パリのメトロ4号線、サンジェルマン・デ・プレ駅の周辺はドゥ・マゴ、カフェ・ド・フロール、ブラッスリ・リップといった、アーネスト・ヘミングウェイとは縁のある店ばかり。そこから西へ進むと「アルニス」がありますが、この高級ブティックもまた、ヘミングウェイとの因縁あさからぬ店です。

ヘミングウェイの旅スタイルに込められたダンディズム

旅先でも揺るがないお洒落を楽しんでいた

ヴェニス、パリ、バスク、ハバナ…と、旅をこよなく愛したヘミングウェイはまた、旅スタイルの名手でもあったのか?写真:GRANGER.COM/アフロ
ヴェニス、パリ、バスク、ハバナ…と、旅をこよなく愛したヘミングウェイはまた、旅スタイルの名手でもあったのか?写真:GRANGER.COM/アフロ

1930年代はジャンポール・サルトル、ジャン・コクトー、パブロ・ピカソといった才気煥発な男たちのサロン的存在。63年前にル・コルビジェが注文したジャケットが定番で、いまも名店でありつづけているわけですが、では、ヘミングウェイが「アルニス」で注文したものはなにか?3代目の店主ジャン・グランベールさんは、お父上で先代のレオンさんからきいた話としておしえてくれました。

「第二次大戦が終結した直後に『アルニス』を訪れたヘミングウェイは、数枚のシャツをビスポークされています。当時、お客さまにはシャツ生地を持参いただいていました。物資不足の時代ですからね。ヘミングウェイが持ってきたなかに、ファンシィな色あいのハワイアンタイプの生地があったそうです。これは、父も店のだれもがはじめて見るものだったので記憶している、といっていました」

稀代のダンディズム作家はモダニストでもありますから、アルニス製といえどもハワイアンシャツをパリで着るはずはない。街で着る服ではないですから。やはりキューバか、あるいはニースかヴェニスあたりの旅先で着るつもりだったのではないでしょうか。

さて、旅スタイルをどうするか?ヘミングウェイは旅先にあわせてスーツだったりサファリだったりと、お洒落を楽しむ心得と余裕のある男だったようですが、ぼくは汎用性があるという小市民的な理由で、カーディガンのようなジャケットを選びます。なにより軽快だから旅にふさわしいし、タイドアップすればソーシャルな場でもさまになります。とはいえ、これもヘミングウェイを手本にしているわけですが――。ともあれ、旅をしましょう。

この記事の執筆者
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MEN'S Precious編集部 
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MEN'S Precious2010年夏号表紙の秘密より
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WRITING :
大住憲生
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