バーベキューはおいしいお肉や料理を楽しめるだけでなく、野外で焼いて食べるという、日常では味わえない楽しさもあります。そこへひと工夫すれば、よりラグジュアリーにバーベキューを楽しめます。まだまだ続くアウトドアシーズン! ぜひ今回の日本バーベキュー協会の会長、下城民夫さんからのアドバイスを参考にしてみてください。

バーベキューは「野外でお肉を焼くこと」ではなかった?

そもそも、バーベキューはどんな意味があるのでしょうか? 下城さんは次のように話します。

「実は、日本で行われているほとんどのバーベキューは、本当の意味ではバーベキューではないんです。日本では、バーベキューといえばアウトドア、キャンプの定番ですが、本来のバーベキューは『パーティー』の部類になります」

バーベキューはもともとパーティーだったとは驚きですね。

「欧米では、家の中でのパーティーはもちろん、ガーデンパーティーも頻繁に行いますが、その際によく食べるのがバーベキュー。結婚式の二次会、お誕生日パーティーにもバーベキューが開かれます。オシャレをして、料理もサラダや簡単なオードブルなどもありつつ、ステーキ、ハンバーグ、リブなどの肉料理、そしてデザートと進みます。お酒も缶ビールだけではなく、ワイン、バーボン、テキーラ、カクテルなど幅広く楽しみます」

日本ではただお肉と野菜を焼くだけでシンプルに終わることも多いですが、それと比べると欧米はやはりパーティーだけあって、豪勢ですね。

「また、パーティーは人と人とをつなげるコミュニケーションの場でもありますので、バーベキューの場では知らない人同士でもコミュニケーションを取るきっかけになるエンターテイメント性が必要です。例えば、大きなお肉を焼いて、みんなの前で切り分ける、オードブルを可愛くオシャレに演出する、音楽バンドやダンス、ゲームなどの余興を入れるといったことも欧米ではよく行われています」

バーベキューを盛り上げる基本の流れ

本場のバーベキューを知った今となっては、もっとバーベキューを華やかかつラグジュアリーに演出したいもの。まずはバーベキューを盛り上げる基本の流れを下城さんに教えていただきました。

流れを知ることでワンランク上のバーベキューを!
流れを知ることでワンランク上のバーベキューを!

■1:火起こしとオードブル提供を同時にスタート!

「バーベキューで最初に行うのは火起こしです。炭であれば、火起こしには少なくとも15分~20分、平均でも30~40分かかります。食材は焼く必要のあるお肉や野菜だけ準備すると、火が起きないと何も食べられない状態になります。そこで、焼かなくてもよい簡単なカナッペやピンチョスなどのオードブルを用意しながら火起こしをするとスムーズに始められます」

■2:火が起きたらまずはお肉を!

「火が起きたら、まずは、みなさんお肉が食べたいと思うので、ステーキなど早く焼くことができる肉料理を。グリルが数台あれば、ひとつ目を出すタイミングでもう一台で時間のかかる大きめのお肉をグリルに入れ、仕込んでおくのがポイントです」

■3:野菜を焼きながらソースづくり

「焼肉やステーキの次は野菜を焼き、野菜を焼きながら、バーニャカウダソースをつくり、バーニャカウダも楽しみましょう」

■4:会話やお酒でエンターテイメントタイム!

「このころになると、ある程度、お腹も満たされるので、会話やお酒とちょっとしたおつまみ、または、エンターテイメントを楽しみましょう」

■5:大きなお肉、シメのパエリア、デザートへ!

「しばらくしたら、時間のかかる大きなお肉が焼き上がるころ。シメのパエリア、そしてデザートといった流れはいかがでしょうか?」

ひと手間かかった一品は、場を一層ラグジュアリーな空間に。
ひと手間かかった一品は、場を一層ラグジュアリーな空間に。

肉のおいしい焼き方

バーベキューの主役であるお肉は、できるだけうまく焼き上げたいものですよね。お肉をおいしく焼くコツを教えていただきました!

●基本の焼き方

「BBQグリル内の半分は炭を積み上げ、半分は炭のない状態にします。分厚い牛ステーキは表面をBBQグリルの温度200度以上の強火で両側表面を焼き固めるので、炭のある方の強火のところで両側表面を焼きかため、肉汁を中に閉じこめます。その後、炭のない保温エリアで、お好みのレア、ミディアム、ウェルダンに焼き上げます」

●鶏や豚の焼き方

「鶏や豚などは、肉の中心温度を70度以上に上げないと菌が死滅しないので、炭のないエリアで、蓋のあるグリルであれば、蓋をしてカバーしながら、もし蓋がなければ、ステンレスボールや深さのあるアルミフォイルトレイで蓋をしながら、時間をかけて焼きます。すると仕上がりもジューシーになります」

●大きなお肉の切り分け方のコツ

「大きなお肉でも、良く切れる包丁を使えばそれほど大変ではないので、ぜひトライを。大きいお肉を焼いた後に、みんなの前で豪快に切り分けると、それだけで場が盛り上がります」

見てよし、食べてよしの大きなお肉は、盛り上がること間違いなし。
見てよし、食べてよしの大きなお肉は、盛り上がること間違いなし。

バーベキューにラグジュアリー感を出す具材

バーベキューを豪華に演出するためには何がおすすめなのでしょうか。おすすめ食材や料理をピックアップいただきました。

料理にこだわり、素敵な時間を。
料理にこだわり、素敵な時間を。

【食材】
・牛肉のトマホークステーキ
・Tボーンステーキ
・リブアイロール
・神戸や松坂の和牛
・フランス牛

【豪快さや華やかさのある料理】
・牛のイチボを使ったシュハスコ
・牛のショートリブ
・トマホークステーキ
・ポークリブ
・ラムラック
・プランク シダーサーモン
・ブラジルの生ソーセージ
・丸ごと鯛
・サーモンの半身を木の板の上にのせて焼く プランク料理
・バーニャカウダ
・パエリア
・マシュマロフルーツバス

どれもパーティーにぴったりの食べ応え、見応えのあるものばかりですね。ぜひ参考にしてメニューを決めましょう!

