と「本当に惜しい人を亡くしましたね」「早すぎますね」と言い合うことも、大切な追悼の儀式であり、ふさわしい振る舞いになるのです。

最後に石原さんから「冠婚葬祭では、大人として何ができるか、どう振る舞えるかを意識しないと、中途半端に慣れてしまうだけです。向上心を持ち、自分を鍛えるチャンスだと思って挑んで欲しいですね。マナーがきちんとしている人は、周りから頼りにされる、この人なら安心だという安定感を与えることができるでしょう」とのアドバイスをいただきました。

こういったマナースキルを磨くことは、プライベートでも仕事上でも、自分の武器になります。ワンランク上のマナーを身につけて、周囲から信用される女性になりましょう。

石原壮一郎さん
コラムニスト
(いしはら そういちろう)1963年三重県松阪市生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、大人のあり方や素晴らしさをさまざまな媒体で発信。著書及び監修本多数。
『本当に必要とされる最強マナー』石原壮一郎・著 日本文芸社刊
この記事の執筆者
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WRITING :
椎名恵麻
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