水着の上にTシャツを着用し、さらにホースのシャワーなどで透けて体に張り付くと、途端にエロスが増す(ももちろん大人の女性の話です)。とはいえ、現実にそんな光景に出くわすことはまずない。男の妄想である。だから、われわれは映画に夢を見る。「ザ・ディープ」に出演していたジャクリーン・ビセットは、そんな妄想男子の宝箱だ。

巨大生物よりも大事なものが拝める「ザ・ディープ」

どちらかというと、大人になってからその魅力を再認識する知的美女だ。ちなみに2018年8月現在、73歳。結婚歴なし。写真:Globe Photos/アフロ
どちらかというと、大人になってからその魅力を再認識する知的美女だ。ちなみに2018年8月現在、73歳。結婚歴なし。写真:Globe Photos/アフロ
肉体派女優というわけではないのに、実はナイスバディ、というのがジャクリーンのポイント。写真:Shutterstock/アフロ
肉体派女優というわけではないのに、実はナイスバディ、というのがジャクリーンのポイント。写真:Shutterstock/アフロ

 ブードゥー、濡れT、巨大ウツボ。この3つのキーワードを聞いて、「ザ・ディープ」(1977年)を思い浮かべる人は、まさにディープな映画好きだ。「ジョーズ」(1975年)で始まった動物系パニック映画は「スクワーム」(1976年・ミミズの群れが大暴れ)、「グリズリー」(同・ハイイログマが大暴れ)、「オルカ」(1977年・シャチのおっかさんが大暴れ)と続き、「ザ・ディープ」も同じ系譜に属する、と思わせた宣伝戦略が功を成し、そこそこのヒットを記録した。「ジョーズ」でサメ狩りの達人を演じたロバート・ショウが出演しているのも、彼と対決する凶悪な海の動物が登場することを予感させた。

 それが巨大ウツボだったのだが、出演シーンは2カットでしかも一瞬。大きさを判別する余裕も与えない俊敏さで、観客のため息を誘った。だが、この映画を駄作とこき下ろす声は、少なくとも筆者の同世代の知人では皆無だ。なぜなら当時の紳士予備軍にとって、巨大生物よりも100倍貴重なものがしっかりと拝めたからである。すなわち、ジャクリーン・ビセットの濡れT姿である。

 バミューダ諸島で夫(ニック・ノルティ)とハネムーンを楽しむ新妻役のジャクリーン。紺碧の海に心をほぐされたのか、彼女は沖合でのスキューバダイビングに臨む際、ノーブラ・Tシャツ姿で潜る。さながら映画の前半は、水に濡れて豊かな胸をくっきりと浮かび上がらせたジャクリーンのイメージビデオだ。

執拗なボディチェックも見逃すな!

潜水中、ウツボに驚き急浮上するところを夫に止められるジャクリーン。危うく潜水病にかかるところだった。写真:Shutterstock/アフロ
潜水中、ウツボに驚き急浮上するところを夫に止められるジャクリーン。危うく潜水病にかかるところだった。写真:Shutterstock/アフロ
1971年の映画「シークレット」(写真は無関係)では、胸をあらわにしたベッドシーンが拝める。写真:Photofest/アフロ
1971年の映画「シークレット」(写真は無関係)では、胸をあらわにしたベッドシーンが拝める。写真:Photofest/アフロ

 見せ場はそれだけではない。夫婦は海底で偶然見つけたあるものを巡って、暗黒街の輩たちとのトラブルに巻き込まれる。そして夫が海に潜り、ホテルのベッドで休むジャクリーンの前に敵が現れる。なぜか珍妙なお面を被って! 恐怖で声も出ないジャクリーンの寝間着をはだけ、お面の男は彼女の体にあるものを這わせる。それはなんと「ニワトリの脚」だった! 血のついた脚で半ば彼女を陵辱する様は、実にエロティックだ。もっとも、筆者は初見時にそれがブードゥーの儀式だとは気づかず(そもそもブードゥーはハイチなのでは?)、ある種の変態プレイかと思っていたのだが…。

「ザ・ディープ」には、ほかにも暗黒街の輩による執拗なボディチェックのシーンがあるなど(ジャクリーンの太ももに手を這わせる男がとんでもなくいやらしい表情を見せる)、明らかに彼女の魅力で勝負しようという制作側の意図が伝わってくる。母方がフランス系で、知性と品格あふれる美貌を誇りながら、派手さで勝るアメリカの女優の陰に隠れがちだったジャクリーンにとっても、寸止めの露出なら挑戦してもいいという気持ちだったのだろう。

 大人になったいま観直しても、正統派美女が垣間見せるエロスの香りは健在だ。

この記事の執筆者
男性情報誌の編集を経て、フリーランスに。心を揺さぶる名車の本質に迫るべく、日夜さまざまなクルマを見て、触っている。映画に登場した車種 にも詳しい。自動車文化を育てた、カーガイたちに憧れ、自らも洒脱に乗りこなせる男になりたいと願う。