社内でも社外でも、自分より上の世代の人と会う機会は多いもの。しかし、いざ話すとなるとなかなか会話が弾まず、気まずくなることもありますよね。とくに親子ほど年齢差があると、お互いの話題や感覚のズレがどうしても気になるもの。では、かなり年上の相手と打ち解けるには、どうすればよいのでしょうか?

アドリブトークの専門家・渡辺龍太さんに悩みをぶつけたところ、相手が年上の場合は「相手に興味をもってあげることにエネルギーを使うことが大事だ」と回答いただきました。

自分の話を熱心に聞いてもらえると気持ちがよいのは、どの世代の人でも同じです。年長者の話は退屈という先入観を捨てて耳を傾ければ、年上の人から目をかけてもらえる人になれるはず! さっそく以下から、渡辺さんに教えていただいた、年上の相手との関係を深められる気配りの一言を紹介していきます。

かなり年上の人とも「楽に関係が深められる」一言5選

■1:「若手より◯◯ですね!」

年配者が若手には勝てないと思っているところを褒めよう
年配者が若手には勝てないと思っているところを褒めよう

他人から褒められるのは気分がよいもの。誰かのふとした一言で、自分の才能や魅力に気が付けるということもあるでしょう。優れていると思うポイントを褒めるのは、年上の相手とのコミュニケーションにおいても有効な手段。

渡辺さんは「年配の人は若手のことを、仕事ができないと思い込んでいる一方で、若さや新しい物事への対応力などでは完全に負けたと思い込んでいます」と指摘します。

「だからこそ、年配の方々に『若手より体力ありますね』、『若手よりスマホを使いこなしてますね』などと年配の人が若手に勝てないと思っている部分で、その人が勝っている部分を褒めてあげましょう。

ポイントは、噓は厳禁ということです。噓で年上を褒めても、言われた人も馬鹿ではないので、すぐに嘘だと気付き、馬鹿にされたような気分になる可能性があります。ですから、相手をよく観察して、本当に若手に勝っていると感じる部分のみを褒めましょう」(渡辺さん)

自分が人に知られないところで努力していることに気付いてもらえれば、喜びもひとしおですよね。ただし心にもない褒め言葉でおだてるのは逆効果。年長者への尊敬の気持ちを忘れずに。

■2:「名前は聞いたことがあります。何でしたっけ?」

質問して相手に説明させると関係を深めやすい
質問して相手に説明させると関係を深めやすい

プライベートの会話の最中に、自分が知らない・興味がない話題が持ち上がったとき、どのように反応していますか? 相手との関係性によっては「そんなこと知らない」「興味がない」と素直に返してしまう人もいるかもしれませんね。ですが、ビジネスシーンでの年長者が相手の場合は、注意が必要です。

「年上の人は、年下の人も知っていると思って、昔の流行などに関する話をよくします。そのときに知ったかぶりをすると、テキトーにゴマをする若手と思われてしまう可能性あり。しかし、正直に『知りません』を連発しても、相手は若い人と話が噛み合わないとスネてしまいます。

ですから『それ、名前は聞いたことがあります。何でしたっけ?』などと質問を返して、年上の相手に説明させましょう。人は他人に自分の知っていることを説明するのが大好きなので、楽しそうに語り出すはずです。同時にあなた自身の見聞も広まりますので、なるべく肯定的な気持ちで、興味をもって相手の話を聞きましょう」(渡辺さん)

自分が知らなかった年長者の話題は、裏を返せばそれまで知り得なかった新しい情報ということでもあります。相手がどんな人物なのか、何が好きなのかを知るチャンスでもあるので、積極的に質問し、耳を傾けてみましょう。相手の説明をきっかけに話題を膨らませれば、より会話が弾むはずです。

■3:「(笑いながら)何てことを言ってるんですか!」

ツッコミ言葉で年配者を楽しませる
ツッコミ言葉で年配者を楽しませる

仲の良い同僚や友人のグループの中には、みんなから冗談を言われるいじられキャラが大抵いるものですよね。適度ないじりであれば場の空気が和みますし、ムードメーカーとして周囲から愛されます。

ビジネスシーンでも、いじる・いじられるというコミュニケーションはよくありますが、まだあまり親しくない年上の相手からいじられたとき、どう対応すればよいか分からず、困ってしまったことはありませんか?

