みずみずしさと甘酸っぱさがクセになるみかん。寒い冬にこたつで食べるみかんは特に格別で、冬の風物詩ともいえます。今の時期が旬といわれるみかんはビタミンCやビタミンA(β-カロテン)などの栄養価が高く、手でむけばすぐ食べられる手軽さもうれしい、身近な果物です。

一方で、保存方法を間違えるとカビが生えてしまったり、皮がしおれてしまったりなんてことも。そこで今回は長年柑橘類の研究をされている、農業・食品産業技術総合研究機構の長谷川美典さんに家庭でやりがちなみかんが劣化するNG行動について伺いました。

みかんが劣化する4つのNG行動

■1:暖かい場所に置きっぱなしにするのはNG

リビングやコタツの上に置きっ放しにするのはNG
リビングやコタツの上に置きっ放しにするのはNG

「昔は家の中も寒かったので、こたつの上などに置きっぱなしでもさほど問題なかったのですが、今はどの家庭も暖房が入っていることが多いですよね。人にとっての適温は、みかんにとっては暑い状態なんです」(長谷川さん)

長谷川さんによると、みかんを保存する際の適温は5〜10度くらい。できるだけ涼しく風通しのよい玄関や納戸などに置くようにしましょう。

■2:裸のままで保存するのはNG

湿気や乾燥はみかんの大敵
湿気や乾燥はみかんの大敵

みかんをおいしく保存するうえで温度と同じくらい大切になるのが「湿度」です。乾燥しすぎるとパサパサに、ジメジメしすぎるとカビの発生原因になります。常温保存では新聞紙をかぶせ、冷蔵保存の場合はポリエチレンの袋に小分けにして野菜室に入れるなど、乾燥や湿り気からみかんを守ってあげましょう。

※常温、冷蔵、冷凍保存のオススメ方法を後ほどご紹介します。

■3:ヘタを上にして保存するのはNG

正しい向きとは?
正しい向きとは?

みかんのヘタの部分には軸があり、そこから水分が出やすいそう。ヘタの部分を上に向けて置いておくと、特に空気中の湿度が低い冬場は、どんどん水分が出て乾燥してしまいます。ヘタを下に向けておけば、乾燥しにくくなるのでおすすめです。

■4:箱買いしてそのまま保管するのはNG

箱にたくさん入っているみかんを買ってきて、そのまま保存していませんか?
箱にたくさん入っているみかんを買ってきて、そのまま保存していませんか?

箱買いした際に一番下にあるみかんは、上のみかんの重みで圧迫されてしまいます。箱買いしたみかんは5段ほど積まれた状態で入っていますが、買ってきたらすべて出し、2~3段くらいになるようにしましょう。

また、みかんを箱から出すときの扱いも要注意です。転がしたり、たくさん重ねたりと雑に扱うのはNG。乱暴に扱うと、すぐに傷み、劣化してしまいます。みかんに傷ができると、その部分からカビが生えやすくなるので気をつけましょう。

【まとめ/みかんが劣化する4つのNG行動】
1:暖かい場所に置きっぱなしにする
2:裸のままで保存
3:ヘタを上にして保存
4:箱買いしてそのまま保管

正しいみかんの保存方法

みかんを保存する場合、常温、冷蔵、冷凍の保存方法があります。それぞれのおすすめの保存法や注意点を教えていただきました。

■1:常温保存

常温保存では、湿気と乾燥を防ぐために新聞紙を使いましょう
常温保存では、湿気と乾燥を防ぐために新聞紙を使いましょう

みかんを常温保存する場合は、風通しのよい涼しい場所が最適です。新聞紙を敷いた上にヘタを下にしてみかんを置き、その上から新聞紙を被せましょう。

■2:冷蔵保存

冷蔵庫で保存するときは、スーパーの薄いフィルム袋で小分けにして入れるのがおすすめ
冷蔵庫で保存するときは、スーパーの薄いフィルム袋で小分けにして入れるのがおすすめ

冷蔵庫は温度が低く、保存に適していますが、乾燥しやすいので注意が必要です。

「私が実践しているのは、スーパーのレジなどに置いてある薄い半透明のフィルム袋に3~4個ずつ小分けにして、野菜室に入れる保存方法です」(長谷川さん)

あまり分厚いビニール袋で覆ってしまうとうまく水分が出ていかず、逆に湿り気が強くなってしまいます。ほどよい薄さのフィルム袋(ポリエチレン袋)での保存がおすすめです。

■3:冷凍保存

常温や冷蔵の保存で食べきれないときは、冷凍庫で昔ながらの「冷凍みかん」にするのもおすすめ
常温や冷蔵の保存で食べきれないときは、冷凍庫で昔ながらの「冷凍みかん」にするのもおすすめ

冷凍保存は、常温や冷蔵での保存とみかんの状態が異なるそう。

「果実は一度凍らせてしまうとその時点で死んでしまいます。ジュースを凍らせてシャーベットにしたものと同じ状態のものになると思ってください」(長谷川さん)

冷凍する場合も乾燥は大敵です。そのまま冷凍庫に入れたらカピカピになってしまいます。それを避けるために、ひとつずつラップで包み凍らせましょう。

少し手間はかかりますが、一度凍らせたみかんを水にくぐらせ、再度凍らせる昔ながらの「冷凍みかん」もおすすめ。表面の氷が膜となり、乾燥から防いでくれます。これらを冷凍庫用のプラスチック袋に入れて封をして冷凍すれば、1年ほど味が変わらず保存できるそうです。

劣化のサインは皮とヘタを見るのがポイント

長谷川さんによると、みかんは出荷されて私たちの手元に届くときは、すでに食べごろのおいしい状態だといいます。では、悪くなってきたみかんはどのように見分ければいいのでしょうか?

「ヘタ(軸部分)が枯れて茶色くなっている。皮がしおれすぎている。このようなみかんを見つけたら、鮮度が落ち、かなり味も落ちている状態だと思ってください」(長谷川さん)

購入から2週間程度は保つといわれるみかんですが、保存状況によってはそれよりも早く傷んでしまうこともあります。食べる前に自身の目で確認してみましょう。

まだまだ旬の時期が続くみかん。少しでも長く保存して、甘くておいしいみかんを楽しんでくださいね。

長谷川美典さん
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構食農ビジネス推進センター ビジネスコーディネーター
(はせがわ よしのり)農産物の鮮度保持流通の研究、普及、行政支援などに40年間携わる。現在は農産物流通技術研究会会長としても、企業、農業などいろんな分野の人たちとともに技術の普及を図ろうとしている。
農研機構 食農ビジネス推進センター

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この記事の執筆者
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WRITING :
田代祐子
EDIT :
廣瀬 翼(東京通信社)