16世紀ごろに流行したファッションが起源とされるブートニエール。ジャケットのラペルにあるボタンホール(仏語でブートニエール。英語でブトニエールは「飾り花」を意味する)に花を挿す。

中世ヨーロッパの伊達男たちが気まぐれにはじめたかもしれないこの流行は、お抱えの仕立て屋に、ラペルの裏に花の茎を挿し固定するためのループをつけさせたり、花をしおれさせないよう、銀細工師にフラワーホルダーをつくらせたりなどしながら、男の服がフロックコートからラウンジスーツに移行する時代のなかにあっても枯れることなく、いまも伊達男のファッションとして存在しています。

伊達男のダンディズムは華麗なラペルの一輪の花にあり!

ケイリー・グラントのジェントリーなブートニエールスタイル

1950年代を代表する名優で、ウェルドレッサーのグラントは、ブートニエールを愛用した伊達男でもあった。ダブルブレストでもシングルブレストでも、タキシードにも、ボタンホール(=仏語ブートニエール)に、カーネーションなどの花(=英語ブートニエール)を挿していた。このボタンホール、努々社員章をつける穴などと思うなかれ!写真:Shutterstock/アフロ

ブートニエールを1冊の本に仕立てたのは、元ブリオーニ当主のウンベルト・アンジェローニさん。その『The Boutonniere Style in One's Lapel』の表紙は、赤いカーネイションをブートニエールにしたケイリー・グラント。

おなじ英国人で演技派俳優のローレンス・オリヴィエをして「演出にたよることなく、映画の観客に『このひとのようになりたい』と思わせることができる唯一の俳優」といわしめたそうですから、ブートニエールのお手本としても申し分ないということのようです。

さてブートニエールの図版として最古のものは、1760年代の英国で「マカロニ」とよばれた若者の集団を描いた風刺画と本書はいいます。マカロニ青年は貴族の子弟で、グランドツアーで訪れたイタリアにかぶれたファッョニスタ。

風刺画のマカロニ青年は、ブーケのようなブートニエールをしていますが、かなり過剰です。グラントの一輪挿しの洒脱さとは対照的。ブートニエールはファッションです。ま、趣味といってもいい。だから目的なんかもってはいけない。まちがいなく無粋になります。

ブーケだろうと一輪挿しだろうと好きにすればいい。定型はありません。バラでもマーガレットでも、ツイードのジャケットにならドングリなんかシャレていますね。さあ、ブートニエールを、ファッションをたのしみましょう。

この記事の執筆者
名品の魅力を伝える「モノ語りマガジン」を手がける編集者集団です。メンズ・ラグジュアリーのモノ・コト・知識情報、服装のHow toや選ぶべきクルマ、味わうべき美食などの情報を提供します。
Faceboook へのリンク
Twitter へのリンク