みなさんは普段、お金をうまく使っていますか? いくらお金があっても、無駄なことに使っていては何の意味もありません。お金は、自分自身を高めるような使い方をすることが重要です。では、一体どうすれば、お金を支払うたびに成長できるのでしょうか? それは、お金持ちのお金の使い方を知って習慣にすることが一番です。

自ら執事として大富豪に仕える傍ら、企業向けの富裕層ビジネスや講演、研修などを行う日本バトラー&コンシェルジュ株式会社社長・新井直之さんは、「お金持ちの方々こそ、誰よりもお金の使い方がお上手でいらっしゃいます」と語ります。新井さんは、大富豪の行動様式を誰よりもよく知る一人。

大富豪と呼ばれる人々の多くは、単に資産が多いだけではなく、社会的地位も高く、人間性の面でもたくさんの人々から尊敬されています。そんな大富豪のお金の使い方習慣には、自分の価値を高めるものが多いのだとか。今回はその中から、私たちも生活に取り入れたい、自分の価値を高めるお金の使い方習慣を5つご紹介します。

■1:何に対しても「コスト意識」を持つ

大きなお金は小さなお金の集合です
大きなお金は小さなお金の集合です

数十~数百億円という資産を持つ大富豪であれば、ものの値段など一切気にせず、お買い物や日々の生活を満喫しているのでは?と想像しがちです。しかし、実際には、厳格なコスト意識を持っているのだそう。

月末にはカード会社の明細を細かくチェックし、投資目的でマンションなどを購入する場合は、選択肢の中で比較的値段の高い物件、いわゆる“松”よりも、よりリーズナブルな“梅”を選ぶことが多いといいます。

大富豪の多くは会社を経営しており、経済の仕組みにも精通しているため、一番高いものには“プレミアム価格”が乗っている、景気が後退すればそのぶん値が大きく下がる、といったお金の論理をよく理解しているのです。

「大前提として、大富豪の方々は“何十億円、何百億円というお金は小さなお金の集合である”ということを、とてもよくご存じです。小さいお金をきちっと管理していないと、大きいお金をつくることはできない。だから、小さいお金をおろそかにされないのです」と新井さん。

自分が持っているお金の額にかかわらず、モノの価値に合った額以上は支払わない、という金銭感覚を失わないことが、お金持ちへの第一歩なのです。ぜひコスト意識を持つようにしましょう。

■2:「継続して出ていく支出」に敏感になる

そんな、きちんとした金銭感覚を持つ大富豪ですが、「とくに関心を払っていらっしゃるのは『毎月出ていくお金』『継続して出ていくお金』です」と、新井さんは明かします。

例えば車を買う場合、私たちは車の値段を気にしがちです。しかし、たとえ高級車であっても、車の購入代金自体の支払いは1回きり。それに比べ、大富豪の多くはその後発生する「自動車保険の保険料や税金、駐車場代といったランニングコスト」まで念頭に置いている、というのです。家を建てる場合も同じ。大きな家を建てると暖房費や冷房費などがかかり、電気代だけで月に200万円、300万円というケースも。

「大富豪の方は、連続して出ていくお金の怖さをよくご存じです。ですから、一度きりの大きな買い物はさほど気にされない方でも、未来にわたって毎月かかり続けるお金の無駄は、極力避けるようにされています」(新井さん)

家計の支出を減らすなら、まず月々決まって出ていくお金から。これは、お金のプロであるフィナンシャル・プランナーの間でも基本となる考え方です。お金持ちでなくても取り入れたい、賢いお金の使い方です。

■3:「生きたお金を使う」ことを心がける

高級なものをあえて普段使いすることで、日常の所作や心のありようまで変化するのです
高級なものをあえて普段使いすることで、日常の所作や心のありようまで変化するのです

大富豪の家庭では、日常的な食器類も1点5万円以上する高級品が少なくないといいます。子どもたちにも高級な食器を使って食事をさせるというのですから驚きですが、これには「食器を丁寧に扱う意識が高まり、所作が自然とエレガントになって、やがて心も穏やかになっていく」という狙いがあるのだそう。大富豪は常に、“生きたお金”を使うことを心がけているのです。

