出産から2か月で撮影現場に戻った大政 絢さん。母となったその表情は、ときおり聖母のように慈愛に満ちて、神々しいまでに美しい。人生のステージがひとつ進んで、どこか大人のゆとりが感じられる。

「最初の1か月は体調を崩し、これまで感じたことのない感情の波が目まぐるしく押し寄せて、自分でもコントロールができずに困惑しました。悲しくないのに涙が出たかと思えば、子供の顔を見ると愛おしくて、優しい気持ちに包まれるような…。でも、それを客観的に見ておもしろいと思うことができたのは、幸いでした。こうして授かった感情や思いが、女性として、人間として、深みとなって、いつか表現につながるといいのですが」とプロフェッショナルな顔も覗かせる。ふだんの絢さんは、しなやかでバランスのとれた、柔和な女性だ。

「子供にはのびのびと、自分のできなかったこともやらせてあげたいですね。私自身は14歳でデビューして、少し生真面目にセーブしながら生きてきたところがあると思うのです。それが結婚、出産を通して、ずいぶん自由に、オープンになれた気がしています。夫は私がこの仕事が好きなのを理解して、尊重してくれますし、私も夫を尊敬しているのです」

絢さんの撮影中、Toruさんがごく自然な感じでベビーカーを押して現れると、スタジオの空気は一気にほどけ、幸福感で満たされた。

「夫は、とてもおおらかです。息子が泣いていると、抱っこしなくては！ と私が焦るかたわらで、“かわいいね〜”と目を細め、マイペースで接してくれることにも助けられました。男の子ですから、パパっ子になってほしい。幼い頃から、男同士で趣味を共有してくれるといいなと思っています」