Breguet 250 Years
発明と革新の250年──
歴史上の勇者たちを虜にした天才時計師が創り上げた
レガシーは、世紀を超えて受け継がれて
内田有紀さんが、
名門メゾンの気高き誇りを纏う
これまでも、これからも
「ブレゲ」と彩る、豊かな時間
Breguet 250 Years
Breguet 250 Years
趣のあるブレゲゴールドに縁どられ、マザーオブパールの上品な虹の彩りが光の移ろいを優雅に映す、250周年記念モデル。
時計『レーヌ・ドゥ・ナープル 9935』［BG×ダイヤモンド×マザーオブパールダイヤル ケースサイズ：縦36.5×横28.5mm アリゲーターストラップ 自動巻き］￥8,250,000（ブレゲ ブティック銀座） ブラウス￥41,800（アキコ オガワ） ピアス￥397,100・リング 人差し指から／￥617,100～（ハム 神宮前 アトリエ&ショップ） ￥198,000（トーカティブ 表参道）
星がまたたくブルーの夜空に
月が満ち、欠けるたび、
文字盤の小宇宙には
静かに物語が刻まれて…
250周年記念モデル。透明感のあるブルーが、幻想的な夜空を描く。
時計『レーヌ・ドゥ・ナープル 9935』［BG×ダイヤモンド×マザーオブパール×ブルーアベンチュリンダイヤル ケースサイズ：縦36.5×横28.5mm アリゲーターストラップ 自動巻き］￥9,427,000（ブレゲ ブティック銀座）
オフセンターのダイヤルが余韻を生む
優美なエッグシェイプウォッチ
Reine de
Naples
世界初の腕時計といわれる伝説を受け継ぐ『レーヌ・ドゥ・ナープル』（旧『クイーン・オブ・ネイプルズ』）が、創業250周年を祝う新作として新たなゴールド素材とムーブメントを纏って登場しました。日常のあらゆるシーンに寄り添う、モダンな表情が、洗練の極みへ！
250周年記念の新作ウォッチは
“ブレゲゴールド”の
洗練を纏って登場！
オフセンターに配された時分ダイヤルの上で、三日月形のムーンフェイズが微笑みかける、そのエレガントな表情にうっとり。透明感溢れる文字盤には、ブルーの“ブレゲ針”が映えて、ダイヤモンドが極上の白い煌めきを添える。スモールセコンドに“ギョウシェ彫り”が施され、視認性もアップ。新たな“ブレゲゴールド”も、イエローとローズの中間で洗練されたニュアンスが。
時計『レーヌ・ドゥ・ナープル 9935』［BG×ダイヤモンド×マザーオブパールダイヤル ケースサイズ：縦36.5×横28.5mm アリゲーターストラップ 自動巻き］￥8,250,000（ブレゲ ブティック銀座）
白ブラウスにも映える
瑞々しいアベンチュリンの
ブルーが、知性と神秘的な
魅力を際立たせる250周年記念モデル
星降る美しい夜空に吸い込まれそう。マザーオブパールの上にブルーアベンチュリンガラスを重ねて、オーロラのような神秘的な輝きを備えたダイヤルには、新しい“ブレゲゴールド”の上品な艶が似合う。ダイヤモンドを敷き詰めたラグとケースがラグジュアリーな華やぎを添えて、仕事からパーティまで、働く女性の一日に優雅に寄り添う。
時計『レーヌ・ドゥ・ナープル 9935』［BG×ダイヤモンド×マザーオブパール×ブルーアベンチュリンダイヤル ケースサイズ：縦36.5×横28.5mm アリゲーターストラップ 自動巻き］￥9,427,000（ブレゲ ブティック銀座） ブラウス￥396,000（ジョルジオ アルマーニ ジャパン〈ジョルジオ アルマーニ〉） イヤーカフ￥77,000・シングルピアス 左から／￥105,600・￥114,400・リング￥107,800（Hirotaka 表参道ヒルズ）
希少なルビーを
贅沢にあしらった
“王妃の赤”に心弾んで！
皇帝ナポレオン1世の実妹で、ナポリ王妃のカロリーヌ・ミュラは、34点もの「ブレゲ」の時計を有した愛好家。懐中時計を“腕につけたい”という思いがけないリクエストから生まれた、世界初の腕時計に着想を得たコレクションだからこそ、王妃の華やぎをたたえるドレスウォッチを楽しみたい。
時計『レーヌ・ドゥ・ナープル 8918』［WG×ルビー×マザーオブパールダイヤル ケースサイズ：縦36.5×横28.45mm アリゲーターストラップ 自動巻き］￥7,293,000（ブレゲ ブティック銀座） ワンピース￥118,800（ザ・ウォール ショールーム〈ハルノブムラタ〉） ピアス￥1,023,000（メシカ ジャパン）
