イタリアで、クリスマスになるとお店にたくさんの伝統菓子が並びます。それは、「パネットーネ」と「パンドーロ」。どちらも発酵菓子というところでは共通していますが、実は大きな違いがあるのです。

イタリアでは、パネットーネ派とパンドーロ派に分かれるといわれているため、それぞれの違いは気になるところ。食べ方やイタリアのクリスマスの過ごし方などを、イタリア菓子に詳しい、辻調グループ 辻静雄料理教育研究所の近藤乃里子さんの解説の下、探ってみました。あなたはどっち派? 早速見ていきましょう!

パネットーネとパンドーロの3つの違い

パネットーネ MAINA社(マイナ社)500g ¥1,390(税抜)
パネットーネ MAINA社(マイナ社)500g ¥1,390(税抜)

パネットーネとパンドーロには、どんな違いがあるのでしょうか? 近藤さんは次の3つの違いを挙げます。

■1:形

「どちらもバターや卵をふんだんに使ってつくるふんわりとした発酵菓子ですが、違いがわかりやすいのはその見た目です。パネットーネは上部がドーム状の円筒形で、パンドーロは断面が星形をした山形で、独特の形をしています」

パンドーロ  MAINA社(マイナ社)750g ¥2,000(税抜)
パンドーロ  MAINA社(マイナ社)750g ¥2,000(税抜)

■2:中に入っている具材

「中身の具材についても大きく異なります。パネットーネにはレーズンや刻んだオレンジ、シトロンのピールなどを生地に混ぜ込んで焼き上げますが、パンドーロのほうはバニラが香る生地になっており、何も入っていないのが特徴です」

■3:誕生した地

「誕生した地も異なります。パネットーネはロンバルディア州ミラノ、パンドーロは『ロミオとジュリエット』で有名な町、ヴェネト州ヴェローナです。どちらも北イタリアの地方菓子のひとつでしたが、今ではイタリア全土で食べられています。クリスマス時期になるとたくさんのパネットーネやパンドーロがお店に並び、自宅用に購入したり、贈り合ったりするのが慣習になっています」

イタリアではどんな風に食べられている?

パネットーネとパンドーロはどのように食べられているのでしょうか?
パネットーネとパンドーロはどのように食べられているのでしょうか?

「イタリアはキリスト教、カトリックの国であり、家族の絆をとても大切にする国民性です。そのため、クリスマスは家族で過ごす日という考え方が根強くあり、離れて暮らす家族や親戚などが集まる特別な一日です。

クリスマス当日は、マンマが腕をふるったご馳走を前に、親しい人たちと昼からたっぷりと時間をかけて食べて飲んでおしゃべりをしながら、一緒に過ごします。クリスマスイブには肉を食べることを控えて魚料理を食べ、クリスマス当日は教会でミサに参列し、それから肉を中心とした食事を取るといった古くからの習慣を守る人も少なくありません。

町のレストランなども24日は早じまい、25日は休業していることがほとんどです。クリスマスが日本人にとってのお正月のような感覚でしょうか。

このようななかで、パネットーネとパンドーロはクリスマスディナーのデザートの定番です。また、パネットーネとパンドーロは発酵菓子ですので日持ちがするため、この時期の手土産や贈り物としても最適。クリスマス当日だけでなく、クリスマス前の4週間ほどの期間であるアドヴェント(待降節)の時期には頻繁に食べられます」

パンドーロとパネットーネをおいしく食べるには?

パンドーロとパネットーネは、イタリアでどんな風に食べられているのでしょうか。より贅沢に、おいしくいただく方法も気になるところです。
パンドーロとパネットーネは、イタリアでどんな風に食べられているのでしょうか。より贅沢に、おいしくいただく方法も気になるところです。

 「キリスト教の祝祭と密接に関わる伝統菓子であるパネットーネやパンドーロは、それそのものがハレの日にいただく特別なお菓子。『贅沢に食べる』という考え方はあまりないように感じます。そのまま食べるか、『ザバイオーネ』という卵黄に砂糖と香りづけのワインやリキュールなどを加えて泡立ててつくるクリームやカスタードクリーム、フルーツなどを添えたり、ちょっとしたソースをかけたりするだけの方が多いのではないでしょうか。相性のよい甘いワインを添えることもあります」

デコレーションされたパンドーロ
デコレーションされたパンドーロ

「パンドーロでよくあるのは、形を生かしたツリーのようなデコレーションです。また、近年ではクリームやジェラートを詰めたパネットーネなどが売られていたり、ひと手間かけたデコレーションが紹介されたりすることも増えてきているようですね」                                                 

パネットーネやパンドーロは、近年日本のベーカリーでもオリジナルの商品が作られているほか、イタリアからの輸入ものをインターネットでのお取り寄せやイタリア食材店などで手軽に入手できるようになっています。もちろん、あえて時間と手間暇をかけて手づくりに挑戦してみるのもいいのでは。クリスマスシーズンにぜひイタリアの素敵な風習と味わいを取り入れてみてはいかがでしょうか。

近藤乃里子さん
辻調グループ 辻静雄料理教育研究所
(こんどう のりこ)大阪外語大学イタリア語学科卒業。辻調理師専門学校など辻調グループが協力する、イタリア語やイタリア料理、菓子に関する書籍の監修・翻訳を手掛ける。著書に『世界食べものマップ』(2017年/河出書房新社)、『食材大図鑑 マルシェ』(2015年/講談社)、『イタリア料理基本用語 伊和篇・和伊篇・テーマ別篇で使いやすい』(2013年/柴田書店)など。

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WRITING :
石原亜香利