【目次】

ダイエットするために炭水化物を抜くのはNG


森 拓郎さん
ボディワーカー
(もり たくろう)大手フィットネスクラブを経て、2009年に自身のスタジオ「rinato(リナート)をオープン。モデルや女優からも大人気で、ピラティス、整体、美容矯正などのボディメイクをはじめ、食事によるダイエットの指導も行う。テレビや雑誌など多くのメディアでも活躍する他、ベストセラーにもなった著書『オトナ女子のためのヤセ方図鑑』(ワニブックス)や、『ダイエット事典(飛鳥新社)』も話題の的。

■炭水化物も正しく摂取すれば太らない!

ここ数年、大流行した糖質制限ダイエット。しかし、ダイエットを体験した多くの方が挫折したり、リバウンドするなど失敗しています。糖質ダイエットを成功させる秘訣はあるのでしょうか?「糖質ダイエットに失敗する方の多くは、ただ単に、食事からご飯や麺類などの穀物を抜くという食事をしているからです。これでは、辛い食事制限と何ら変わらず、むしろエネルギー不足を起こして、我慢できずにドカ食いしてしまったり、栄養不足により、リバウンドを起こすなど、長続きするわけがありません。糖質制限ダイエットも、糖質を完全にオフするのではなく、上手に糖質をコントロールしながら行えば、リバウンドもなく、太りにくい体を手に入れることができます。糖質を摂取したら太ると思っている方も多いのですが、正しく食べれば太りません」(森さん)。

糖質を摂取しても痩せられるって本当? ダイエットのプロが教える、正しい「糖質ダイエット」

ダイエット中の正しい炭水化物の摂り方【5選】


【1】正しい糖質の摂り方と糖質を摂る際のコツ

主食となるご飯はしっかり摂取。
主食となるご飯はしっかり摂取。

「主食として、ご飯など糖質を摂取しないと、甘いお菓子や飲み物で糖質を欲してしまい、逆にそれが肥満に走らせたり、老けの原因へとつながってしまいます。これを避けるためにも、主食のご飯はきちんと食べましょう」(森さん)。

【2】1日の糖質摂取量は150g以上を心がけよう

「脳と赤血球が必要とする糖質の量が120g。これ以外に、基礎代謝や活動代謝にも糖質が使われるため、最低でも一日の糖質量は150g以上が必要になります。これ以下になると、低血糖を防ぐため、体は糖質の消費を抑えようと代謝を落とし、痩せづらい体になってしまいます」(森さん)。

【糖質の量について】

小さなお茶碗120gのご飯で、糖質の量は約45g、一般的なお茶碗150gのご飯で約55gです。糖質は炭水化物以外にも、野菜、豆類、果物、お菓子などにも含まれています。

【主食にするならお米がおすすめ】

糖質を摂取する際は、なるべく糖の吸収がゆるやかな穀物がおすすめです。主食にするなら、小麦主体の麺やパンよりも、日本人の食のスタイルに合わせやすい、お米が最適です。玄米はビタミンやミネラル、食物繊維も豊富で、糖の吸収も白米より優れていますが、特にこだわる必要はありません。好きなお米を食べましょう」(森さん)。

【3】糖質と脂質を同時にしっかり摂らないこと

肥満の元、高糖質×高脂質の食べ物には要注意。
肥満の元、高糖質×高脂質の食べ物には要注意。

三大栄養素である糖質、脂質、たんぱく質のうち、糖質と脂質がエネルギー源になり、使い切れずに余った分は『体脂肪』として体に蓄積されます。つまり、糖質や脂質を摂りすぎると、体に脂肪がつきやすくなってしまうのです。そのため、糖質を摂るなら脂質を減らす、脂質を摂るなら糖質を減らすことが大切になります」(森さん)。

糖質コントロールのポイント(1)(糖質を多く摂取する場合)

本来、糖質は体脂肪にはなりづらい栄養素です。糖質は血糖値を上昇させてインスリンを分泌させます。この時、余ったエネルギーとして脂質が血中にあると、脂質が積極的に体脂肪へ蓄えられやすくなります。糖質は筋肉をはじめ細胞のエネルギー源として取り込まれるので、体脂肪にはなりづらいのです。つまり、インスリンが出ても、脂質さえとりすぎていなければ、体脂肪は多く作られません。運動量が少ない人でも、摂取カロリーの半分近くを糖質、そして残りの半分をタンパク質と脂質という割合にしても問題ありません」(森さん)。