精密な機構に
眩い煌めきを散りばめた
才色兼備なジュエリーウォッチ
美しいカーブを描くオーバルケースにあしらわれたオフセンターの時分表示によって、余白が生まれ、華麗な装飾が際立つ、王妃の腕時計に相応しいジュエリーウォッチ。
時計 上から／白い輝きで手首を包む、しなやかなつけ心地のブレスレット。『レーヌ・ドゥ・ナープル 8928』［WG×ダイヤモンド×マザーオブパールダイヤル ケースサイズ：縦33×横24.95mm 自動巻き］￥11,264,000・スノーセッティングのダイヤモンドをあしらった文字盤でエレガンスを極めて。『レーヌ・ドゥ・ナープル 8938』［WG×ダイヤモンド ケースサイズ：縦36.5×横28.45mm カーフストラップ（付属のストラップはブルーアリゲーター） 自動巻き］￥9,262,000・別売りラベンダーカラーのカーフストラップ￥40,700（ブレゲ ブティック銀座）
創業者のシンプルで優雅な
美意識が息づく
“デザイン・コード”を堪能
Classique
ロココ様式全盛の時代にありながら、華美な装飾を省く美意識を貫いた創業者ブレゲ。メカニズムの信頼性を引き立てる、シンプルで画期的な意匠でネオ・クラシック様式を牽引したのです。そんな「ブレゲ」の真髄ともいえる“デザイン・コード”の数々を集約したコレクションは、極上のベーシックスタイルを求める大人の心に響きます。
柔らかなパールの艶めきに
繊細なシルエットの
“ブレゲ針”が
優雅に、なめらかに時をなぞる
創業者が生み出した装飾技巧が、上品で飽きのこないシンプルエレガンスを極めたケースに凝縮されたコレクション。ダイヤモンドに縁どられたマザーオブパールの文字盤にくっきりと時を刻む“ブレゲ針”は、細長い秒針まで優雅で美しい。
時計『クラシック 9068』［マザーオブパールダイヤル ケース径：33.5mm アリゲーターストラップ 自動巻き］ 上から／［RG×ダイヤモンド］￥4,851,000・［WG×ダイヤモンド］￥4,851,000（ブレゲ ブティック銀座）
“グラン・フー”エナメルの
シンプルで永遠の白に
先進の技術を搭載。
削ぎ落とすほど時は磨かれて
しなやかな黒のレザージャケットにさりげなく合わせたのは、純白のダイヤルに青い“ブレゲ針”が凛として時を描く『クラシック』コレクションの名品ウォッチ。800度を超える高温で焼き上げられた“グラン・フー”エナメルのこの白い文字盤も「ブレゲ」に欠かせない“デザイン・コード”のひとつ。最先端のムーブメントを内に秘めながら、いっさいの装飾を拒むかのように静謐で完璧な白が、潔いまでにかっこいい。白が色褪せにくいのも魅力で、人生に長く寄り添うパートナーに。
時計『クラシック 5177』［WG×グラン・フー ホワイトエナメルダイヤル ケース径：38mm アリゲーターストラップ 自動巻き］￥4,345,000（ブレゲ ブティック銀座） ジャケット￥750,200／銀座店限定（アクリスジャパン〈アクリス〉） ピアス￥73,700・リング［2連］￥229,900・［ダブルフィンガー］￥88,000（Hirotaka 表参道ヒルズ）
Classique
Tourbillon
時計の未来を開いた
世紀を超える考案
“トゥールビヨン”
文＝並木浩一（時計ジャーナリスト）
「ブレゲ」がつくる“トゥールビヨン”には、今日でも唯一独特の存在感がある。それは世界にひとりしかいない発明者で特許取得者のブランドがつくる、本家本元の正統“トゥールビヨン”であるからだ。創業者のアブラアン-ルイ・ブレゲが考案したのは、重力の影響による誤差を解消するために、機械式時計の心臓部分を小さなカゴ状の枠に納めて回転させることだった。回り続けるコマが立っていられるように、重力の影響を打ち消したのである。その“トゥールビヨン”は今日も評価される機構であると同時に、いつまでも見飽きない神秘的で魔術的なビジュアルで人を魅了する。しかも他の複雑機構は、どんな高度な機能でもクオーツに置き換えられるが、純粋な“複雑のための複雑”機構である“トゥールビヨン”は、機械式時計だけのものだ。それは人間の叡智と手作業の尊厳の象徴であり、哲学的な存在価値をもつ。ダイヤモンド2カラット分ほどの上乗せであれば、本家本元の“トゥールビヨン”にはその価値が間違いなくある。
「ブレゲ」のすべての“トゥールビヨン”に刻印されている“革命歴9年メシドール7日”は、第一共和政下のフランスが「ブレゲ」に特許を認めた日付で、1801年6月26日にあたる。近代が始まる19世紀最初の年に、「ブレゲ」は21世紀の腕時計の未来をひらいたのである。
マザーオブパールに艶やかな光沢を施したミッドナイトブルーのダイヤルに、ダイヤモンドとゴールドの星が降りそそぐ、ドラマティックな夜空を手元に。流れ星を象ったブリッジの奥に現れる“トゥールビヨン”の芸術的な機構は、表からも裏からも堪能できる。「ブレゲ」の起源に根ざす発明と意匠のすべてを凝縮した唯一無二の一本。
時計『クラシック トゥールビヨン 3358』［WG×ダイヤモンド×マザーオブパールダイヤル ケース径：35mm アリゲーターストラップ 手巻き］￥24,838,000（ブレゲ ブティック銀座）
機械式時計の魅力を象徴する美しい機構。その複雑さゆえ、発明後も普及にいたらず、1983年に「ブレゲ」が復活させて、再び脚光を浴びるように。
フランス政府発行の“トゥールビヨン”特許状。1801年に10年間の特許権を取得したが、商品化は難しく、実現したのは1805年。初代が亡くなる1823年までに販売されたのは、わずか35個という希少さだった。
ハイジュエリーの輝きに
“トゥールビヨン”の
叡智を重ねて
たおやかな知性を！
時分表示リング内側のスノーセッティングと、外側に弧を描くようにセットされたダイヤモンド。ベゼルからリュウズにいたるまで、さまざまなダイヤモンドが織りなす光のハーモニーが宝飾技術の高さを物語る。35mmという女性にもつけやすいサイズ感もうれしい、究極のコンプリケーションウォッチ。
時計『クラシック トゥールビヨン 3358』［WG×ダイヤモンド ケース径：35mm アリゲーターストラップ 手巻き］￥26,873,000（ブレゲ ブティック銀座） ニット￥28,600（ポステレガント） ピアス￥435,600・リング￥387,200～（フォッぺジャパン）
構造に宿る美しさを
“可視化する”仕様で
圧巻のレディスウォッチへ
Tradition
Dame
着想源は1796年につくられた懐中時計の左右対称のムーブメント。本来隠すべき構造をあえて見せることで複雑機構を“装飾”として昇華した象徴的なマスターピースに。精緻なメカニズムが優雅さを纏いキャリア女性の美学を印象づけます。
美しすぎる機構を
華やかなケースで包み、
思うがまま優雅に時を従える
細部までこだわりが詰まった時計ムーブメントがこんなにも美しいなんて！ 初代ブレゲが考案した衝撃吸収装置“パラシュート”を含め、左右対称に配された機構は、均整のとれた佇まい。上部の時分表示には“ギョウシェ彫り”が、中央の香箱にはローズ模様が端正にエングレービングされて。鮮やかな色のストラップもフェミニンなセンスを届ける。
時計『トラディション レディ 7038』［ケース径：37mm アリゲーターストラップ 自動巻き］ 上から／［WG×ダイヤモンド×タヒチパールダイヤル］￥7,106,000・［RG×ダイヤモンド×マザーオブパールダイヤル］￥6,952,000（ブレゲ ブティック銀座）
まろやかなゴールドと
瑞々しいブルーが
無機質な機構を華やかに彩る
250周年限定モデル
新作を「ブレゲ」らしい気品で包むのは、象徴的なふたつの洗練された色使い。微かにピンクみを帯びた“ブレゲゴールド”は、華やぎを醸し出す。また、湖に波形を映すような“ギョウシェ彫り”の時分表示には、半透明の“グラン・フー”エナメルが瑞々しい“ブレゲ・ブルー”の彩りを差して。静かに時を刻む繊細な機械の動きが、心を落ち着かせ、安らぎを誘う。
時計『トラディション 7035』［BG×ダイヤモンド×ブレゲブルーのグラン・フー エナメルダイヤル ケース径：38mm アリゲーターストラップ 自動巻き］￥7,238,000／世界限定250本（ブレゲ ブティック銀座） ワンピース￥92,400（ポステレガント） ピアス￥159,000（トーカティブ 表参道）
「ブレゲ」と航空界との
伝説に心惹かれる
羨望のクロノグラフにも新作が！
Type XX
リンドバーグが大西洋単独横断飛行を成功させた頃、「ブレゲ」の名は航空機製造会社としても既に有名でした。航空計器の開発にも長けてフランス軍用にパイロットウォッチを供給。その流れを汲むのが、このクロノグラフです。250周年記念の新作として、女性もつけやすいサイズの登場に胸が高鳴ります！
男たちを寡黙にする
フランス海軍由来の
洗練クロノグラフ
文＝並木浩一（時計ジャーナリスト）
1950年代、フランス軍パイロットのために製作・納入された軍用モデルがルーツ。『タイプ XX』は、時計の歴史に詳しい男性たちを黙らせ、リスペクトを誘う腕時計だ。その生粋のミリタリーモデルが1955年、一般向けにゴールド製で3本だけ製作された。幻ともいわれる伝説のモデルを再現したのが、精悍で豪華なこの『タイプ XX 2075』である。もともと軍用という最高性能と、250周年を機に開発された“ブレゲゴールド”の気品を併せもつクロノグラフは、男女問わずその絶対唯一性を否定できない。しかも38.3ミリというサイズに、女性も思わず手が伸びる。事実『タイプ XX』最初期モデルの一本を手にしたのはフランス人女性パイロットの草分け、ジャクリーヌ・オリオールだ。
精鋭テストパイロットだけが所属する飛行試験センター（CEV）は、フランス海軍航空隊等と並ぶ『タイプ XX』の納入先であった。ジャクリーヌは軍用機とヘリコプター、さらにテストパイロット免許を取得する驚異的なキャリアを詰み、最難関のCEVに入所を許可された。その彼女に、腕時計の「ブレゲ」と同じ一族が経営するルイ・ブレゲ航空会社は、『タイプ XX』を贈呈したのである。ジャクリーヌはのちにジェット戦闘機で、女性パイロットの最速記録を更新する。『タイプ XX』は、世界の頂点に立った“パイロットの女王”の腕時計である。
1950年代に海軍航空隊のパイロット用に設計した腕時計『タイプ XX』をベースに、民間用にデザイン。2023年に導入された第4世代から現行モデルとなり、絶大な人気を誇る。今回の250周年記念モデルでは、“ブレゲゴールド”を採用したやや小ぶりなサイズが登場して、女性にもおすすめ。10振動や、フライバック・クロノグラフといったハイスペックへの格上げも、時計に詳しい男性たちから、一目おかれること間違いなし。
時計『タイプ XX 2075』［ケース径：38.3mm カーフレザーストラップ 手巻き］￥6,149,000（ブレゲ ブティック銀座）
2075の着想源となった
1955年の代表的モデル
1950年代初頭、フランス空軍のコードネーム『タイプ 20』と海軍航空隊用『タイプ XX』のパイロットウォッチを製造。民間用につくったのがこちら。
空を支配した
伝説のクロノグラフが
今、しなやかに
女性の意思を刻む
上の画像と同じモデルを着用。程よく大ぶりなクロノグラフを女性が身につけると、精密機器の機能美と、“本格”を選ぶ視点のかっこよさが際立つ。肌なじみのいい“ブレゲゴールド”と、チャコールがかったこなれた黒のコンビも、スタイルを一気に洗練へと導いて。
時計『タイプ XX 2075』￥6,149,000（ブレゲ ブティック銀座） ベスト￥68,200・パンツ￥49,500（ザ・ウォール ショールーム〈イロット〉） ブレスレット￥2,052,600（エスケーパーズ アナザーワールド〈キウナ〉） ピアス￥110,000（プライマル） リング 親指から／￥434,500〜・￥286,000〜（トーカティブ 表参道） インナー／私物
Breguet 250 Years
創業250周年を迎えた
名門の実力と美学に圧倒される！
王妃や貴族に愛された
エレガンスと幾多の発明は
世紀を超えて輝く
文＝並木浩一（時計ジャーナリスト）
創業から、今年で250年。「ブレゲ」の名前は、腕時計の教科書の最初に顔を出し、最後まで姿を消さない。その時計の大部分は、ルーツとなる時計を王妃か皇女、后妃か王女が身につけていたものだ。スターの使う品はいつも気になるものだが、彼女らは人気が普遍の、歴史的なスターである。
パリで不世出の天才時計師がはじめて注目されたのは、1775年のことだ。アブラアン-ルイ・ブレゲ、28歳。あり余る才能に恵まれてスイスの時計の街ヌーシャテルに生まれた若者は、ヴェルサイユで腕を磨き、花の都のケ・ド・ロルロージュ（大時計河岸）街にアトリエを開いた。“時計の歴史を200年早めた”と評される創業者から、現代にまで連綿と続く大名跡メゾン「ブレゲ」の誕生である。
アトリエは、貴族やブルジョワで賑わった。飛び抜けた価値をもつ時計を熱望した時代の主人公たちは、新しいデザイン感覚と芸術性を評価し、「ブレゲ」は期待以上に結果で応えていた。「ブレゲ」の時計は性能が高いだけでなく、次々と新しい仕組みが取り入れられていた。自動巻き、永久カレンダー、音で時刻を知らせるミニッツ・リピーター、そしてトゥールビヨン。現代でも最高評価を受ける高等技術から超絶技巧を、18世紀に実現していたことは驚嘆に値する。数々の発明が250年の時を超え、現代の高級腕時計につながっている。“時計界のレオナルド・ダ・ヴィンチ”という後世の評価は、決して誇張ではない。
フランスきっての大富豪だったオルレアン公をまず顧客とした名声は、爛熟するヴェルサイユの宮廷文化のなかで急速に高まった。そして「ブレゲ」の魅力はついに“ロココの女王”＝マリー・アントワネット王妃の心を捉える。王妹エリザベート夫人、義理の妹プロヴァンス伯爵夫人、配偶者の国王ルイ16世も、ついに「ブレゲ」から時計を購入した。革命前夜のヴェルサイユ宮殿で、「ブレゲ」は最新の流行であり、最上級の贅沢品だった。評判は海を渡りイギリス国王ジョージ5世も、「ブレゲ」の顧客名簿に名を連ねた。
1789年に勃発したフランス革命は上流階級の名簿を一新する大きな転機だったが、新たに「ブレゲ」の顧客となったのはナポレオンの皇后ジョゼフィーヌらである。そのナポレオンの戴冠式に立ち会ったローマ法王、失脚後の王制復古で王位についたルイ18世も、「ブレゲ」を選んだ。ナポレオンの実妹であるナポリ王妃カロリーヌ・ミュラは、世界で初めての腕時計を「ブレゲ」から受け取った。時が移り時代の主人公が変わろうとも、「ブレゲ」が選ばれる必然を世界史が証明しているのである。
「ブレゲ」の名にはいま、ふたつの意味がある。ひとつは言うまでもなく、羨望を集める国際的メゾンネームであることだ。一方で、発明者であることから命名された“ブレゲ針”の意匠や“ブレゲ数字”の書体といった“時計用語のブレゲ”は、他ブランドでも使う普通名詞である。時計の世界は、誰もが「ブレゲ」の遺産を受け継いでいるのである。
「ブレゲ」がなければ、現代の腕時計は成り立っていない。女も男も隔てなく魅了する「ブレゲ」の圧倒的な魅力は、18世紀に完成し、21世紀の現在も廃れないのである。
©Getty Images
顧客台帳に残る
王妃たちと皇帝が
愛した時計
上顧客で流行の発信者でもあった王妃たち。マリー・アントワネットの“最新”の機構への願望や、ナポリ王妃の“腕につけたい”といった無理難題こそが、男性の趣味と思われがちな機械式時計の進化を一気に早める要因に。皇帝ナポレオンも、「ブレゲ」の圧倒的な品格と力量に魅せられた。
1783年
マリー・アントワネットの注文が
時計の複雑機構を進化させる
1798年
顧客台帳には皇帝ナポレオン1世も
名を連ね、商品の詳細も記されて
1810年
ナポリ王妃、カロリーヌ・ミュラが
優雅な楕円形の腕時計を発注
時計史を変えた
創業者ブレゲの
発明と意匠
時計の歴史を200年早めたと賞賛される創業者の数々の発明には“トゥールビヨン”のように世紀を超えて、再び脚光を浴びる機構も。また電気のない時代に視認性を高めた“ブレゲ針”や“ギョウシェ彫り”といった美しい意匠は、今や一般化されて、多くのメーカーで使用されている。
1780年
信頼性の高い自動巻き時計
『ペルペチュエル』の登場
1783年
ブルーの“ブレゲ針”
1786年
“ギョウシェ彫り”
1801年
最上級の複雑機構
“トゥールビヨン”を発明
Koichi Namiki
桐蔭横浜大学教授、時計ジャーナリスト。GPHG（ジュネーブ時計グランプリ）アカデミー会員、ギャラクシー賞選奨委員。1990年代より高級時計の取材を、国内外を問わず続ける。著書に『ロレックスが買えない』（CEメディアハウス）、『腕時計一生もの』（光文社新書）等。『Precious』ではWATCH AWARDの審査委員。