「年上の人は年下の人と距離を縮めようと、相手をいじるような冗談を言うことがあります。それに対して、あなたはどんなツッコミをするべきか分からず戸惑っていたとしましょう。するとシラけた空気が流れ、冗談を言った年上の人は『私がパワハラしていると思われているの?』と不安になってきてしまいます」と渡辺さん。

「そういうときのために、自分の使いやすい丁寧なツッコミの言葉をひとつ用意しておくと安心です。もし言葉が思いつかなければ、笑いながら『何てことを言ってるんですか!』とツッコミを入れてみましょう。ただし、いじられるのが苦手な人は、安易にこの言葉を使わないように。一度ウケてしまうと、ずっといじられ続ける羽目になってしまうかもしれません」(渡辺さん)

普段から仲間内でいじられ慣れている人なら、相手のノリに合わせてツッコミが返せるでしょう。その際、あまり砕けた調子になりすぎると軽い若手に見られてしまうので要注意。

逆にいじられ慣れていないなら、丁寧な言葉でツッコんだ後に、やんわりといじられるのが苦手だと伝えるようにしましょう。ツッコむべきところではきちんと対応しつつ、いじられキャラが定着する前に手を打つことが大切ですね。

■4:「念のためにご報告しておきますね」

自分の考えを提示することが重要
自分の考えを提示することが重要

職場で上司から報告・連絡・相談=報連相を徹底するように叩き込まれた人は多いはず。企業での意思決定権は立場が上の人物にありますので、現場で動いている部下からの報連相がないと、適切な指示が出せなければイレギュラー対応もままなりません。そうかといって、言われたとおりに報連相したら「自分で考えろ」と叱られた……なんて苦い経験はありませんか?

「年上の上司に、安易に『これって、これで良いんですよね?』と、疑問形で報連相をすると『自分の頭で考えて!』と逆鱗に触れてしまう可能性があります。そんなときに便利な言葉が『念のためにご報告しておきますね』です。『ここまでの仕事は、こうしておきました。ですから、これ以降は、◯◯しておくつもりです』という形で報連相をすれば、自分で考えて動いていることを伝えられます。

コロコロ気が変わる年上の上司なら『一応確認なんですが……』などと言葉を変え、要所要所で上司の意向を確認しながら仕事を進めていきましょう。こうしておけば、急なちゃぶ台返しのような厄介な事態を避けることができます」(渡辺さん)

報連相したのに怒られるというのは、理不尽なようにも感じられますが、問題なのは伝え方なのです。「ここまではこうしました」と報告し、「これ以降はこうします」と連絡、もし必要であれば「○○なのでこうしようと思うのですが、いかがでしょうか」などと相談しましょう。状況と疑問点をきちんと伝えれば、上司はアドバイスをくれるはずです。

■5:「◯◯さんはこういうとき、どうされたんですか?」

年配者の経験談を引き出してみよう
年配者の経験談を引き出してみよう

仕事を進めるうえでのヒントやアドバイスが欲しいとき、気軽に相談できる相手はいますか?

職場に仲の良い同僚や先輩がいれば聞きやすいでしょう。けれど、ちょっと話しかけづらい年上の上司が相手で、しかも怒られた後にどうしても質問しなければならないとしたら、どうでしょうか……。

「年上の人に、仕事のことで怒られたり、嫌な顔をされたりする場面は、誰でも経験があるはずです。そういうときに、言える雰囲気であれば『◯◯さんは、こういうときどうされたんですか?』と聞いてみましょう。

もちろん、これを言ってもっと怒られることもあると思います。しかし、人は自分に対して興味を持ってくれた相手に対して、悪い感情を抱くことはありません。ですから、それを言うだけで仕事ができない嫌な部下から、可愛げのある後輩へと印象が変わる可能性があります」(渡辺さん)

「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」という言葉があるように、年上の上司に質問をするのは勇気がいるもの。ですが、一時の恥をグッとこらえて質問すれば、きっと相応の見返りが得られます。

ここまでは会話の流れで発する一言でしたが、こちらから話題を振る場合はどうすればいいのか? 渡辺さんは、簡単な文章を書く習慣をつけることを勧めています。これにより、即興の会話力を上がっていくそうです。

「あるテーマに沿って400~500文字程度の文章を書いてみると、即興の会話力を上げられます。テーマは今日見た映画の感想など、何でも構いません。ここで重要なのは、即興で勢いよく文章を書くという点です。

即興の会話が苦手な人は、サクサク書けないか、もしくは書き終えてから読み返すと、同じことを繰り返していたり、書いた内容がよく分からなかったりするはずです。このトレーニングを意識的に繰り返すだけで、即興でも論理的に話すことができるようになります」(渡辺さん)

アドリブの会話力は、必ずしも天性のものではなく、日々の訓練次第で誰でも身に付けられます。年上の相手から思わぬ話題を振られたとき、うまくしゃべれないという人も、一度チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

年上の相手と会話する場面では、少なからず委縮してしまうものです。そんなとき大切なのは、その人に興味を持って接すること。さらに本記事の一言を駆使すれば、年長者から好かれる若手になれるはずですよ!

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渡辺龍太さん
アドリブトークの専門家
(わたなべ りょうた)欧米の即興トーク術「インプロ」の専門家として、ビジネスマン向けの会話力の指導やインプロに関する書籍を執筆。放送作家でもあり、テレビやラジオ、CMなどの構成のほか、新聞や雑誌への寄稿も行う。著書に『1秒で気のきいた一言が出るハリウッド流すごい会話術』(ダイヤモンド社)などがある。
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この記事の執筆者
TEXT :
Precious.jp編集部 
2018.10.23 更新
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WRITING :
上原純