「大変恐縮ですが」は、「依頼・要求」する文章の前に置いて使われるクッション言葉です。ビジネスシーンでは頻繁に使われる言葉のひとつですね。今回はおなじみの「大変恐縮ですが」について徹底解説。覚えておきたい注意点など、実務に即役立つ知識をお届けします!
【目次】
- 「大変恐縮ですが」を深く理解するための「基礎知識」
- 「大変恐縮ですが」を理解するための「例文」6選
- 「大変恐縮ですが」を、より丁寧な表現にするには?
- 「大変恐縮ですが」の「類語」「言い換え」表現は?
- 「大変恐縮ですが」を使う際の「注意点」
【「大変恐縮ですが」を深く理解するための「基礎知識」】
■「大変恐縮ですが」を端的に表現すると?
「大変恐縮ですが」は「申し訳ありませんが、〜」という意味のクッション言葉です。
クッション言葉とは、用件を話し始める前に述べる短いフレーズのこと。相手の関心や気持ちを引き寄せ、全体の言い回しを丁寧でソフトな印象にしてくれる効果があります。
「大変恐縮ですが」は相手に対する「依頼・要求」をはじめ、「許可」を求める際や「お断り」するときなど、「言いにくいことを伝えたいとき」全般で使える言葉。「感謝」の意をにじませた表現としての使用も可能です。
■「恐縮」は「申し訳なく思うこと」!
では次に「大変恐縮ですが」を細かく分析していきましょう。
「大変恐縮ですが」は「大変-恐縮-です-が」に分けられます。「大変」は「程度の甚だしいさま」を表す副詞です。「非常に、とても」と言い換えられます。
そしてこのフレーズの根幹となる「恐縮」には、ふたつの意味があります。
1 恐怖で身がすくむこと。
2 相手に迷惑をかけたり、相手から厚意を受けたことに対し、申し訳なく思うこと。
2からわかるのは、「恐縮」という言葉は、「相手に迷惑をかけたとき」「相手から厚意を受けたとき」、ふたつのシーンで使われる言葉だということです。前者は「謝罪」、後者は「感謝」の意を含め、「申し訳なく思う」気持ちを表現します。へりくだり、相手に敬意を表する言葉でもあります。
■「ですが」は逆接の「接続語」
「ですが」は、「だ/である」の丁寧な表現となる助動詞「です」と接続助詞「が」からなる「接続語」です。言い換えれば、「だが」の丁寧な表現です。
「が」は、あとの文章が前の内容から予想される結果とは反対の内容であることを表す「逆接」の接続助詞です。「逆接」の接続詞である「しかし」「ところが」などは完結した文章のあとに付くのに対して、接続語の「ですが」は文章のなかで使われるのが特徴。「○○です。しかし△△」とするよりも、「○○ですが、△△」とした方が、柔らかな表現となります。
以上のことから、「大変恐縮ですが」は、「とても申し訳ないのですが、〜」と、あとに続く「依頼・要求」「お断り」など、「言いにくいことを伝えたいとき」に、相手に対する気遣いを示しながら、切り出すきっかけをつくるためのクッション言葉といえるのです。
【「大変恐縮ですが」を理解するための「例文」6選】
■「依頼・要求」のシーンでは
・「大変恐縮ですが、納期は○月までとさせていただきます」
・「大変恐縮ですが、ご確認の程よろしくお願いいたします」
■「相手に許可を求める」のシーンでは
・「大変恐縮ですが、本日午後、御社をお訪ねしてもよろしいでしょうか」
■「お断り」するシーンでは
・「大変恐縮ですが、コスト面を考慮した結果、ご希望には添いかねます」
・「大変恐縮ですが、あいにくその日はすでに予定が入っております」
■「感謝」のニュアンスで使うシーンでは
・大変恐縮ですが、今回はお言葉に甘えさせていただきます。
【「大変恐縮ですが」を、より丁寧な表現にするには?】
「です」は「だ/である」を丁寧にした敬語表現ですが、敬意を高めた表現をふたつご紹介しましょう。
■大変恐縮でございますが
■大変恐縮に存じますが
【「大変恐縮ですが」の「類語」「言い換え」表現は?】
■まことに恐縮ですが ■大変申し訳ありませんが ■大変恐れ入りますが
■あいにくですが ■大変恐縮です。しかしながら〜
【「大変恐縮ですが」を使う際の「注意点」】
■相手が自分にかけた迷惑については使わない
「恐縮」は、自分が相手に迷惑をかけたり、相手から厚意を受けたことに対し、へりくだって「申し訳ない気持ち」を表現する言葉です。相手からかけられた迷惑については使いません。ですから、「先日の件につきましては、大変恐縮されているかと存じますが… 」といった使い方は誤用です。
■深刻な失敗については使用しない
「大変恐縮ですが」は、このフレーズに続く文章について「とても申し訳ない気持ち」を表す言葉ではありますが、謝罪の言葉ではありません。従って、深刻な失敗により相手に多大な不利益を与えてしまったケースでは使えません。この場合は、「大変申し訳ございませんでした」「お詫びの言葉もございません」など、ストレートな表現で謝罪することが大切です。
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「大変恐縮ですが」は便利な言葉ですが、多用しすぎると「いつものセリフ」と受け取られてしまい、かえって不誠実な印象を与えかねません。誤解を招かないためにも、言い換え表現を駆使するなど、適切な言葉遣いを心掛けましょう。正しい言葉遣いで円滑なコミュニケーションを目指したいですね。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『とっさに使える敬語手帳』(新星出版社) /『一生分の教養が身につく! 大人の語彙力強化ノート』(宝島社) /『大人なら知っておきたいモノの言い方サクッとノート』(永岡書店) /『敬語マニュアル』(南雲堂 :