【糖質の少ない炭水化物】
白米、そば、ライ麦パン、オートミール、バナナなど。

糖質コントロールのポイント(2)(脂質を多く摂取する場合)

「糖質を減らしている場合、脂質は減らしすぎないようにすることが大切。ただし、脂質を摂る際には、揚げ物やドレッシング、菓子類などに多く含まれる、オメガ6の油は避け、DHAやEPAなどオメガ3の良質な油を豊富に含む、魚などを多く食べるようにするとよいでしょう。また、お肉はささみや胸肉といった過度に低脂質なものばかりを選ぶと、脂質の摂取が少なくなり、代謝不良を起こしてしまいます。糖質を減らすのであれば、鶏のもも肉、牛肉や豚肉の脂身が少ない部分を選ぶようにするなど、脂質がゼロにならないよう心がけましょう」(森さん)。

【悪い油と良い油について】
「サラダ油や大豆油、コーン油など『オメガ6』を含む油は、細胞の炎症を促進し、悪玉コレステロールを増やします。細胞の炎症は、代謝の低下や動脈硬化を引き起こすので、できるだけ避けるのが賢明です。また、ヘルシーな油の代名詞であるエゴマや亜麻仁油、青魚に含まれる『オメガ3』。青魚など食べ物から摂取する分にはいいのですが、あえて大量に摂取する必要はありません。他の油の置き換えにする程度で十分です」(森さん)。

【避けるべき高糖質+高脂質なメニュー】
「揚げ物全般、丼もの、ラーメン、パスタ、菓子パン、ケーキなどは避けるようにしましょう。また、うどんやラーメンなどの麺類は、卵やお肉、ネギ、ほうれん草、わかめなどの具材をプラスして食べるといったように、ひと工夫するのがおすすめです」(森さん)。

【4】運動×糖質の摂取で痩せ体質に!

運動する時はしっかりと糖質を摂取。
運動する時はしっかりと糖質を摂取。

年齢とともに人の代謝は下がっていきますが、糖質を取り込む力(糖代謝)も同様に下がります。筋肉をはじめ、細胞自体が糖質を消費する能力が落ちてしまうことで、血糖値が上がりやすくなり、体脂肪を溜め込みやすくなるのです。しかし、運動をすることで糖質の消費を促すことができるので、運動を習慣にする人にとっての糖質摂取は、逆に代謝を高め、痩せやすい体づくりを後押ししてくれます。また、運動する時に、糖質を摂取していないと、体にダメージだけが残り、活性酸素で老化が促進されてしまうので、糖質を必ず摂取しましょう」(森さん)。

糖質と筋肉の関係とは?

「ブドウ糖は、消化吸収後にグリコーゲンとなり肝臓や筋肉に貯蔵されます。肝臓に貯蔵されたものは脳や全身の細胞のエネルギーに、筋肉に貯蔵されたものは運動で筋肉を使う際に使用されているのです。筋肉は分解と合成を常に繰り返していて、運動後は筋肉の分解が進んでいるため、糖質を補ってあげないと筋肉がどんどん削ぎ落とされてしまいます。運動後の糖質摂取は、筋肉など細胞の回復のために優先的に吸収され(体脂肪になるのでなく、筋肉に蓄えられる)、筋肉の合成のために使用されます。このため、糖質を摂取しても血糖値が急上昇しにくくなり、結果的に体脂肪がつきにくくなるのです」(森さん)。

【5】フルーツはジュースより生のままで食べよう

ダイエット_4
果物はそのまま食べて、ビタミンをしっかり補給。

「糖といえば、果物に含まれる果糖を気にされる方も多いと思います。果糖は血糖値を上げにくいのですが、中性脂肪として蓄積されやすいといわれています。しかし、果物に含まれる果糖の量はそれほど多くはなく、ビタミンや食物繊維も豊富なため、果物自体を食べることは穀物の摂取と同様、ダイエットにはとても有効です。しかし、100%の果物ジュースにしてしまうと、吸収が早くなった果糖を過剰に摂取することにつながってしまうので、避けましょう」(森さん)。

