いわゆる“コロニアルなアイテム”のなかで、気軽に上質なカジュアルを楽しめるのが、サファリジャケット。今回のピッティでは、多彩に進化したタイプが登場した。シャツの名門ブランド“G.イングレーゼ”と、レザージャケットの仕立てに特化した“リフージョ”から、極上のサファリジャケットを紹介する。

多彩に進化したサファリジャケット

G.イングレーゼの1枚仕立てのリネンジャケット

深みのあるグリーンのサファリジャケット。
深みのあるグリーンのサファリジャケット。

 今回、“G.イングレーゼ”のブースで真っ先に目に入ったのが、シャツではなく、サファリジャケットだった。リネン素材の乾いた表面感と、メランジ調の深みのあるグリーンが実に品のいい色合い。シャツづくりを踏襲する軽やかな手縫い仕立てが、肩周りの縫製やそで付けから伝わる。ディテールを見れば、マルティンガーラ(バックベルト)の左右の端にボタンを配した粋な仕様に加え、4つのパッチポケットは手縫いならではの味わい深い表情、爽やかな白蝶貝のボタンを鳥の足形に似せた「ザンパ・ディ・ガッリーナ」という方法で縫い付けるなど、手仕事の技巧を凝らす。1枚仕立てによる軽快な着用感は、絶品である。

リフージョの極薄スエードジャケット

ナポリ仕立てのスエードジャケット
ナポリ仕立てのスエードジャケット

 もう一方は、しなやかなスエード素材の一着。今回2度目の出展となるブランド“リフージョ”のもの。“リフージョ”とは、1973年に創業した、レザー素材のみでナポリ仕立てを表現するサルトリアだ。ヴェズーヴィオ山の麓、ポンペイに工房を構える小規模なつくり手だが、これまでも多くの有名ブランドのレザージャケットを製作。ファッション業界のプロたちに知らない者はいない、イタリア屈指のレザー素材に特化した仕立ての名手である。

 鮮やかなオレンジが印象的なサファリジャケットは、0.2㎜という極薄に削いだベビーカーフのスエード素材を使った驚愕の仕立て。ジャケット型のエレガントなラペルなど、スポーティななかに正統的な味付けを加えるのもうまい。

 極上のレザー素材と軽やかなスタイル、そして注目の「ビタミンカラー」が美しいバランスで融合したアイテム、それがこのサファリジャケットだ。

ヴィットリオ矢部の第94回ピッティ・ウォモレポート公開中

この記事の執筆者
ヴィットリオ矢部のニックネームを持つ本誌エグゼクティブファッションエディター矢部克已。ファション、グルメ、アートなどすべてに精通する当代きってのイタリア快楽主義者。イタリア在住の経験を生かし、現地の工房やテーラー取材をはじめ、大学でイタリアファッションの講師を勤めるなど活躍は多岐にわたる。 “ヴィスコンティ”のペンを愛用。Twitterでは毎年開催されるピッティ・ウォモのレポートを配信。合わせてチェックされたし!
Twitter へのリンク