バーベキューグリル選びのポイント

ところで、バーベキューにラグジュアリー感を出すにはどんなグリルがおすすめなのでしょうか?

●フタ付きのバーベキューグリル

「いま、日本ではフタのない焼肉用のグリルが一般的ですが、フタのないフラットグリルは、焼肉や焼きそば、焼きおにぎりぐらいしかできません。しかし欧米ではフタのあるバーベキューグリルのほうが主流です。

フタがあると、バーベキューグリルもオーブン効果で、丸鶏やローストビーフ、豚のリブ、分厚いステーキ、サーモンの半身焼き、ケーキやパエリアなど大きな塊肉を焼くことができます。

さらに、桜の木の塊やりんご、ぶどうなど、果物の木を湿らせて、炭の上に置いてフタをすると、肉や食材にスモークをかけることができます。日本にもここ3年ぐらいで、アメリカのバーベキューグリル会社であるWeber社のバーベキューグリルが正式に輸入されるようになり、フタ付きバーベキューグリルが日本にも少しずつ認識されるようになりました」

欧米で主流のフタ付きのバーベキューグリル。
欧米で主流のフタ付きのバーベキューグリル。

●ガスグリル

「ラグジュアリーなグリルですと、Weber社のガスグリルなどもよいでしょう。見た目もスタイリッシュでかっこいいです。ガスグリルは、炭を起こす手間や灰の後片付けをする手間がないので、簡単にバーベキューができ、後片付けもラクなので女性でも気軽です。ガスでもスモークもできますし、炭で焼いたときとさほどおいしさも変わらないですよ」

お皿やカトラリーでバーベキューのラグジュアリー感を出すには?

下城さんによると、お皿やカトラリーでも、ラグジュアリー感を演出できるのだそう。

■1:割れないアクリル製がおすすめ

お皿やワイングラスで華やかに。
お皿やワイングラスで華やかに。

「テーブルクロスやカトラリー、お皿やワイングラスなどにこだわるとよいと思います。どうしても紙皿、紙コップになりがちですが、ゴミにもなりますし、誰のかわからなくなったり、風で飛ばされたり、何より見た目が貧相です。

だからといって、アウトドアメーカーのキャンプのときに使うお皿やカップでは、アウトドア・キャンプの雰囲気になり、可愛らしさ、華やかさに欠けてしまいます。そこでおすすめなのが、割れないアクリルの可愛いお皿やカップ、ワイングラスなど。ラグジュアリー感のある模様付きなどもいいかもしれません」

■2:参加者に持参してもらう

「参加者の方にマイ皿、マイ箸、マイカップを持ってきてもらうのもおすすめです。『それ可愛い!』『どこで買ったの?』など コミュニケーションのきっかけにもなりますしね」

■3:テーブルクロスを敷く

「バーベキュー場に据え置きされている木のテーブルや、プラスチックのテーブルにもテーブルクロスを一枚敷くだけで、華やかになります」

■4:外国の炭を使う

「キングスフォードの炭などの外国の炭を使うとパッケージもオシャレですし、火がつきやすく、高温度なのでバーベキューもしやすくおすすめです」

■5:ファッションもパーティー仕様に

「服装は、汚れるからといって地味にせず、結婚式のようなドレスまではいかずとも、カジュアルパーティーに行くような少し気取った服装にしたり、あえてドレスコードを決めて、ウエスタンハットにブーツのカウガールスタイル、ハロウィンスタイルなどにしたりしてみんなでそろえるのも楽しいバーベキューになります」


いかがでしたでしょうか。ラグジュアリーなバーベキューは、ちょっとした工夫で実現できそうです。ぜひ一から準備して凝ってみるのもよいのでは?

下城民夫さん
アメリカのBBQコンテスト国際審査員の資格KCBSジャッジ資格保持者、アメリカのステーキコンテスト国際審査委員の資格STEAK COOKOFF ASSOCIATIONジャッジ資格保持者。
(しもじょう たみお)広告代理店(電通関西支社)からアウトドアジャーナリスト(アウトドア情報センター)に。アウトドアジャーナリスト時代に、世界のさまざまな国へ取材に出た際、海外のBBQに触れ、日本のBBQの文化度の低さに驚き、日本にも正しいBBQの文化を浸透させようと2006年に日本バーベキュー協会を設立。「スマートBBQ」を提唱し、日本に新たなBBQ産業を根付かせ、発展を目指すため、2007年から日本初のBBQに関する資格取得検定「BBQ検定」を開始。2018年現在、BBQ検定を受検し、BBQの正しい知識を持つ検定合格者は日本全国約10,000名となる。昨今は本場アメリカBBQコンテストに日本チーム「BBQ SHOGUN」として出場中。2017年アメリカカンザスティで開催された「AMERICAN ROYAL WORLD BBQ Championship」ではポーク部門役420チーム中15位と大健闘。
この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
石原亜香利