糖質を摂取しても痩せられるって本当? ダイエットのプロが教える、正しい「糖質ダイエット」

ダイエットに影響する睡眠の質を高めるためにも、炭水化物は必須


 
友野なお先生

睡眠コンサルタント  株式会社SEA Trinity代表取締役

(とものなお)千葉大学大学院 医学薬学府 先進予防医学 医学博士課程にて予防医学の観点から睡眠を研究。順天堂大学大学院 スポーツ健康科学研究科修士。日本公衆衛生学会、日本睡眠学会、日本睡眠環境学会 正会員。 自身が睡眠を改善したことにより、15kg以上のダイエット、さらに体質改善に成功した経験から科学的に睡眠を学んだのち、睡眠の専門家として全国にリバウンドしない快眠メソッドを伝授。 著書に『昼間のパフォーマンスを最大にする正しい眠り方』(WAVE出版)、『疲れがとれて朝 シャキーンと起きる方法』(セブン&アイ出版)など多数。

■睡眠不足はダイエットの大敵!

睡眠_2
睡眠の質低下は脳にも体にも影響が大きい。

「睡眠の質は美や健康の質、人生の質といっても過言ではありません。それは、これまで多くの研究が明らかにしています。睡眠の質が高まることで、昼間の主観的な健康感やQOLが高くなることが報告されています。睡眠の質の低下による悪影響は様々ありますが、例えば肌荒れです。肌が再生するには、肌の内部で細胞分裂が起こることが必要で、その細胞分裂は睡眠中に成長ホルモンが分泌されることで促進されるため、いい睡眠が取れないとうまく細胞分裂が起きないのです。あとは、睡眠不足は食欲の中枢を乱して空腹感の増大を招くなど、食べることにも影響します。睡眠時間と肥満の関連は様々な研究結果も出ています」(友野先生)。

■炭水化物とビタミンB6を合わせて摂ることで、良い睡眠を促す

外から上手に摂取することで快眠に導く。
外から上手に摂取することで快眠に導く。

「深い睡眠を促すには、睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンの分泌が大きく関わっています。メラトニンの分泌を促すのが、セロトニンという脳内物質です。セロトニンは、日中、元気でいることや癒しの源となる神経伝達物質です。夜になると脳の松果体でメラトニンに変換されます。このセロトニンを生み出すのが“トリプトファン”という必須アミノ酸です。このトリプトファンは、体内で合成することができず、食べ物から摂取する必要があります。

トリプトファンを摂取し、セロトニンを生み出すことで睡眠ホルモンを分泌させるのがよいわけですが、よりよく眠るためにはトリプトファンを多く含む食材を摂取すればよいというわけではないのです。トリプトファンの他に、炭水化物やビタミンB6を組み合わせることが重要なポイントとなります。トリプトファンは、乳製品や卵、大豆やナッツなどのたんぱく質に含まれますが、しっかり眠るためにはいも類などの炭水化物と、豚肉や魚類などに多いと言われるビタミンB6を合わせることが必要なので、これらの食材を意識したバランスの良い食事を取れると良いでしょう」(友野先生)

スーパーフルーツ「バナナ」で簡単に快眠生活⁉

トリプトファン、炭水化物、ビタミンB6の3つをバランスよく摂取できる。
トリプトファン、炭水化物、ビタミンB6の3つをバランスよく摂取できる。

快眠を目指し、トリプトファン、炭水化物、ビタミンB6の3つをバランスよく摂取した食生活を送ることができればもちろん良いですが、忙しい毎日で献立を考え続けるのもなかなか心が折れそうなもの。そこで、この3つをバランスよく摂取できるというスーパーフルーツを発見!昔から食べ続けられているお馴染みのバナナにこんな効果があったと、今、改めて見直されているのです。

バナナは、トリプトファン、炭水化物、ビタミンB6の全てが含まれています。食材それぞれで見ると足りないものがありますが、バナナであればこの3つが揃うため、朝の習慣にすると良いでしょう」(友野先生)

バナナで快眠!?専門家に聞く、真冬の「睡眠不足」対策とは?

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
TAGS: