「300km/hを出せるSUV」という触れ込みのランボルギーニ・ウルスが、いよいよ日本でもデリバリーされる。といっても、すぐにステアリングを握れるのは、発表された前後にオーダーした少数の顧客のみ。そこで、アイスランドの過酷な自然を舞台に試乗を行った、ライフスタイルジャーナリストの小川フミオ氏のリポートをお読みいただきたい。スーパーカーブランドらしい仕掛け満載のウルスのリポートは、貴方の気持ちを昂らせるだろう。

氷河へ続く岩場も難なく走るランボルギーニ・ウルス

背後に広がるのはヨークルスアゥルロゥン氷河湖。
背後に広がるのはヨークルスアゥルロゥン氷河湖。
全長5112ミリ、全幅2016ミリ、全高1638ミリのボディに4リッターV8とフルタイム4WDシステムを搭載し、価格は2574万円。
全長5112ミリ、全幅2016ミリ、全高1638ミリのボディに4リッターV8とフルタイム4WDシステムを搭載し、価格は2574万円。
秋のアイスランドでは晴れていればオーロラがひと晩中見られる。
秋のアイスランドでは晴れていればオーロラがひと晩中見られる。

 新しい素材や新しいカッティングと、洋服の世界は日々進化している。クルマも同様だ。ひとことでSUVといっても、多様性に富むようになった。最新の注目すべきモデルが「ランボルギーニ・ウルス」である。

 2018年に発表された、ランボルギーニが定義するところの「スーパーSUV」だ。478kW(650馬力)の最高出力と850Nmの最大トルクを持つ4リッターV8エンジンに、フルタイム4WDシステムの組合せで、最初の国際試乗会はサーキットで行ったということからも、いかにもランボルギーニ的なSUVと知れる。

 いっぽうで、ウルスの実力はオンロードだけではない、とランボルギーニではさきごろ、アイスランドで乗る機会を提供してくれた。首都レイキャビクから下に降りて、アイスランド南部を海岸線を反時計回りに走るのがルートである。

 10月のアイスランドはもはや冬だった。ウルスの車載外気温計はほぼ摂氏0度を示している。路面の凍結マークも出ているし、試乗の途中では吹雪にも襲われた。強い雪の向こうに見える景色はほぼ真っ白。すごいところである。

 ウルスのおもしろさは、従来のSUV的なありかたに真っ向から挑戦しているところにある。高級SUVといえばランドローバーやレンジローバーがツイードのジャケットのようなオーソドクスさを感じさせる存在だとすると、ウルスはポーラテックアルパカのような最新技術の服といえるかもしれない。

 ポーラテックアルパカというより、外観的には、モバイルスーツのようである。ラインも面もディテールの処理も、まるでSF映画にぴったりだ。若い消費者への訴求を狙うだけに「強い印象は意図したこと」とアウトモビリ・ランボルギーニのステファノ・ドメニカーリCEOは語ってくれた。

 もとはフェラーリF1チームのプリンパルを務めていたドメニカーリCEOは陽気なキャラクターでも知られ、アイスランドの試乗では1台のウルスのステアリングホイールをみずから握り、終始笑顔で私たちジャーナリストの一団と行動をともにしていたのだった。

 ウルスは、ドメニカーリCEOの自信たっぷりの笑顔の裏付けとなる出来のよさだった。アイス&スノーのタイヤを履いてさえいれば、積雪路面だろうが、火山灰が降り積もったアイスランド特有のブラックビーチだろうが、氷河へと続く岩場だろうが難なくこなす。

『アニマ(魂)』と名づけられたドライブモードセレクターには『SABBIA(砂地)』『TERRA(砂利道)』『NEVE(滑りやすい路面)』といったモードが設けられていて、トルクのコントロールやトルクベクタリングコントロールの介入度合いや、さらに車高も調整する。

 といっても、クルマでの進入が許されているアイスランドの道では、「ストラーダ」という一般道用のモードにしておけばなんの問題もなかった。タイヤの選択が正しければ、ウルスはフツウにどこでも走れてしまう。

ジェット旅客機のような加速G

内装にも六角形のモチーフが多用されている。
内装にも六角形のモチーフが多用されている。
溶岩の上に苔がはえて幻想的な風景になっている。
溶岩の上に苔がはえて幻想的な風景になっている。
300年前の氷に見入るドメニカーリCEO(左)。
300年前の氷に見入るドメニカーリCEO(左)。

 路面の状況がよければ、強烈な加速感も楽しめる。刻々と天気が変わるマイクロウェザーのアイスランドでは、時として陽光に恵まれ、路面が乾いていることもある。

 そのときは「待ってました」とアニマを『SPORT』に入れる。とたんにエンジン回転があがり、クルマがもし生き物であれば「むずむずしている」と表現したくなるような、トルクの高まりを感じるのだ。

 ランボルギーニとってはシルエット/ヤルパ(1976年−88年)以来になるV8エンジンはツインターボチャージャーを得て、強烈なパワーを発生する。メカニカルレイアウトは、シャシーを共用するアウディ(Q7とQ8)にならって、前車軸より少し前にエンジンを載せ、しっかり駆動力を確保するものだ。

 実際、2250rpmから850Nmというものすごく太い最大トルクを発生しはじめるだけあって、アクセルペダルを少し強めに踏み込めば、4輪に最適なトルクが分配される。ジェット旅客機の離陸時のようなGでからだが押さえつけられるほどだ。

 四輪駆動システムは、路面状況や走行状態に応じて前後のトルク配分を最適に調整するというものだ。後輪には最大で約8割、いっぽう前輪にはやはり最大で約7割のトルクが配分される。基本的には後輪を重視して走りを楽しませてくれる設定だが、オフロードでまったく不安がない。

 デザインは凝りに凝っている。これもランボルギーニ流のエクスクルーシブネスだ。ボンネットの切り欠きにもデザインが入っているし、六角形のモチーフはグリルから室内にいたるまで、あらゆるところに採用され、これも特別感を醸し出している。

 前席は快適で、操縦姿勢は楽チン。ステアリングホイールの径は小さめでそれなりにスポーティだ。その前に米国で試乗したロールスロイスのSUV「カリナン」が高級サルーンを意識したポジションだったのと対照的に、ウルスはスポーツカーメーカーのSUVであることを主張している。

 後席は基本的に2人乗りで、左右の席の間には大きなアームレストが備わる。電動でリクライニング機構もついていて、レッグルームも広く、4人でのドライブもまったく苦にならないだろう。

「アイスランドはウルスの可能性を試すのに完璧な場所でしょう」。ドメニカーリCEOの言葉どおり、南部のあらゆるところを見て回れた。そしていたるところで「ウルス! どう?」と笑顔で訊かれた。私の答えは「ほぼ完璧。自分のものだったら最高」であった。

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この記事の執筆者
自動車誌やグルメ誌の編集長経験をもつフリーランス。守備範囲はほかにもホテル、旅、プロダクト全般、インタビューなど。ライフスタイル誌やウェブメディアなどで活躍中。