SUVが街に溢れかえるようになると、今度はもっと他人とは違うスタイルを試したくなる。そんなユーザーの欲求に応えるべく、いまドイツの自動車ブランドは、こぞってなだらかなルーフラインのクーペ風SUVに力を入れている。BMWのX4は、日本の道でも走りやすいミドルサイズのクーペSUVだ。秋頃の日本導入に先駆けて、モータリングライターの金子浩久氏が新世代モデルをテストした。

クーペの美しさと居住性の両立を追求!

日本の道でも扱いやすいミドルサイズのX4が、国産車並みの短いスパン(約4年半)で2世代目に進化。これはプラットフォームを切り替える事情もあるのだろうが、クーペスタイルのSUVが世界中で人気を集めているのも理由だろう。
日本の道でも扱いやすいミドルサイズのX4が、国産車並みの短いスパン(約4年半)で2世代目に進化。これはプラットフォームを切り替える事情もあるのだろうが、クーペスタイルのSUVが世界中で人気を集めているのも理由だろう。
一番美しいのは、斜め後ろから見たスタイル。先代よりも屋根の傾斜はなだらかになったが、クーペらしさはむしろ強まったように思える。
一番美しいのは、斜め後ろから見たスタイル。先代よりも屋根の傾斜はなだらかになったが、クーペらしさはむしろ強まったように思える。

 どうやら、SUVは一時的な流行ではなく、ひとつのジャンルとして定着したようだ。

 BMWもその例外ではない。「X」というSUVのシリーズを拡充し続けている。シリーズは、現在、X1、X2、X3、X4、X5、X6と、なんと6つものモデルが展開されている。

 そして、BMWは、世間の「SUV」という呼び方ではなく、X1とX3とX5を「SAV」、X2とX4とX6を「SAC」と呼び分けてまでいる。

 SAVとは「Sports Activity Vehicle」の略で、SACとは「Sports Activity Coupe」の略だ。

 奇数のXモデルが基本的なSUVであるのに対して、偶数のXモデルはそれぞれをベースとして4ドアクーペとして仕立て上げられている。つまり、X2はX1の、X4はX3の、X6はX5のクーペ版であり、スポーティモデルなのだ。

 画像を見てもらえばわかるように、偶数版の3つのモデルは奇数版の4ドアクーペ版に相当している。もちろん、以前はX5を始まりとして、X3を続け、アッという間にここまでラインナップを拡充させてきた。

 その中でも人気のX4がフルモデルチェンジされたので、製造が行われているアメリカのサスカロライナ州スパータンバーグとその近郊の山道で乗って来た。

 新しくなったX4は、外見が大きく変わった。先代X4がX3に対して、リアウインドの傾斜がとても強くされ、クーペスタイルを強調していたのに対して、新型はリアウインドの傾斜はなだらかになり、クーペテイストは弱まったように見える。

 全長は81ミリ長くなり、全幅は37ミリ広くなった。ボディが大きくなったことと併せて開発陣が強調していたのは、後席スペースの拡大と運動性能のさらなる向上だった。

「リアのレッグルームは27ミリ伸ばしましたし、リアトレッドはプラットフォームなどを共用しているX3よりも30ミリ広げました」(X4開発責任者のヨアヒム・ドゥンケル氏)

 実際に腰掛けてみると、レッグルームだけでなく天井からの圧迫感が小さくなった。頭を屈めずに乗り降りできることも改められた点のひとつだろう。

 ただ、そうやって車内の広さや乗降性を追い求めていくと、X3との違いがなくなっていってしまう。X4らしさを、どこにどうやって盛り込むのか。

山道を走るのがこんなにも楽しいとは!

クローズドコースで激走する金子氏。優れた動力性能に加え、操縦性も素晴らしい。
クローズドコースで激走する金子氏。優れた動力性能に加え、操縦性も素晴らしい。
ダッシュボードの高さを抑え、開放感を増したコクピット。
ダッシュボードの高さを抑え、開放感を増したコクピット。
ボディサイズを拡大し、特に後席やラゲッジに余裕を持たせた。新型X4の日本発売は2018年秋の予定で、価格は700万円台前半からとなる見込み。
ボディサイズを拡大し、特に後席やラゲッジに余裕を持たせた。新型X4の日本発売は2018年秋の予定で、価格は700万円台前半からとなる見込み。

 ガソリンの4気筒ターボエンジンを搭載する「X4 xDrive20i」で走り始めると、まず、エンジンの優秀性に気付かされた。アイドリングから6000回転以上まで、実にスムーズで、どこからでも瞬時に加速を行う。かっちりと仕立てられたボディと相まって、静粛性の高さも上質感を高めるのに貢献している。優れたエンジンがクルマ全体の魅力を高めるというのはこれまでのBMWに共通する特質だったけれども、新型X4もその例外ではない。

 制限速度が時速50マイルの郊外の一般道を流すような状況では、走行モードをコンフォートに設定すると乗り心地が優しく柔らかくなるのだが、アダプティブモードも好ましかった。状況に応じてサスペンションも引き締まるので、舗装の荒れた道などで重宝した。

 そして、大小さまざまなコーナーが連続する山道では、スポーツモードとスポーツプラスモードがX4の美点、つまりスポーティで上質な運動性能を引き出していた。

 ハンドリングは機敏になり、サスペンションはコーナーでの踏ん張りを効かせ、トランスミッションはエンジンが最もパワーを発揮するギアを次々と選択していく。

 スポーツやスポーツプラスモードでは、ブレーキングも歴然と違ってくる。下りストレートの先にコーナーが控えていて、その手前で強めにフットブレーキを踏むと1段シフトダウンする。もっと強く踏むと、2段シフトダウンするのだ。つまり、BMWのスポーツモデルシリーズの「M」モデル各車のように、フットブレーキによってもシフトダウンをコントロールすることができるのである。X4はまるでM3のように、山道を駆け巡った。こんなSUVは他に知らない。

 ディナーの席で、前出のドゥンケル氏にそのことを質すと、大きく頷いて次のように答えた。

「その通りだ。X4はオンロードでの運動性能を第一に開発した。未舗装路やオフロードなども4輪駆動システムであるxDriveを進化させた」

 新型X4は、外観こそ先代のイメージを希釈させたように見えるが、運動性能には磨きが掛かり、さらにスポーティになった。X3との違いは歴然としている。ミディアムサイズのSUVはたくさんあるけれども、オンロードでの走りっぷりを求めるならば、X4はその選択の最右翼に挙がるだろう。

この記事の執筆者
1961年東京生まれ。新車の試乗のみならず、一台のクルマに乗り続けることで得られる心の豊かさ、旅を共にすることの素晴らしさを情感溢れる文章で伝える。ファッションへの造詣も深い。主な著書に「ユーラシア横断1万5000km 練馬ナンバーで目指した西の果て」、「10年10万kmストーリー」などがある。