では、“生きたお金”とは何でしょうか? 新井さんに伺うと、「使ったお金が未来をつくり出すかどうか、それだけです。食器の例でいえば、高級なものを使ったことによってモノが動作を変え、ふるまいや心のありようまで変化していく。そのことをご存じなので、高価な食器を日常で用いることもまったく惜しくないのです」とのこと。

そのほか、ビジネスパートナーとの関係を深めるための会食にお金をかけたり、免許を取り立てのわが子が丁寧な運転をするように、あえて高級車を買い与えるのも“生きたお金”の使い方。必要だから買う、物欲を満たす、といったお金の基本的な使い方からワンランクアップし、自分のふるまいや内面まで変えていく“生きたお金”の使い方をしたいものです。

■4:「先見性」を持つ

エレベーターに乗ったときのように高い視点を意識してみましょう
エレベーターに乗ったときのように高い視点を意識してみましょう

大富豪はときに、売れていない商品やあまり評判がよくない商品に目を向けたり、不景気のときにあえてお金を使うなど、“逆張り”ともいえるようなお金の使い方をするもの。ですがその裏には、“失敗から学ぶ”ためであったり、“モノやサービスを割安で手に入れる”ためであったり、明確な理由があるのです。長い目で見てさらなる価値を生むようなお金の使い方です。

そんな先見性について、新井さんは「お金を持つことによって、時間の見え方が変わってくるのでしょう」と分析します。これを新井さんは“富裕層のエレベーター”と呼んでいます。

「エレベーターで高いところまで登れば遠くを見渡せる。この“遠く”というのが、時間でいうと未来です。お金があることで直近の生活に惑わされることなく、“数十年後の資産をつくるには、どうしたらいいか?”という長期的な視点が持てるのです」(新井さん)

お金の使い方を考えるとき、エレベーターに乗ったときのような、少し高い視点を意識してみませんか? 他の人が気づかないような先見性を手に入れることができるかもしれません。

■5:「周囲のため」にお金を使う

莫大な資産を持つ大富豪にも、“自分へのご褒美”の概念はあるのでしょうか?

「あまり自分へのご褒美を考えてはいらっしゃいません。どちらかというと、周りの人を楽しませる、自分の会社の従業員を幸せにする、若いこれからの方たちに投資をする、ということをご自身の喜びにされる方が多いですね」(新井さん)

このことは、ひとつには「自分はもうすでに満たされている」ため。やりたいことや行きたいところはいつでも欲しいときに手に入れることができるのは、大富豪であればこそです。ですが、同時に「人は何のために働くのかという社会的欲求、他者を自分の力で幸せにしたいという欲求を強くお持ちで、それを満たすことを“贅沢”と感じられるのではないでしょうか」とも新井さんはいいます。

周囲のためにお金を使うことで自分も喜びを感じ、満たされる――これこそが“生きたお金”の使い方であるといえます。

 

新井さんは「資産を1割増やすことはすごく難しいけれども、支出を1割減らすことは意外と簡単、と考える大富豪は少なくありません」といいます。この考え方は、大富豪に限らずすべての家計にとっての基本でもあります。ここでご紹介したお金の使い方は、どれも私たちの生活でも取り入れることのできそうなシンプルなもの。ひとつひとつは小さな心がけでも、積み重なれば大きな資産。実践することでいつの日か、富裕層のエレベーターを登っている自分自身に気づくかもしれません。

新井直之さん
日本バトラー&コンシェルジュ株式会社代表取締役社長
(あらい なおゆき)フォーブス誌世界大富豪ランキングトップ10に入る大富豪や日本国内外の超富裕層を顧客に持つ同社の代表を務める傍ら、企業向けに富裕層ビジネス、顧客満足度向上、ホスピタリティに関する講演、研修、コンサルティング業務を行う。『執事だけが知っている世界の大富豪58の習慣』(幻冬舎)など著書多数。著書は海外でも翻訳出版され、累計発行部数は30万部を超える。近著『大富豪がお金を生み出す時間術』(青春出版社)では、大富豪のお金を生み出す習慣を「見極める技術」「好印象を生み出す技術」「投資の技術」「遊びの技術」など七つに分けて紹介。実践できる“時間錬金術”を明かしている。
日本バトラー&コンシェルジュ株式会社
この記事の執筆者
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WRITING :
よりみちこ
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