江戸時代なら文政期! 1818年創業

ついこの間、どこかのグルメ雑誌で「1983年創業の老舗」という表現を目にして気が遠くなりました。35年で老舗ですか・・・。いや、もしかしたらこの移り変わりの激しい現代においては、ある意味では正しい表現なのかもしれません。だとしたら、このブランドはどうよ。そう、今からピッタシ200年前、1818年に創業したブルックス ブラザーズ。1818年ったらアンタ、日本においては江戸真っ盛り、アメリカでは西部開拓期のずっと前。『バック・トゥ・ザ・フューチャー Part3』の舞台だって1880年代ってんだから、その古さは推して知るべし。まだスーツもネクタイも生まれていない時代ですよ。

1818年当時、人口たったの12万5000人だったN.Y.でブランドを創業した、創業者ヘンリー・ブルックスの遺品。
1818年当時、人口たったの12万5000人だったN.Y.でブランドを創業した、創業者ヘンリー・ブルックスの遺品。

もうすぐ終わり! ブルックスの回顧展

そんなブルックス・ブラザーズの回顧展『—アメリカンスタイルの200年、革新の2世紀—』が、ただいま新宿の文化学園服飾博物館にて開催中ということで、僕も行ってきました。実はちょっと前にフィレンツェで同テーマの展示会が催されていたのですが、意外と「・・・これで終わり?」という内容で拍子抜けしていたのです。しかし今回のは本気。大充実です。

2013年公開の映画『グレート・ギャツビー』に提供した衣装。いわゆるロスト・ジェネレーションたちの間でもブルックスは絶大な人気を誇った。
2013年公開の映画『グレート・ギャツビー』に提供した衣装。いわゆるロスト・ジェネレーションたちの間でもブルックスは絶大な人気を誇った。

いかにして「アメトラが生まれたのか?

ブルックスといえばいわゆる「アメトラ」のイメージの象徴ですが、まだそんな言葉もなかった19世紀、そのスタイルはかなり英国的。エイブラハム・リンカーンが第二期大統領就任時に着ていたこちらのオーバーコートは、サヴィル・ロウ製だと言われてもわからないほどに構築的です。

こちらがエイブラハム・リンカーンのオーバーコート。裏地には「一つの国に一つの運命」と書かれたペナントを咥えた、鳥の刺繍が施されている。
こちらがエイブラハム・リンカーンのオーバーコート。裏地には「一つの国に一つの運命」と書かれたペナントを咥えた、鳥の刺繍が施されている。

しかしそんなブルックスも、アメリカという風土に合わせた独自のスタイルを、徐々に築き上げていきます。それは広い国土と急激な社会の発展に伴う、合理的な生産体制の確立と同義。1840年には既製品のスーツ、1898年には「ポロカラー・シャツ」=ボタンダウンシャツ、1915年には「NO.1サックスーツ」……と、現代的なワードローブを次々と「発明」。男のファッションを現代のように軽快なスタイルへと進化させたのは、このブランドといっても過言ではありません。

ポロを代表とするスポーツとは、切っても切れぬ縁を持つブルックス。写真奥のワードローブはかなり英国的。
ポロを代表とするスポーツとは、切っても切れぬ縁を持つブルックス。写真奥のワードローブはかなり英国的。
戦後のワードローブ。アメリカントラッドとはいえ、時代ごとに多様なスタイルが存在することがわかるはず。
戦後のワードローブ。アメリカントラッドとはいえ、時代ごとに多様なスタイルが存在することがわかるはず。

・・・なんて、服ヲタのみならず、歴史好きにとってもたまらない展示内容。11月いっぱいまでの開催となるので、ぜひ見逃さぬよう!

ブルックス ブラザーズ展

会期:2018年10月5日(金)〜11月30日(金)
会場:文化学園服飾博物館
住所:東京都渋谷区代々木3-22-7新宿文化クイントビル 1階
入館料:一般 ¥500 大学・専門学校・高校生 ¥300/小中学生 ¥200

この記事の執筆者
MEN'S Preciousファッションディレクター。幼少期からの洋服好き、雑誌好きが高じてファッション編集者の道へ。男性ファッション誌編集部員、フリーエディターを経て、現在は『MEN'S Precious』にてファッションディレクターを務める。趣味は買い物と昭和な喫茶店めぐり。